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13話 世界の異変について知りなさい(2)



 ――バシィーン――



「あんたそんなことのために2人を危険に晒したの!?ふざけんじゃないわよ!」

姉崎(アネサキ)さん落ち着いて!」


 激昂し、ダレスさんに平手打ちし尚も詰め寄るモネをジュンとアオイが必死に止めている。モネがこんなにも怒っている姿をいままで見たことがあるだろうか。ダレスさんの頬には綺麗な紅葉模様が出来上がっている。さて、何故こうなってしまっているかというと、少し時間を遡らないといけない。


 ――数十分前――


「私は街に入る前からこの世界について色々申し上げましたね。それこそ、この世界のことを細かく。7つの厄災者(ラクシャ)、それとガルシアさんが仰っていた限られたものしか知らない予言のことまで私は皆さんに言いました。」


 そうだ。確かにそれぞれの種族がそれぞれの厄災者(ラクシャ)を封印している事や、それが復活の兆しがあるっていう予言があることまであの時すでに言っていた。


「そうです。あの時すでに私は皆さんがその予言の救世主だと確信しておりました。」

「なるほど、表向きはギルドカードの発行手続きでギルドまで来たけど、本当の目的は僕たちの素性の確認だったんだね。でもダレスさん何故あの時にはもうその救世主が僕たちだって確信したんですか?僕たち自身そんな身に覚えのない事を。」

「ジュンさんそれはですね、私は皆さんがあのモルヴェインと戦っている時、実は遠くから見ておりました。もちろんアオイさん、トオルさんが魔法ではない何かを使って戦っているところを。」


 なるほど最初から知っていたわけか。いやじゃあどうして?まさかダレスさん……

 あまりこの先を聞きたくない気がするが、まあダレスさんは止める気はなさそうだ。ジュンとモネは今にもダレスさんに飛びかかりそうだ。


「先に再度申しておきます。あの時は()()()巻き込む様な魔法を使い申し訳ございませんでした。本当に魔法ではないものなのか確信が持てませんでしたので、仲間に危険が及んだ結果どうするのか見ておりました。結果私の魔法では感知できない不思議な力によってお二人が助けられたのを見て確信致しました。あなた方が救世主なのだと。」


 その話を聞き我慢できなくなったモネは無言で立ち上がり、ダレスさん目掛けて平手打ちをしたのだった。

 ちなみに余談だが、手加減は出来なかったのかとモネが涙ながらの質問にダレスさんはこれまでの表情とは全く違う、大司祭様に向けた顔とも明らかに違う冷酷で冷たい目、そして冷たい声でこう答えた。死んだら救世主ではなかった、それだけです。と。モネはそれを聞き力が抜けたのか倒れる様にソファへ座り込んだ。


 ――モネを落ち着かせた後――


「お二人を危険に晒したことは本当に申し訳なく思っております。ですが私にもそうせざるを得なかった理由がございます。一刻の猶予もないのです。1分1秒も惜しいのです。まぁ、見てもらった方が早いですね……」


 そういうと徐に窓際へ行き観音開きの大きな窓を開くと少し横にずれ振り返り夜空に手を差し伸べ、ダレスさんはこう続けた。


「皆さんは数日しかこの世界にいないですがそれでも月がこの世界にとってどれほどの重要な物かはすでにご理解して頂いていると思います。そんな世界の宝とも言える月の今の姿をご覧ください。」


 そう言われてこのアヌエルで初めて夜空に浮かぶあの見慣れているはずの月を眺めた。最初にこのアヌエルへ来た時異世界だと判別するのに役に立ったのは異様な大きさの太陽だった。それに比べると月はそこまで大きくないが、地球で見るそれよりかは少し大きい。だが、俺たちが多分その月を見て最初に思ったのは大きさのことなんかじゃない。そう、その夜空に浮かぶ月を異様な時計?の様な、タイマー?の様な不気味な模様がそれに重なる形で覆い被さっていることに全意識を持ってかれていた。針は時計で言うところの55分辺りを指している。その景色に圧倒され言葉が出ないでいるとダレスさんはそのまま話し始めた。


「あれは人類滅亡時計と我々は呼んでおります。あれが出た直後に予言者により先の言葉が予言され、また針が進むにつれ魔物の脅威も増して来ています。このままいけば3年もあれば針は一周してしまうでしょう。そしてその意味とは言うまでもありません。幸いここまで針が進んでもラクシャの復活はまだ見られませんが、恐らくはこれからだと。だから私は手段を選んでいる余裕などなかったのです!どうかご理解いただきたい!皆さんはあの時計が出始めて初めての救世主なのです!どうかこの世界を救っていただけないでしょうか。」


 はあ?なんだよそれ。そんな状況の世界に俺たちは飛ばされていたのか。3年……しかも封印されたなんかやばい者までこれから復活するだって?帰るどころか生きることさえままならない状況じゃねーか。さらにそれを救ってくれだと!?ふざけるな。俺たちはただ帰りたいだけだ。帰る方法があればそれを教えてくれるだけでよかったんだ。それが何故こんなことに……

 突拍子のない事実にすでに俺たちの頭は正常に機能しなくなり、何か言いたいのに何も言えず、各々声帯だけ軋んで言葉にならない。ジュンを除いて。


「……あの、一旦整理させてください。まずこの世界には7つの厄災者(ラクシャ)がいる。それが復活しようとしている。タイムリミットはあの月に覆い被さっている時計の針が12時まで。それで止められる者は予言上異質の僕たちだけ。そう言うことですね?」

「……まぁそうなるな。」


 ギルドマスターのガルシアさんが腕組みしながら短く答えた。依然として鋭い目線をジュンに向けている。だが、ジュンはこの圧迫面接みたいな地獄の雰囲気に飲まれることなく淡々と続けた。


「それでは、いくつか質問をさせてもらいます。出来る限り詳細に。そして嘘はつかないで貰いたいです。」

「はい!それはもちろん私は皆さんが救世主だと信じておりますので、知っていることは何でもお教え致します。」


 何でジュンはこれほどに冷静でいられるのだろうか。地球にいた時はあんな姿あまり見なかったから、そんなジュンの姿を含め俺たちはこの状況を黙って見ることしかできなかった。

 そこからはジュンとダレスさんの質疑応答が始まった。

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