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お祭り当日、早朝に起きて準備を始める。
ジャガイモはスティック状にして水にさらし、鶏肉は水気を切っておく。
ドーナツは卵とミルク、溶かしバターを入れて混ぜておく。
屋台ではなるべく揚げるだけにしておきたいのだ。
慌ただしく朝食を摂り、屋台の設営に向かう。
いつもと違う賑わいを見せる町を、アンナは珍しげに見ながら歩く。
屋敷から徒歩5分ほどの場所に設置された屋台は、利便性を考慮してだった。
材料や下ごしらえした物を保存する場所が近いほど、回転数も上がるだろうと見込んでの位置なのだ。
サクサクと屋台をレイアウトし、調理の準備に取り掛かる。
チキンとジャガイモには植物油と少しのラード。
ドーナツは植物油。
油の温度が頃合いになると、ササッと具材を投入する。
シャアアァァと油の跳ねる音と、漂い始める肉とジャガイモの香り。
これがたまらないのよ!
音と匂いで呼び込むのは基本よね!
揚げてる側もヨダレ垂れそうな感じだもの、コレはお客さん来るでしょ!
チキンは3個ほどを串に刺し、ポテトとドーナツは浅い紙袋に入れる。
これなら食べ歩きにも便利!
「いらっしゃいませ〜!」
声を上げた途端、数人が寄って来る。
「いったい何の食べ物だい?」
「匂いが気になって気になって仕方なかったんだよ!」
「こちらは鶏肉を味付けして揚げたものと、ジャガイモを揚げたものです」
「お酒に合いますよ!」
「こっちは小麦粉に味を付けて揚げたお菓子です」
「とっても美味しいですよ〜」
見習い娘達の営業トークに、道征く人達は興味深々で覗いてくる。
「うまそ〜!」
早速チキンにかぶりついた客が、飛び上がるように叫んだ。
「熱っ!」
「あ、熱いので火傷には気を付けて下さいね!」
「いや、早く言ってよ⋯⋯」
お客さんとのやり取りも軽快だ。
「うわっ!コレすげぇうめぇ!」
「味がしっかりしてて、柔らかくて、肉汁が凄い」
「こっちのイモもサクサクなのに、ほっくりしててすげぇ旨いぞ」
「こりゃあ酒にピッタリだ!」
前世でも唐揚げ&ポテトは居酒屋の定番メニューだったもん。
合わない訳がない。
「このドーナツってのも美味しいわ」
「優しい甘さで、全然クドくないのね」
やはりスイーツ系は女性が買っていく。
ドーナツも本当はチョコをかけたりしたかったのだが、カカオが見つからないから仕方ない。
いつか世界中旅して、米や醤油、緑茶やカカオ、コーヒー豆なんかを探すのもいい。
「もしかしたら、この世界に葵衣に似た人がいるかもしれないし!」
なんて希望くらいは持ちたい。
家族には恵まれなかったけど、友達は作れるはずだし、推し活だってできるから。
それに、アンナローズを大切にしない家族に振り回されるなんて、真っ平ごめんである。
普通5歳児なんて、親に甘えたい盛りのイヤイヤ期の真っ只中なのに、アンナローズはもう諦めを知っているのだ。
親の顔も名前も記憶にない時点で、クズ認定待ったなしである。
兄は多少の目溢しするとしても、両親に至ってはクソヤロウとしか思えない。
早々に見切りをつけるためには、地盤固めが大事だ。
なにかあった時のためにも、自立するのが目標である。
出来れば見習い娘達の給料ぐらいはアンナが稼ぎたい!
そしていつかその日が来たら、クズみたいな家族に中指立てて、みんなで笑って逃げ出してやるのだ。
そのためにはまずは稼げるだけ稼ぐ!




