卒業/そして
今日でGWも終わりですね。長かったというのが作者の感想です。
今回は後書きを書かせてもらいました。
ミリィ嬢たちの通う学校は2年制である。これは義務教育だから短いのであって、ここから更に勉強したい人には次のステージがあった。お金が払えること又は成績優秀であることが条件だが。
とにかく8歳になる今年が今日はミリィ嬢たちの卒業式なのである。
保護者の多くもまた平民なので式典とはいえこの場に保護者はおらず、学校関係者しかいない。だから彼女らが成長した姿を見せるのはこれまでお世話になった先生たちということになる。
「卒業生代表、ルーク・ドゥーラ・マグナス」
「はい」
卒業生を代表して話すのは入学式と同じくルーク少年であった。ミリィ嬢もある理由から成績は負けてなかった(むしろ勝っていた)のだが、貴族である彼に役目が回ってくるのは必然だっただろう。それにもしミリィ嬢が代表だった場合、緊張してひどい挨拶になったかもしれない。
でも、まぁ。
『おい、起きろ!ルーク少年が出てるぞ!』
「」
『おーい!』
「」
彼女は昨夜、緊張やらで気持ちが高鳴って全然眠れず、今、寝てしまっている。既視感を覚えさせるが果たして彼女は成長しているのだろうか?
卒業式が終わるとそのまま解散になる。もうほとんど帰ってしまっているが、ミリィ嬢たちはあいさつ回りをしているルーク少年を待っている。マリー嬢たちとはまだまだ一緒にいられるが、ルーク少年は貴族、これから会う機会もほとんどないだろう。
ミリィ嬢の居眠り問題を話題に会話が盛り上がっていると、ルーク少年がやってきた。
「なんだお前ら、まだいたのか」
呆れた声でそんなことを言うルーク少年だったが、顔はちょっと嬉しそうだ。
「ルーク、お疲れ様。いい挨拶だったわ」
「……頑張った……」
「うん、ぼく、感動したよ」
「なんだお前ら気持ちわりぃ」
皆で褒めると気味悪そうな顔をする。
「えっと、ルークを待ってたんだ!今日はお昼一緒に食べようってなって。大丈夫?」
一人、会話に混じれないミリィ嬢は誤魔化すように満面の笑みで話を進めた。それを受けてルーク少年の顔が赤くなる。
「お、おう……」
「よかったぁ、じゃあ、早く行こう!」
向かった先は去年の祭りの際に利用した飲食店だ。
最初は店の料理の話だったが、次第にこれからについての話題になった。卒業式後にする話なのかと違和感を覚えるが、彼らはまだ8歳。15歳で成人だとしたらまだまだ道の始めの方なのである。
「私は家の手伝いと弟の面倒を見て、そのまま家を次ぐか結婚して出ていくか、まぁそんなところね」
「結婚かぁ、マリーは好きな人とかいるの?」
「そうねぇ、いたらいいのだけど」
いないのよね。と心の中の溜息が聞こえた気がする。
「……お前はどうなんだよ」
「私?私はこれから家で妹の面倒みながら沢山勉強してロントモール学園を目指すんだ!」
「……はっ、お前に出来んのか?」
「出来るよ!いっぱい頑張るもん!!」
「……ミリィ、成績……いい……」
「そ、そうよ。せっ成績も悪くないんだし」
「領内の義務教育の学校と王都のエリート学校じゃ、話が違うからなぁ」
ルーク少年は最後までミリィ嬢をからかう方向らしい。
「うっ……絶対受かってやるんだから!ロナちゃんは?」
「……まだ……」
「そっかぁ。じゃあ決まったら教えてね」
「……うん……」
すんなりと話が終わったロナ嬢がネット少年の方を向く。
「ぼ、僕は、明日から、ここで、住み込み」
「えっ、ネット、ここで働くの?」
「う、うん。あと、自分の店がっ……欲しい」
ネット少年は飲食店を経営したいらしい。店を持つとなると性格的に少し不安を覚えるが、これからの彼の成長に期待したい。
「ルークはこれからどうするの?」
「俺は4月から王都の貴族学校にいって4年、その後はまぁ何もなければそのまま騎士学校にでも行って、最終的には王宮の近衛騎士にでもなってるだろうよ」
彼が言う何もなければというのは実力の問題というより貴族間、身内内での話だろう。
「そっか、じゃあルークにはあんまり会えなくなるんだね」
「……まぁ、長期休暇中なんかは戻ってくると思うぜ」
「そうだね、そのときはまた村に来てね!」
「そうね、いっぱい遊びましょうか」
「……お土産、期待……」
「ぼ、僕も、そのときは、戻るよ」
笑って次、会うときのことを話す5人の少年少女たち。
私にとって卒業式は書類上の出来事だったが、ミリィ嬢たちにとっては違うのだろう。
これまでの生活と別れて、新しく進んでいく。1つの節目にあるのだと私は思った。
時は流れてミリィ嬢10歳の3月。私達は試験会場に向かっていた。
成長した私は前日に彼女を限界まで勉強と特訓をさせて疲労困憊にし、ミリィ嬢をいつも通りの時間に寝させることに成功。彼女は万全の態勢で試験を迎えている。
一般枠と特別枠の受験者が分けられることなく一つの場所にいるが、誰がどちらを受けようとしているのかは、その身なりから明白であった。
ミリィ嬢は緊張しているようで、魔木と呼ばれる杖を両手で握りしめてぶつぶつとつぶやいている。
「特別枠に人数規定はない。つまり自分との勝負。特別枠に人数規定はない。つまり……」
それは私が昨日言っていたことだが、ほら、周りが変な目で見ているぞ?このままじゃ入学前から独り言を言っているおかしな子認定されてしまうんじゃないか?
これまで私の下で特訓過ごしたんだ、普通にしていれば何の問題もないはずだ。
だからとりあえず今日は筆記試験だし、その杖をこちらに寄越そうか。
という訳で第一章完。GW終了により物語完結です。現段階で評価も0なこの作品でしたが、作者としましては楽しく書くことが出来たので満足感があります。(5/7 19:55)
もしここまで読んでくれた方がいらっしゃったら、本当にうれしいです。ありがとうございました。
また機会がありましたら何かでお会いしましょう!




