第百九十六話 空と部屋と防衛戦②
部屋に侵入してきた魔物はオーク、ゴブリン、コボルトなどなど。
いちいち認識するのも面倒なほどの量だ。
けれど、部屋に入ってきた魔物の量が軽く三十を超えることは、数えなくてもわかる。
と、その時。
「《イージス》!」
胡桃が異能を使い、扉があった場所に不可視の盾を張ったのだ。
すると当然、魔物の後続は盾のせいで部屋への侵入ができなくなる。
ではどうして、最初からこれをやらなかったのか。
どうして、魔物をあえて部屋の中へ入れたのか。
理由は簡単だ。
「もしも撃ち漏らしたら頼んだよ、シャーリィ!」
言って、空はリーシャの手を握っているのとは、反対の手を魔物の群れへ翳す。
そして。
「魔法 《ファイア》!」
直後、放たれたのはリーシャによってブーストされた巨大な火球。
それは凄まじい速度と熱量、そして爆発規模で部屋に侵入した魔物を瞬時に焼き尽くす。
これこそが、空が事前にみんなに提案した作戦だ。
胡桃の《イージス》を使い、魔物が部屋侵入する量をコントロール。
確実に倒せる量の魔物を部屋に入れ、空とリーシャの最大火力でそれを倒す。
そして、もしも撃ち漏らしが居れば。
「ゴブリンとコボルト、合わせて二体……シャーリィにお任せだ!」
と、シャーリィがブーストされた身体能力で、瞬時に撃破する。
ゴブリンとコボルトは、空の魔法の余波ですでに死にかけ――シャーリィ相手に、なすすべになかったに違いない。
「空! そろそろ《イージス》を解除するわ! 次の準備しなさいよね!」
と、言ってくる胡桃。
空はそんな彼女に返事をした後、リーシャへと言う。
「リーシャもまだ大丈夫そう?」
「はい。わたしは皆様と違って、手を握っているだけですから!」
と、リーシャが言った直後。
再び魔物がなだれ込んで来るのだった。