第百七十九話 リーシャとシャーリィ
時は空を見送ってから少し後。
場所は宿屋の部屋――そのベッドの上。
「じ~~~~~」
と、リーシャの方を無言でひたすら見てくるのは、シャーリィである。
彼女はリーシャと同じく、ベッドに座っているのだが。
「じ~~~~~」
先ほどから会話するでもなく、ひたすらに見つめてくる。
正直猛烈に気まずい。
(ど、どうしてこの方は、わたしをずっと見つめているのでしょうか……?)
そもそも、シャーリィの正体が謎だ。
彼女本人は空の奴隷と言っていたが、なにかの間違いに違いない。
(となると、恋人さんとかでしょうか……まさか、わたしが傍にいるから怒っている?)
なんにせよ、コミュニケーションを取らなければ。
と、リーシャは意を決してシャーリィへ話しかける。
「あ、あの……どうして、先ほどからわたしをじっと、見つめているのですか?」
「? シャーリィは護衛だ! 護衛は護衛対象から目を離さないんだ!」
パタパタ。
ピコピコ。
と、シャーリィは尻尾と耳をゆさゆささせている。
シャーリィの言動と、尻尾と耳の動きに偽りがないのなら、怒っているわけではない。
そう判断しても問題ないに違いない。
(よ、よかったです……勇者様の仲間の方に嫌われてしまったら、どうしようかと)
けれど、リーシャにとって問題はまだある。
それは。
「じ~~~~~~~~」
と、見つめてくるシャーリィだ。
悪気はないに違いないが、気まずいものは気まずい。
(勇者様が戻るまでに仲良くなりたいですし、何かお話でも)
と、リーシャは必死に盛り上がりそうな話題を探すのだった。