第百九十二話 空と地下街道の異変②
「大丈夫だ!」
と、言ってくるのはシャーリィである。
彼女は続けて空へと言ってくる。
「クーが見つけたいのは、敵が来そうな場所を、一つに絞れる場所……それでいいか?」
「そういうことだけど、そんな都合のいい場所なんて――」
「それならやっぱり大丈夫だ! だからクー、それとみんなもシャーリィについてきてくれ! シャーリィにお任せだ!」
言って、道を逸れて走って行ってしまうシャーリィ。
それを見た胡桃は。
「え、ちょっと……ど、どうするのよこれ!? あ、こらシャーリィ! 待ちなさいよね! 一人で行くのは危ないんだからね!」
と、迷った末にシャーリィについて行ってしまう。
けれど、空もその行動に反対意見はない。
(僕の異能が強くなったように、勇者の力でシャーリィの感覚もきっと鋭くなってるんだ)
以前から凄まじい感覚を持っていたシャーリィ。
それから考えるに、今のシャーリィを信頼しない理由がない。
「リーシャ、僕達も行こう……リーシャ?」
なにやら様子のおかしいリーシャ。
思えば、先ほどから黙り込んでしまっている。
空がそんな彼女に、再び声をかけようとすると。
「そんな大量の魔物が一度になんて、おかしいです」
と、言ってくるリーシャ。
空はそんな彼女へと言う。
「でも、ここは前からそれなりに危険な場所だったんだよね?」
「はい、ですけどそれは程度が知れています。でなければ、街道として使用が出来ませんから……わたしが言っていたのは、歩いていると『偶然魔物の群れに出くわす』程度の話だったんです」
「じゃあ、向こうから群れをなして襲ってくることは?」
「わたしの記憶が確かなら、そんなことはありえません。少なくとも、こんな規模のものはないはずなんです」
「…………」
つまり、今の地下街道は何か様子がおかしい。
そういうことに違いない。
けれど。
「リーシャ、とにかく今は行こう! 何が起きてるにせよ、ここにいたら危険だ!」
「は、はい!」
と、空はそんなリーシャの手を掴み、シャーリィと胡桃の後を追うのだった。