第百七十六話 空と勇者の仲間達②
時はゲートをくぐって、日本に戻ってから数分後。
場所は空兼胡桃の部屋。
「こんっの――バカぁああああああああああああああっ!」
と、響き渡る胡桃の声。
彼女は猛烈なガクガクラッシュをしながら、空へと言ってくる。
「あんた何考えてんのよ! いきなり消えて、連絡なしで……心配させまくったあげく、いきなり帰ってきて! なんなのよ! もう、もう……この……ほんとに――!」
「うぐ、ぐぇ――」
「カエルの真似してる場合があるなら、ちゃんと理由を説明しなさいよね!」
「梓さん……とりあえず落ち着いてください。それ以上絞めると、兄さんが死にます」
と、聞こえてくるのは時雨の声である。
彼女はその後、何度も胡桃に声をかけ続け、空を死の淵から救い上げてくれたのだった。
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「さて、落ち着きましたか……梓さん?」
「ふんっ! あたしは最初から落ち着いてるんだからね!」
と、そんな時雨と胡桃のやり取り。
二人は現在、空のベッドに腰掛け、床に座る空を見下ろしている。
要するに『説教執行』といった構図だ。
だがしかし、今日の空は黙って説教を受けている余裕はない。
故に、空は二人が言葉を発する前に言う。
「突然いなくなったのは謝る。だけど、聞いて欲しいんだ! 今、異世界で大変なことが起きていて――」
と、空は一連の出来事を二人へ言って聞かせる。
すると。
「へ、へぇ~……そう。あたしが告白しようとした時に、いきなり消えたと思ったら……そ、そう……ふーん、女の子とイチャコラしたあげく、朝帰りってわけ?」
言ってくる胡桃。
なんだかニュアンスが酷く違っているが、間違っていないのが辛い。
一方の時雨はというと――。
「こ、告白……それに、朝帰り……だと」
と、時雨は何故かガクガク震えながら、キャラ崩壊してしまっている。
空がそんな時雨に声をかけようとすると。
「まぁいいわ、なんだか大変みたいだし。今回だけは許してあげるんだからね!」
と、言ってくる胡桃。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「それでどうして、あんたはこっちに戻ってきたのよ? あんたのことだから、聖女を護衛するまで、帰ってこなそうなもんだけど」
「うん、本題はそれなんだけど。一つは時雨に、しばらく帰れないことを伝えにきたのと――」
と、空は胡桃に『勇者の力の件』と『勇者の仲間の件』を順に話していくのだった。