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「熱っ!うんめ〜!」
「はふっ!んーおいし〜!」
はい、フライドチキンは正義です。
「こりゃ酒がススムな!」
「うわ、柔らかっ!」
「ん〜!ジューシー!」
そうでしょう、そうでしょう。
「レモン汁をかけるとまた美味しいわよ」
かけたものを差し出すと、みんなが一斉に群がる。
お前らは欠食児童かい!
「うん、レモン味はサッパリといただけますね」
「うめー!」
「これとポテトなら、お酒のおつまみにもなるでしょう?」
「こりゃ最高っすよ!」
みんなの意見が良かったなら、売っても大丈夫そうだ。
ホッと息を吐くと、料理人の一人がポツリと呟いた。
「ーーお嬢様の考えた料理は、きっと食の概念を変えます」
「えっと⋯⋯?」
「この屋敷の料理長さえ知らない料理、今までにない調理法、簡単なものから複雑なものまで、味わったことはありません」
料理人の言葉にアンナは黙り込む。
「そうですね。屋台なんて出したら、きっと客が殺到しますよコレ」
「でも、みんなに知ってもらいたいな〜お嬢様の料理」
「わかります」
「お嬢様は凄いんです!って自慢したい」
みんなの声にアンナは思案する。
この世界の概念を変えるーー。
それはとても怖いことだ。
ーーそれでも。
前世の記憶が訴える。
まだやりたい事がたくさんあったのに!と、自分の中の杏奈が叫んでいるのだ。
「まぁ、やりたいようにやってこそ人生よね⋯⋯」
今回は後悔のないようにしたい。
例え近くに親友がいなくとも。
「ここで生きていかなければならないんだものね」
『杏奈凄い!私にもジョー人形作って!』
大きな瞳をキラキラさせて褒めてくれた親友。
『杏奈大好きー!』
手先が少し不器用だったけれども、メイクやオシャレのセンスは抜群だったっけ。
ーー泣いてないといいな。
最後に見た必死に私の名前を呼んで泣きじゃくっていた姿。
ーー大丈夫。私はここで好きに生きるよ。
それは静かな決意。
ーーいつかまた会えたらいいな。
強く目を閉じて、大好きな親友に笑いかける。
「とりあえず私が学園に行くまでには、色々なことを領内に広めようと思うの」
「この料理とかですか?」
「それに服や小物ね。マスコットとかもそれよ」
目標は独り立ち!
それで推し活しまくって、クズ家族と離れて好きに生きるのよ!
ーーこの日アンナは開き直って自重を止めたのである。
屋台で使う従業員用にエプロンとバンダナを作り、レイアウトを考えたりしていたら、あっという間に祭の前日になる。
前日は2日分の仕込みをしなくてはならないので、キッチンはそりゃあもう戦場だった。
みんなが「絶対売れる!」って言うから、約500人前くらいの鶏肉を仕込んだ。
ジャガイモなんて木箱だ。
ドーナツもミックス粉を作っておいたので、明日の朝に必要な液体を混ぜられるようにしておく。
準備は少し過剰なくらいがいいのだ。
アンナは前世の学祭を思い出していた。
ワクワクしながらクラス一丸になって準備したっけな⋯⋯。
まぁ、一番大変なのは当日なんだけど。
「下ごしらえが終わったら、今日は早めに休みましょう。早起きして仕上げをしないといけないものね」
「はーい!」
準備だけでなく、売り子もやらないといけないのだ。
明日はきっと大変な思いをするだろう。
そのためにも、早く休んで体力を温存しなくちゃね!




