12話 世界の異変について知りなさい。
「皆さん、そんなに落ち込まないでください!
状況が状況ですが、とりあえず当初の目的のギルドへ身元保証書であるギルドカードを作りに行きますよ!私はあのモルヴェイン(蜘蛛の魔物)の討伐完了報告もしなければならないので。」
そうだ、当初の目的は教会で洗礼を受けることと旅をするにあたって各国の入国をスムーズに行える様に身元保証できるギルドカードを作りに冒険者ギルドに行くことだった。
教会での出来事がインパクト強すぎてすっかり頭から抜けていた。
こんな状況の中でもダレスさんの大司祭を黙らした時の感じは、今は見る影もなくいつもの様に能天気な感じだ。
俺たちが不安にならない様に気を遣ってくれているのだろうか。そんなことをぼんやり考えていると、ダレスさんの足が止まった。
「さぁ、冒険者ギルドにつきましたよ!皆さんは一旦応接間までご案内いたしますので、私の用事が終わるまで少しお休みになっていてください。」
そう言われて中に入ると、もう夜だと言うのに未だ多くの冒険者の姿が見える。
その人混みを潜り抜けながら応接間に案内されひとまず落ち着くことができた。
「なー、これからどうするよ?結構やばい状況じゃねーか?」
「うん、あの祝福とやらが弾かれたのは予想外だった。思うに弾かれたのは十中八九スキルのせいだと思う。それに僕たちが初めてみたいな反応を見るとこの世界でスキルが使えるのは僕たちだけってこともこの先考えて行動しなきゃいけないと思う。」
アオイの問いに対して、冷静に答えるジュンだが、その目はまだ何か考えている様だった。
それ以降アオイもあいつなりに何か考えているのか黙り込んだ。モネも俯いたままだし、俺もこの先のことを考えるとため息が出る。
長い沈黙を破ったのはジュンだった。
「みんな、潮時だと思う。ダレスさんには本当のことを話そう……今までは警戒してスキルとか身元を隠してたけど、身の危険が及んだ以上今頼れるのはダレスさんしかいない。
絶対信用できるとは言わないけど、実際ケロンさんから守ってくれたのは事実だし、
あの口調からして僕たちが無害であると証明出来ればダレスさんも敵になることはないはず……だと思うんだけどどうかな……」
実際魔法が使えないことが世界では敵とみなされた以上それを騙し続けて行くのは困難だろう。ジュンの言う通りかもしれない。
「そうだな、打ち明けよう。魔法が使えない代わりにスキルが使えること、元々この世界の者では無い事、目的は元の世界、地球に帰る事。全部吐いて協力を仰ごう。その説得はジュンやってくれるか、俺じゃ上手く説明できないと思うから……」
ジュンは小さく頷き、ここにいる全員異を唱えることは無かった。程なくして教会の時と同じ様にダレスさんはまた知らない人物と共に応接間へ入ってきた。2人は俺たちの対面に座り、ダレスさんがお茶を啜りながら喋り始めた。
「皆さん、まずは温かいお茶をどうぞ。夜は冷えますからね。それで早速ですが今回の件はとりあえずコチラでなんとかします。その代わりですが皆さんにいくつか頼み事があります。」
待て待て気になることが多すぎるぞ。まず誰だそのおっさんは。さっきから自己紹介もせずじっとコチラを睨んでるおっさんは!それとこの状況をなんとかできたのか、すごいなダレスさん。問題は頼み事か。
「頼み事というのはですね、単刀直入に申し上げますが、隠し事をしていますね?まずはそれを開示して頂くこと。」
まぁそうなるよな。
魔法が使えない者たちだからな。
何か隠してると思われて当然だ。だけど事前に全部話すって決めていたからそこまで動揺はしてない。
それを聞いてジュンは一息つき程なくして、この世界ではない地球というところから来たこと、
そしてここに飛ばされた後この街が見えたのでこの街を目印に森を進んでいたところ魔物と遭遇し、魔法とは異なる力で撃退したこと、
そこでダレスさんに助けられたこと、
そして自分たちの目的が地球への帰還方法を探すこと。包み隠さずジュンは淡々と話したのだった。
「僕たちがここへ来て初めての人物がダレスさんだったのであの状況下で全て打ち明けることが危険だと判断し隠しました。」
ダレスさんとダレスさんの隣にいるいかついおっさんはジュンの話を聞き終えた後、2人は何か決心した様にコチラに目を向けた。
【やがて世に、再び厄災は兆す。しかして同じ刻、8人の異能を抱きし者あらはれん。彼の者ら、授かりし力をたずさへて、厄災に抗ふことならん】
なんだ?知らないおっさんが急に喋り始めたと思ったら、これまた訳のわからないことを言っている。
「ああ、すまないまだ名乗ってなかったね。
私はこの冒険者ギルドを統括しているギルドマスターのガルシア・ドレンだ。呼び方は自由にしてくれ。
それでだが、今言ったことは、各国の上層部と、各国の満月級冒険者が所属するギルドマスター及びその満月級冒険者にしか知らされていない世界の予言だ。」
俺たち4人が一様になんの脈絡もなく突然言われたこの言葉を理解する前にダレスさんが補う様に話し始めた。
「いやー、皆さんすみません。ガルシアさんはいつも言葉足らずで今の話がなんのことかさっぱりですよね。まぁコチラも予想外の情報がありましたが、それは追々お聞きするとして、まずは私たちの話を聞いてください。」
そうしてダレスさんは話し始め、全ての話を聞き終わる頃には出された温かいお茶は、すっかり冷え切ってしまっていた。




