第百九十話 空とシャーリィの深い関係
シャーリィとの関係について。
街道はかなり長いようだし、それについて説明するのも悪くない。
と、空は口を開こうとするのだが。
「シャーリィはクーの奴隷だ! クーにはシャーリィの全てを捧げるんだ!」
と、空より早く言ってくるシャーリィ。
胡桃はそんな彼女に対し、真っ先に言う。
「か、身体を捧げるってどういう事よ!? あ、赤ちゃん作るってこと!?」
「赤ちゃん? 赤ちゃん! シャーリィ、クーの赤ちゃん欲しい!」
「はぁ!?」
「クー! シャーリィに赤ちゃん作ってくれ!」
「ちょ、こら! ダメ! そういうこと言ったらダメなんだからね!」
と、胡桃は必死な様子で、空の方へ来ようとするシャーリィを抑えている。
一方のリーシャはというと。
「あ、あの勇者様」
とてとて。
リーシャは空に近づいて来ると、困り顔で言ってくる。
「シャーリィ様は本当に、勇者様の奴隷なのでしょうか?」
なんとも返事に困る質問である。
知っての通り、空はシャーリィを奴隷として扱ったことはない。
けれど、状況から考えるとシャーリィは奴隷なのだ。
判断材料はいくつかあるが、もっとも確かなのは――。
空の異能である《道具箱》を通れた胡桃が、奴隷身分になっていたこと。
これからから考えるに、《道具箱》を通れるシャーリィも奴隷に違いない。
ということだ。
(うーん、でもリーシャのことだから、ストレートに言うと絶対にショックを受けるよね)
けれど、遠回しに言っても結局同じことだし、嘘を吐くのも何か嫌だ。
故に、空は意を決してリーシャへと言う。
「シャーリィは僕の奴隷だよ」
「そ、そんな……勇者様が奴隷なんて……」
と、リーシャは器用にも歩きながらお祈りし始める。
空はそんな彼女へと言う。
「でも、僕が望んでシャーリィを奴隷にしたわけじゃないんだ」
「それは、どういう事ですか?」
「シャーリィは奴隷商人に誘拐されそうになっていたんだ」
「誘拐!? 奴隷商人は決められた手順でしか、奴隷を売買してはいけないんです! 誘拐は完全に犯罪です!」
と、お怒りモードのリーシャ。
空はそんな彼女へダメ押しとばかりに続ける。
「その時は犯罪がどうのってわからなかったけど、僕はとにかく助けなきゃって思ってさ……」
「奴隷商人からシャーリィ様を救ったら、とても懐かれてしまった。それで、シャーリィ様は勇者様の奴隷になりたいと……自ら言ったのですね?」
「うん、そんな感じ」
「やはり勇者様は高潔なお方です。一時でも疑ったわたしをお許しください」
と、リーシャがお祈りを始めたその時。
「クー、大変だ!」
そんなシャーリィの声が聞こえて来たのだった。