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COPYRIGHT LIBERTY  作者: 神代零


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第四話 「観測ドローン」

 警報音が地下区画全体へ鳴り響く。


【文化保全庁 観測介入】


【全未認可通信を遮断します】


 赤い警告灯。


 点滅するネオン。


 地下創作圏アーカイブの空気が一瞬で変わった。


 さっきまで笑っていた創作者たちが、一斉に端末を閉じ始める。


「急げ!」


「保存領域切れ!」

「観測遮断起動しろ!」


 怒号。


 走る人影。


 地下街は一瞬で戦場みたいになった。


「ユウト、こっち!」


 白瀬レナがユウトの腕を掴む。


「待っ――」


 その瞬間。


 轟音。


 地下区画の天井が爆発した。


 コンクリート片が降り注ぐ。


「うわっ!?」


 ユウトは反射的に身を伏せる。


 煙の向こうから現れたのは、

 白い球体だった。


 人間の頭ほどのサイズ。


 中央には赤い単眼センサー。


 周囲を浮遊している。


【観測ドローン起動】


【違法創作領域を確認】


 無機質なAI音声。


 ドローンが空中へ投影映像を展開する。


 地下街の住民情報。


 認識ID。


 危険度。


 全員のデータが強制表示されていく。


「……なんだよ、これ」


「文化保全庁の自動観測機」


 レナが低く言う。


「まずい。今日は本気だ」


 次の瞬間。


 ドローンの赤い単眼がユウトへ向いた。


【対象確認】


【未認可創作者 天城ユウト】


【認識危険度:B級】


【捕捉開始】


「っ!?」


 直後。


 空気が歪んだ。


 見えない圧力。


 頭の奥を直接掴まれるような感覚。


「う、ぁ……!」


 ユウトは膝をつく。


 視界がノイズ混じりに崩れる。


 記憶が揺れる。


 三〇一話。


 自分の作品。


 タイトル。


 キャラクター。


 思い出そうとしても、

 輪郭が曖昧になる。


「な、んだ……これ……!」


「認識剥離だ!」


 レナが叫ぶ。


「そいつ、人間の記録領域へ干渉してくる!」


 ユウトの呼吸が乱れる。


 頭の中から、

 自分の物語が消えていく。


 書いたはずなのに。


 確かに存在したはずなのに。


 思い出せない。


「やめろ……!」


【危険創作記憶を削除します】


 ドローンが接近する。


 赤い光。


 冷たい機械音。


 その時だった。


 横から何かが飛んだ。


 閃光。


 衝撃。


 ドローンのセンサーが砕け散る。


【ERROR】


【観測同期異常】


 機体が火花を散らしながら墜落した。


 煙の向こうに立っていたのは、一人の男。


 長身。


 黒いフード。


 右腕には無数のコードが接続されている。


「新人にしちゃ派手に狙われてるな」


 男は笑った。


「……誰だ」


「浅間クロウ」


 男は崩れたドローンを蹴飛ばす。


「この辺の掃除屋」


 レナが呆れたように息を吐く。


「遅い」


「無茶言うな。保全庁の観測網、今日は異常に濃い」


 クロウはユウトを見る。


「立てるか?」


 ユウトは震える頭を押さえながら立ち上がった。


 まだ視界が揺れている。


「今の……なんだったんだ」


「記録消去兵器」


 クロウは短く答えた。


「正式名称は知らん。皆、“白紙機”って呼んでる」


 白紙機。


 嫌な名前だった。


「人間の認識から情報を剥がす。

 作品だけじゃない。記憶ごと消える」


 ユウトの背筋が冷える。


「そんなの……」


「だから皆、保全庁を怖がる」


 レナが静かに言った。


 その時。


 地下街全体が激しく揺れた。


【第二次観測部隊 接近】


【強制同期処理を開始します】


 周囲の創作者たちの顔色が変わる。


「やばいぞ」

「上級観測官だ」

「逃げろ!」


 悲鳴混じりの声。


 クロウは舌打ちした。


「チッ……S級来やがったか」


 ユウトは息を呑む。


「S級……?」


 レナの表情が険しくなる。


「文化保全庁の本隊」


 直後。


 地下街の奥。


 暗闇の向こうから、

 ゆっくりと足音が響いた。


 硬質な軍靴の音。


 一歩。


 また一歩。


 そして。


 白いコートを纏った人影が、

 煙の中から現れる。


 胸元には、銀色の紋章。


【文化保全庁 第一観測執行局】


 その瞬間。


 地下創作圏の空気が凍った。

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