第百九十一話 空と地下街道の異変
「クー、大変だ!」
と、聞こえてくるシャーリィの声。
空がそちらを見る前に、シャーリィは続けて言ってくる。
「魔物の臭いがする! すごい量だ! みんなこっちに向かって来てるぞ!」
「すごい量の魔物って……なんでいきなり!?」
「わからない! でも、間違いなくみんなこっちを目指してる! あらゆる方向から寄って来てるぞ! まるで何かに命令されてるみたいだ!」
と、慌てた様子のシャーリィ。
シャーリィは鼻の良さと、気配を読むのなら間違いなくトップレベルだ。
そんな彼女が言うのならば、確実に脅威が迫ってきているに違いない。
「空、どうするのよ! ここで迎え撃つの!?」
と、言ってくるのは胡桃である。
けれど、その意見は危険と言わざるを得ない。
「いや、ここは開けすぎてる。出口に続く道は一見すると一本だけど……」
ここは長い間存在している街道だからに違いない。
なかば巨大な鍾乳洞と化しているのだ。
出口へは地面に道があるため、迷わないようにはなっている。
けれど、少し左右を見ればどこまで続く暗闇がある――さらに、見える範囲には無数の小さな穴が存在しているのだ。
空はそんな事を胡桃へと説明する。
すると彼女は空へと言ってくる。
「つまり、ここで戦うとあらゆる方向から、一度に敵と戦わないといけない可能性があるってこと?」
「そういうこと。シャーリィが敵は『あらゆる方向から近づいてきている』って言ってたよね?」
ということは、敵は道以外からも来ていることになる。
ならば、敵は穴を通っているということ以外に考えられない。
つまり。
「敵が通ってきそうな穴が、見える範囲以外にもあることを考えると……」
「なるほどね。あんたがいいたいことはわかったわ! でも、だからってどうするのよ! 見た限り、立て籠もれそうなところなんて――」
「大丈夫だ!」
と、空の言葉に対し言ってくる胡桃。
そんな彼女の言葉を断ち切って来たのは、耳をぴこぴこさせるシャーリィであった。