第百七十七話 空と勇者の仲間達③
「なるほどね……勇者と親密なものは、戦う際に勇者の力を分け与えられる。それで、異世界に行けるのはあたしだけだから、一緒に戦ってほしいってお願いしにきたと?」
と、言ってくるのは胡桃である。
彼女は「はぁ」と深くため息を吐いたのち、空へと続けてくる。
「あんたバカでしょ?」
「え?」
「あたしはヒーロー目指してるのよ? そんな話を聞かされたら、頼まれなくても行くんだからね!」
「え、でも――」
「それにその話が本当なら、あたしはすごい力が手に入れられるんでしょ?」
と、ニヤニヤしている胡桃。
ものすごく邪悪な笑みである。
だが。
(そう言ってくれると、すごい頼もしいな。さすがは胡桃……なんだかんだ、優しいな)
さて、残りは時雨なのだが。
と、空は時雨の方へ視線をやると。
「兄さんが……告白……梓さんが、姉さんに?」
時雨はなにやらうつむいてぶつぶつ言っている、
けれど、空が「時雨!」と声をかけると。
「はっ! 自分を見失っていました……どうしたんですか、兄さん?」
と、言ってくる時雨。
空はそんな彼女へと言う。
「とにかく、異世界で人助けをするから、しばらく帰ってこれないかもなんだけど……」
「あぁ、大丈夫ですよ……そのことなら。しっかりと各種報告はしておきます」
「…………」
「なんですか、その顔は」
と、ムスっとした様子の時雨。
空はそんな彼女へ言う。
「いや、絶対怒って来ると思った。この前も僕が次にバケツを被ったら~とか言ってたし」
「あれは非合法ヒーロー活動だからです……犯罪行為だからですよ! 別に兄さんが人助けするのを、止める気はありません……危ない目に合うのは嫌ですが」
「へ、へぇ~……そ、そうだね! 非合法ヒーローはやっぱりいけないよね!」
この時、空は思ったのだった。
(この前のショッピングモールの件、あれが時雨にばれたら確実に怒られる)