第百八十七話 空と仲間の力③
「え、えい!」
と、リーシャは必死に木叩いている。
けれど、その木は折れるどころか揺れてもいない。
「うぅ……全然折れません。わたしが勇者様と親密ではないからでしょうか?」
と、しょぼんとした様子のリーシャ。
たしかに、リーシャとはまだあったばかりなので、その可能性は高い。
(でも、リーシャは話しやすいし、もう僕の中では他のみんなと変わらないくらい打ち解けられてるって……そう思ってるんだけどな)
なので、リーシャの力が上昇しないのは、別の理由な気がするのだ。
例えば、聖女は勇者達に力与える側なので、自らの力の上昇はしない。
(うん、そう考えた方がしっくりくるよね)
と、空がそんな事を考えたその時。
ドゴンッという再びの音と共に――。
「ちょっとは手加減しなさいよね! このバカ!」
と、そんな胡桃の声が聞こえてくる。
空がそちらを見てみると、なんと胡桃が地面に倒れていた。
そして、そんな胡桃の傍から彼女に声をかけるのは。
「クルミ、弱い! ダメダメだ! シャーリィはまだ全然本気だしてないぞ!」
シャーリィである。
胡桃は立ち上がりながら、そんな彼女へと言う。
「今のは異能を使わなかったからなんだからね! 純粋に与えられた力を試したかったから……だから、あたしの本気はこんなものじゃ――」
「シャーリィ知ってる! 負け惜しみだ! クルミが負け惜しみ言った!」
「なっ!? あたしは事実を言っているだけで……そ、それにあんたは獣人族かなんかなんだから、あたしよりベースの運動神経が――」
「クー! クルミが負け惜しみ言ってる! 自分から『シャーリィと戦ってみたい』って言って、負けて恥ずかしかったから負け惜しみ言ってるんだ!」
と、シャーリィはこちらに走りよってくる。
一方。
「ちょっ! 待ちなさい、このバカ!」
胡桃は胡桃で、シャーリィを追って空の方へとやってくる。
空はそんな彼女達を見て思うのだった。
(楽観視は危険だけど、みんなで力を合わせればきっとエクセリオンまで行けるよね)