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COPYRIGHT LIBERTY  作者: 神代零


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第十話 「観測反逆」

【存在同期率 上昇】


【空白崩壊 停止】


 地下創作圏アーカイブの空気が変わっていた。


 さっきまで恐怖しかなかった空間に、

 奇妙な静寂が広がる。


 銀髪の少女――ナギは、自分の手を見つめていた。


 輪郭が消えていない。


 指先も、

 髪も、

 確かに“存在”している。


「……なんで」


 ナギの声は震えていた。


「どうして、消えないの」


 ユウトは少し困った顔をする。


「知らねえよ」


 だがその言葉に、

 地下街の誰かが笑った。


「ははっ、適当すぎるだろ」


「でも実際見えてるしな」


「空白ってもっと化け物かと思ってた」


 創作者たちの声。


 認識。


 視線。


 それがナギへ向けられるたび、

 少女の存在が安定していく。


 レナが小さく息を呑む。


「……ありえない」


「群衆認識による存在固定なんて」


 クロウも驚いた顔で頭を掻いた。


「教科書レベルじゃ不可能扱いだぞ」


 その時。


 上空のドローン群が一斉に警告音を鳴らした。


【観測異常】


【空白個体 安定化を確認】


【認識法則逸脱】


 霧島イツキの視線がユウトへ向く。


 冷たい瞳。


 だがその奥に、

 わずかな揺らぎがあった。


「……人為的観測固定」


 霧島が低く呟く。


「未認可集団による存在補強現象」


 ユウトは眉をひそめる。


「難しい言葉で誤魔化すなよ」


 一歩前へ出る。


「皆が“いる”って思った。

 ただそれだけだろ」


 霧島は沈黙した。


 その瞬間。


 地下街の大型スクリーンへ大量の警告ログが流れ始める。


【MUSE中央観測網 異常】


【認識同期エラー】


【固定法則競合】


 レナの顔色が変わった。


「まずい……!」


「今度はなんだよ!」


「地下創作圏全体が、

 中央観測網へ干渉し始めてる」


 クロウが舌打ちする。


「集団認識が強すぎるんだ」


 ユウトは理解できなかった。


 だが直後。


 空間が震えた。


 地下街全域のホログラムが暴走する。


 広告が切り替わる。


『安全な物語を』


『認証済み感情を推奨します』


 その表示へ、

 黒いノイズが走った。


 文字が書き換わる。


『物語は誰のものだ?』


 地下街が静まり返る。


 レナが目を見開いた。


「……誰がやった」


 次の瞬間。


 東京全域の空へ、

 巨大な映像が投影される。


 国家広告ネットワーク。


 本来なら保全庁しか触れられない領域。


 そこへ。


 一つの文章が浮かび上がった。


『削除されても、物語は消えない』


 ざわめき。


 地下街だけじゃない。


 地上ネットワークも騒然となる。


【SNS接続数 急増】


【違法同期拡散】


【未認可観測波形を確認】


 霧島の表情が初めて険しくなった。


「誰だ」


 直後。


 地下街の奥。


 巨大スクリーンが点灯する。


 そこに映っていたのは、

 一人の仮面の人物だった。


 黒いノイズ混じりの映像。


 声は加工されている。


『ようこそ、地下創作圏アーカイブ


 創作者たちがざわめく。


「まさか……」

「嘘だろ」

「生きてたのか……!」


 レナの顔色が変わる。


「……ゼロ」


 仮面の人物は静かに笑った。


『文化保全庁は勘違いしている』


『物語は管理できない』


 映像越しでも分かる。


 異様な存在感。


 地下創作圏そのものが、

 その人物を中心に同期している。


『だから今夜、証明しよう』


 東京全域の空へ、

 無数の違法作品データが解放される。


 小説。


 音楽。


 映像。


 絵画。


 削除されたはずの創作群。


 何百万もの“消された作品”が、

 一斉にネットワークへ溢れ出した。


【観測災害警報】


【認識同期暴走を確認】


 霧島が即座に通信を飛ばす。


「全観測局へ通達!

 中央同期網を閉鎖しろ!」


 だが遅かった。


 東京の空が、

 ノイズ混じりの文字で埋め尽くされていく。


『物語は、まだ生きている』

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