第百九十八話 空は胡桃とシャーリィを見守ってみる
「あたしの強さを空に改めて見せるチャンスってわけね!」
と、胡桃は入ってきた魔物達に向かい、飛び出していってしまう。
しかも、飛び出していったのは彼女だけではなかった。
「シャーリィもやる! クルミだけずるい! シャーリィも強いとこみせるんだ!」
と、胡桃に続くシャーリィの声。
空はそれを聞いて思う。
(シャーリィは胡桃と違って、今回かなり直接的に戦ってくれたから、もう強いとこ見せてもらったんだけどな)
ゴブリンやコボルトの顔へ的確に蹴りを入れたり。
バランスを崩しそうな体勢から蹴りを入れたり。
戦闘センスは見事と言わざるをえなかった。
などなど。
空がそんな事を考えていると。
「《イージス》!」
聞こえてくる胡桃の声。
見れば、胡桃が魔物の中心で舞っていた。
まるで空と胡桃が初めて戦った時の様に……。
彼女は踊るように、最小限の動作で不可視の盾を魔物達へ、次々撃ちだしていく。
けれど、その結果は空と戦っときとは、大きな差がある。
「あは♪ ほら、あたしってばやっぱり、こんなに強いんだからね!」
そんな胡桃の言葉通り。
攻撃の一発一発の重さが段違いなのだ。
指を弾いただけの銃弾の様な盾。
例えの通り、かつては銃弾の様な破壊規模しかもたらさなかったのだが。
「ゲピ――ッ」
ドンッ。
不可視の盾に射抜かれたゴブリンの声。
そして、ゴブリンを貫通した盾が、背後の壁に小型のクレーターを作った音である。
(破壊力、速度、それに防御力……改めて思うけど、胡桃って本当に優秀なんだな)
と、空がそんな事を考えていたその時。
胡桃の背後で倒れていたゴブリンが、突如起き上がるのだった。