第百八十二話 空と集まる勇者の仲間
結論から言うと、時雨にショッピングモールの件はばれなかった。
しかし、現在進行形でバレそうになっているうえ、話は続きそうだった。
ので。
『話はまだ終わってませんよ! こら、兄さん!』
空はそんな時雨の声を無視し、全力で逃走した。
文字通り全力だ。
レベル4の力と魔眼をフル活用。
さらに《道具箱》を使って、胡桃の部屋へ移動。
『え、な、なに!? どうして空が居るのよ!?』
空はそんな胡桃の声も無視。
彼は胡桃の手を掴み、今度はファルネール――リーシャとシャーリィが待っている宿屋へのゲートを開き……現在に至るわけである。
さて。
「ちょっ――急に部屋に来たと思ったら何よ!?」
と、当然のことを言ってくる胡桃。
空は彼女が準備したに違いないリュックを、《道具箱》に放り込んだ後、彼女へ言う。
「いいから早く! 早くファルネールに逃げないとまずいんだ!」
「あ、ちょ……手! あたしの手、空に握られて……ぎゅって……」
と、なにやらくねくねしている胡桃。
空はそんな彼女に「行くよ!」と一言、二人でゲートを通り抜ける。
するとそこにあったのは。
「ゆ、勇者様!? こ、これはその――」
「クー! おかえりなさい、だ!」
ベッドの上で絡み合うリーシャとシャーリィの姿だった。