第1話 最果ての小さな集落
この度、『ファンタズマ・ゲイト ~仲間と楽しくワイワイ遊んでいたら、いつの間にか最強ギルドになっていました~』の連載を始めることになりました。
実は、今回が人生初の小説投稿です。
投稿ボタンを押す手が震えるくらい緊張しています……。
文章や構成など、拙い部分も多いかと思いますが、少しずつ成長していければと思っていますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。
この作品は、デスゲーム化したVRMMORPGを舞台にした物語ですが、最強を目指したり、世界を救ったりすることが目的の作品ではありません。
仲間と出会い、一緒に笑い、ご飯を食べ、街を作り、時には強敵と戦う。
そんな「帰る場所」を仲間と一緒に築いていく物語です。
ガウたち《王虎の牙》の歩みを、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
これからどうぞ、よろしくお願いいたします!
「ガウー! 朝ですよー!」
聞き慣れた声に、ガウはゆっくりと目を開けた。
木造の天井。
窓から差し込む朝日。
外から漂ってくる焼きたてのパンの香り。
そして――
「ガウー! 起きてますかー?」
「起きてるって」
小さくあくびをしながら、俺はベッドから身を起こした。
部屋の隅に置かれた鏡へ視線を向ける。
そこに映っているのは、茶色のショートヘアに赤い瞳を持つ狼獣人の少女だった。
頭には狼耳があり、腰の後ろではふさふさとした尻尾がゆるやかに揺れている。
誰が見ても愛らしい少女だ。
もっとも――
「……中身は男なんだけどな」
この姿にも、もう二年近くですっかり慣れてしまった。
苦笑しながら立ち上がる。
二年前。
フルダイブ型VRMMORPG『ファンタズマ・ゲイト』は、突如としてデスゲームへと変貌した。
ログアウトはできない。
ゲーム内で命を落とせば、現実でも死ぬ。
あの日、多くのプレイヤーが絶望した。
俺も、その一人だった。
それでも――
「おはようございます!」
扉を開けると、小柄な虎獣人の少女が笑顔で立っていた。
ぴこぴこと動く虎耳。
嬉しそうに揺れる尻尾。
そして、人を安心させる柔らかな笑顔。
「おはよう、たると」
王虎の牙ギルドマスター。
たると。
前線で戦うことはできない少女。
それでも、不思議と誰もがついていきたくなる。
そんな人物だった。
「朝ごはん、できてますよ!」
「今日は何だ?」
「パンと野菜スープです!」
「朝から豪華だな」
「頑張りました!」
えへへ、と胸を張るたると。
その笑顔を見るだけで、不思議と肩の力が抜ける。
きっと、それはガウだけではない。
◇
《王虎の牙》。
それがガウたちの所属するギルドの名だ。
拠点は、マップ最果てにある小さな集落。
住民のほとんどはNPCで、プレイヤーの数もまだ少ない。
城壁はない。
立派な施設もない。
あるのは木造の家と畑――そして、仲間たちの笑顔だけ。
「きゃっ!?」
突然、何かが割れる音が食堂に響いた。
「たると!?」
俺が振り返る。
床には砕け散った皿の破片。
その中央で、たるとが申し訳なさそうに固まっていた。
「ご、ごめんなさい……」
「怪我は!?」
「手ぇ切ってないか!?」
「動くな、破片踏むぞ!」
ハヤテとゴウマが慌てて駆け寄る。
たるとは急いで両手を見せた。
「だ、大丈夫です!」
「本当か?」
「はい!」
「ならいい」
ゴウマは安堵したように息を吐く。
ハヤテもほっと肩の力を抜いた。
「皿なんか、また作ればいい」
「そうそう」
「でも……今日だけで三枚目です……」
「今日だけで!?」
しゅん、と虎耳が垂れる。
その様子がおかしくて、俺は思わず吹き出した。
「まあ、生きてるなら問題ない」
「問題ありますよぉ……」
「私は皿よりギルマスの方が大事だな」
「比較対象がおかしいんだよ」
ハヤテが呆れたように笑う。
その瞬間、食堂は笑い声に包まれた。
二年前、この世界は地獄だった。
仲間を失った者もいる。
未来を諦めた者もいる。
この小さな集落も、いつ壊れてしまうか分からない。
それでも――
ここには笑顔がある。
帰る場所がある。
守りたいと思える仲間がいる。
「そういや、北の森にゴブリンが出たらしいぞ」
ハヤテがパンをかじりながら言った。
「じゃあ俺が行くか」
「頼む」
「東の畑の方にはウルフが出てるらしい」
「ああ、それなら私が見てくる」
俺は立ち上がる。
「無理すんなよ」
「そっちこそな」
まだ役割なんて決まっていない。
誰が何を担当するかも決まっていない。
必要なことを、できる者がやる。
今の《王虎の牙》は、それで十分だった。
「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい!」
たるとの笑顔に見送られながら、ガウは集落の外へ向かった。
仲間を守るために。
《王虎の牙》の一員として。
この小さな集落を守るために。
この笑顔を守るために。
この時のガウは、まだ知らない。
この最果ての小さな集落が、多くの仲間たちを迎え入れ、やがて誰もが憧れる大きな町へと成長していくことを。
けれど今は、ただ一つだけ願っていた。
――この笑顔を、誰一人失いたくない。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけていたら、とても嬉しいです。
第一話では、《王虎の牙》のみんなの日常と、最果ての小さな集落の雰囲気を中心に描きました。
派手な戦闘や大きな事件はまだありませんが、この作品では「帰ってこられる場所」の温かさや、仲間との何気ない日常も大切に描いていきたいと思っています。
次回からは、新しい仲間との出会いやさまざまな出来事を通して、少しずつ物語が動き始めます。
もし気に入っていただけましたら、これからもガウたち《王虎の牙》の物語を見守っていただけると嬉しいです。
感想や評価、ブックマークをいただけると、とても励みになります!
それでは、また次回お会いしましょう!




