第百七十四話 空とリーシャと朝ちゅん
ぴぴぴ。
ぴぴぴぴぴ。
と、空はそんなスマートフォンの目覚ましで目を覚ます。
「……はぁ、なんだか寝た気がしない」
空が隣を見ると、眠っているのはリーシャである。
こうなった理由は簡単である。
昨夜、件の作戦が失敗した後。
リーシャはやはり、床で寝ると言ってきかなかった。
そこで空はこう言ったのだ。
『実は僕……誰かと一緒に寝ないと眠れないんだ』
苦肉の策だった。
けれど、結果として。
「すぴ~」
と、なんとも言えない寝息を立てるリーシャ。
とりあえずは彼女をベッドで寝かせるのに、成功したというわけである。
(本当はもう少し寝かせてあげたいけど、そろそろ起こさないとな)
リーシャの話によると、エクセリオンへは早めに帰った方がいいに違ない。
それに、エクセリオンへ向かう前に、空にはいくつか試しておきたい事があるのだ。
(勇者の仲間の話……シャーリィと胡桃ならひょっとして)
空はそんな事を考えかけるが、今はリーシャを起こす方が先だ。
と、空はリーシャの身体を揺すりながら言う。
「リーシャ、起きて。朝だよ、朝」
「すぴ~」
と、未だ眠ったままのリーシャ。
それにしても眠りが深い少女である。
けれど、空がそれにもめげずもう何度か、彼女へ呼びかけ続けると。
「んぅ……勇者、様?」
リーシャがようやく目を覚ます。
彼女は何故か周囲を確認した後、顔をみるみる赤くしながら空へと言ってくる。
「あ、あの! ど、どうしてわたしが勇者様のベッドに!?」
「え? 昨日のこと、覚えてないの?」
「き、昨日のこと、ですか!? そ、それってつまり……あ、あぅ」
と、なにやらあわあわし始めるリーシャ。
彼女は枕を抱きしめ、身を隠すように空へと言ってくる。
「わたしはその……勇者様に捧げてしまった、のでしょうか?」
「…………」
空は彼女について追加で理解したのだった。
リーシャは寝起きが悪いと。