表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された公爵令嬢、冷遇された第二王子と手を組み“恐怖政治”をひっくり返します  作者: 星詠みミラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/27

第18話「隣国の王女」

 王宮の迎賓館は、久しくないほどの華やぎを見せていた。


 白と青の旗が掲げられ、楽団が静かに調律を行っている。


 隣国レガリア王国より、正式な使節団が到着したのだ。


 名目は「友好確認」。


 だが、王都の誰もが知っている。


 それが政略の匂いを帯びていることを。


 別邸の窓辺で、エレノアはその報せを受け取った。


「王女イザベラ殿下が、第二王子殿下と個別会談を望まれているとのことです」


 セシルが淡々と告げる。


 胸の奥が、ひどく静かに締めつけられる。


「……正式な打診ですか」


「はい。第一王子殿下も承知済みと」


 つまり。


 王家として歓迎している。


 アルベルトが迎賓館へ向かったのは、その一刻後だった。


 迎賓館の応接室。


 陽光を受けて立つ少女は、思っていたよりも若い。


 金に近い蜂蜜色の髪を結い上げ、澄んだ緑の瞳を持つ。


 イザベラ・レガリア。


 まだ十八。


 だが、その立ち姿は堂々としている。


「第二王子殿下」


 柔らかく一礼する。


「お会いできて光栄です」


「こちらこそ」


 アルベルトも礼を返す。


 形式的な挨拶が交わされた後、侍従たちが下がる。


 二人きり。


「単刀直入に申し上げます」


 イザベラは笑みを浮かべる。


「私の父は、この縁談を望んでいます」


「承知している」


「ですが」


 彼女の目がまっすぐに向く。


「私は、あなたの評判も承知しております」


 評判。


「婚約法の透明化を求めた王子」


 アルベルトは無言で頷く。


「興味深い」


 イザベラは小さく笑う。


「あなたは、国をどうしたいのですか」


 唐突な問い。


「守りたい」


「何を」


「民を」


 迷いなく答える。


 イザベラの瞳がわずかに輝く。


「理想家ですね」


「現実も見ている」


「そうでしょう」


 彼女は椅子に腰掛ける。


「私は駒になる覚悟があります」


 さらりと言う。


「国家のために」


 その言葉に、アルベルトの脳裏に別の顔が浮かぶ。


 エレノア。


「ですが」


 イザベラは続ける。


「駒であることと、目を閉じることは違います」


 視線が鋭くなる。


「あなたは目を閉じない方だと聞きました」


「……誰から」


「噂は早いものです」


 王都の動きは、既に隣国へ届いている。


「縁談は、政治です」


 イザベラは率直に言う。


「あなたが受ければ、両国は強く結ばれる」


「受けなければ」


「疑念が生じる」


 静かな事実。


「あなたは受けますか」


 まっすぐな問い。


 アルベルトは沈黙する。


 国家のためなら、受けるべきだ。


 だが。


「……検討する」


 それだけを答える。


 イザベラは微笑む。


「賢明です」


 立ち上がる。


「私は、あなたの敵ではありません」


「承知している」


「そして」


 一瞬、表情が柔らぐ。


「あなたの隣に、すでに誰かがいることも」


 空気が止まる。


「……」


「噂です」


 小さく笑う。


「安心してください。私は恋をしに来たのではありません」


 扉が開き、侍従が戻る。


「政治は退屈です」


 イザベラは振り返りざまに言う。


「ですが、あなたの国は面白い」


 去っていく背中。


 アルベルトは深く息を吐く。


 夜。


 別邸。


 エレノアは資料を整理していた。


 扉が開く。


「殿下」


「イザベラ殿下と会った」


 率直な報告。


「……」


 胸が波打つ。


「賢い方だ」


「そうでしょうね」


 声は静か。


「縁談は」


「検討すると答えた」


 一瞬、視界が揺れる。


 だが、顔には出さない。


「国家のためなら、当然です」


「エレノア」


 呼ばれる。


「私は」


「はい」


「駒になる気はない」


 低い声。


「だが王族である以上、利用はされる」


「承知しています」


「それでも」


 彼が一歩近づく。


「私の選択は、私が決める」


 視線が交わる。


 胸が強く打つ。


「私は、あなたの妨げになりません」


 静かな宣言。


「妨げではない」


 即答。


「支えだ」


 甘い。


 だが不確実。


 外で夜風が鳴る。


 政略の影が、確かに近づいている。


 恋ではなく。


 政治の三角形が、静かに形を成していた。


ここまでご覧いただきありがとうございます。


明日からは1日1話の投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ