第百九十九話 空は胡桃とシャーリィを見守ってみる②
(破壊力、速度、それに防御力……改めて思うけど、胡桃って本当に優秀なんだな)
と、空がそんな事を考えていたその時。
胡桃の背後で倒れていたゴブリンが、突如起き上がる。
(っ! 死体のふりをしていたのか!?)
けれど問題はない。
空ならばこの距離からでも、余裕で――。
「クルミ! 危ない!」
空の思考を断ち切る様に聞こえてくるシャーリィの声。
それと同時、気がつけば。
「ぐ、グゲ……」
と、ゴブリンは壁に深くめり込んでいた。
そう、シャーリィがゴブリンの横っ腹に蹴りを放ったのである。
「クルミ、大丈夫か!? 怪我はないか!?」
などなど、心配そうに胡桃へかけよるシャーリィ。
彼女はその間も、付近の魔物にパンチ、キック……。
その全てを一撃で壁にめり込ませていく。
そして最後の一体――シャーリィの斜め後ろから近寄ったトレント。
彼女はそれを狐尻尾のスイングのみで軽く粉砕。
「クルミ! シャーリィは心配だ! クルミが傷つくと、クーの心が傷つくから心配なんだ! もちろん、シャーリィもクルミが怪我するの嫌だ!」
と、胡桃の身体をぺたぺたするシャーリィ。
きっと、シャーリィは胡桃に怪我がないかを見ているに違いない。
一方の胡桃はというと――。
「…………」
見ての通り、呆然としてる。
けれど、空もその気持ちはわかる。
(やっぱり獣人というか、シャーリィ強いよね……しかも予想以上に)
驚かせる要因をさらに言うならば、技の派手さも影響しているに違いない。
胡桃の攻撃はシャーリィに負けず劣らず強力だ。
しかし、異能の特性故どうしても目視できない部分がある。
それに対してシャーリィは素手だ……それと尻尾だ。
技の威力は同じでも、見ていて派手なのだ。
と、空がそんな事を考えていると。
「勇者様……お仲間の皆様も、とてもお強いのですね。それに比べてわたしは……」
言ってくるリーシャ。
空はそんな彼女へと言うのだった。
「僕が強力な魔法を使えたのも、胡桃とシャーリィがああして戦えるのも、みんなリーシャがいるからだよ」