第百九十四話 空と鍾乳洞の部屋②
「あ、あの……」
と、おずおずと言った様子で、手をあげるリーシャ。
彼女は続けて胡桃へと言う。
「実はこの地下街道、全てが人工物というわけではないんです」
「どういうことよ? 出入り口作ったり、道を掘ったりしたんじゃないの?」
「どちらかというと、出入り口を広げて、道を敷いたというほうが近いです」
「?」
と、ぽかんとした様子の胡桃。
リーシャはそんな彼女へと続ける。
「ずっと昔の人が、利用していた鍾乳洞を地下街道にしたのが、今の状態なんです」
「つまり、この部屋は昔の人が、なんらかの目的で作ったんじゃないかってこと?」
「はい、さすがクルミ様……その通りです」
要するに、この部屋の存在理由はわからないままというわけだ。
けれど、空はなんとなく察しがつく。
(分厚くて巨大な木の扉、頑丈そうな石の壁……多分、日本で言う対怪人シェルターみたいな場所だったんじゃないかな)
ここが地下街道として整備される前。
そこに存在していた何かから、人々が避難するために作られたシェルター。
そらならば、全てに辻褄があう。
なんにせよ、今は――。
「とりあえず、魔物を迎え撃つ準備をしよう。見ての扉は閉めてあるけど、腐ってボロボロ……多分すぐに突破されちゃう」
だから、作戦をたてよう。
空はそう言うのだった。