第百九十三話 空と鍾乳洞の部屋
時はあれから数分後。
現在、空はシャーリィ案内のもと、とある場所へとやってきていた。
それは。
「すごいな、理想的な場所だ」
空が視線を動かし見えてくるのは、体育館ほどの大きな部屋だ。
しかも、外へ通じる道は大きな扉が付いた通路――空達が入ってきたところのみ。
と、空がそんなことを考えていると。
「クー! ここはシャーリィが見つけたんだ!」
言って、何かを期待するかのように、尻尾をふりふりシャーリィ。
空はそんな彼女の頭を撫でながら言う。
「うん、ありがとうシャーリィ。さすがだよ」
「シャーリィは凄いんだ! クーのためなら、これからもなんでもする!」
ぶんぶん。
ぶんぶんぶん。
凄まじい勢いで振られるシャーリィの狐尻尾。
褒めるぐらいで喜んでくれるなら、安い物だ。
空は日頃、シャーリィにものすごくお世話になっているのだから。
「ねぇ、誰も話にあげないけど」
と、聞こえてくる胡桃の声。
彼女はみんなに向け言葉を続ける。
「どうしてこんな場所があるのよ?」
胡桃が言っているのは、空達が居るこの場所に違いない。
言われてみれば、確かにといった感じである。
空は先ほど、この場所を扉付きの体育館と例えた。
けれど、実際はそんなにいいものではない。
(石で造らた部屋だから、人工物なのは確かだけど。かなりボロボロなんだよね)
壁の隅は蜘蛛の巣だらけ。
埃もすごく、長年誰も使っていなかったことがわかる。
(そもそもこの部屋の場所が妙だ。どうして、道から外れた場所――あんなに細い穴の奥にあったんだろう)
「あ、あの……」
と、おずおずと言った様子で、手をあげるリーシャ。
彼女は胡桃、そしてみんなへ向けて言葉を続けてくるのだった。