第百六十七話 空は聖女について知ってみる
「手、本当に大丈夫?」
「はい、これくらい……彼等に比べればたいしたことじゃありません」
と、言ってくるのはリーシャである。
そんな彼女の手は血豆が出来てしまっている。
そうなった理由は簡単だ。
あれから、空はリーシャの案内で騎士と魔物が戦った場所へと向かった。
そこの状況は控えめに言っても最悪だった。
騎士達の死体は食い荒らされており、原型をとどめていないものもあった。
そんな中、リーシャは気持ち悪がるでも怖がるでもなく。
『ごめんなさい……』
と一言、彼等の身体を可能な限り集め、墓穴を掘り始めたのだ。
空が『代わりにやる』と言ったのも断って。
そして現在。
空とリーシャは協力して、騎士団全員の埋葬を終えていた。
「わたしに予言が下った日から、ずっとわたしを守ってくれていたんです」
と、言ってくるリーシャ。
彼女は俯きながら続けてくる。
「結局、彼等にはわたしが聖女の力を使うところを――勇者様を見出すところを、見せてあげることができませんでした」
こういう場合、なんというのが正解なのか。
空にはそれがわからなかった。
けれど。
「勇者様……優しいのですね」
と、言ってくるリーシャ。
空はそんな彼女の頭を、優しく撫でるのだった。