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第百六十六話 空と聖女は出会ってみる

 時はオーガを倒し、魔物を殲滅してから数分後。

 場所は変わらず薄暗い森の中。


「さすがは勇者様です。闇を払う力……尊敬いたします」


 と、いつの間にやら空の目の前に回り込んだ少女。

 彼女は跪き、目を閉じお祈りしながら、空へと言ってくる。


「わたしの様な者に、そのお力を示していただき、ありがとうございます。そしてこの度は、わたしなどの召喚に応えていただ――」


「ちょ、ちょっと待った! 一ついいかな?」


「はい、勇者様……なんでしょうか? どのような質問も答えさせていただきます!」


「だからちょっと待って!」


 どうやら、空とこの少女の間には認識の齟齬があるに違いない。

 空はその点を示すべく、少女へと言う。


「僕は勇者じゃないよ! ただの学生で、普通の冒険者なんだって!」


「そんなことはありません、勇者様……あなたは尊きお方です」


 と、間髪入れずにお祈りモードに戻ってしまう少女。

 よくわからないが、この場で彼女の意識改革をするのは難しいに違ない。


 空はとりあえずそう判断。

 彼は少女へ、また別のことを聞くべく言う。


「あの、いくつか聞きたいんだけどさ」


「はい!」


 ぱぁっと瞳を輝かせる少女。

 空はそんな彼女へ続けて言う。


「まずキミの名前を聞きたいんだけど……えと、ちなみに僕は日向空」


「勇者ヒナタクウ様! とても素晴らしいお名前です」


「いやいやいや、もうお祈りはしなくていいから! それでキミの名前は?」


「わたしの名前はリーシャと申します! 幼少の頃より、勇者様に仕えるために生きてきました……恥ずかしながら、聖女をやらせていただいております」


 聖女リーシャ。

 どこかで聞いた事がある名前だが、まったく思い出せない。


(とまぁそれは置いておいて、あと一つ聞きたいことがあるんだよね)


 と、空が考えていると。


「この世界のことを知りたいのですか?」


 と、リーシャは空の表情を読み取ったに違いない。

 彼女は空へと言葉を続けてくる。


「この世界は『ファルネール』と言います。異界から来た勇者様は、やはりご存知ではないですか?」


「いや……知ってるよ」


「さすが勇者様、尊いお方です!」


 と、リーシャは再びお祈りモードに入ってしまう。

 空はそんな彼女にため息一つ考えるのだった。


(最初は焦ったけど、要するにこういう事かな?)


 空が日本に居るタイミングで、異世界側から召喚された。

 ラノベでよくある異世界召喚物と同じ出来事が起きたに違ない。


(なるほど、異世界にいける異能があるんだから、異世界から人を召喚する魔法があっても、おかしくはない……のか?)


 なんにせよ、ここがファルネールである以上は《道具箱》が使えるということだ。

 それはつまり、ラノベによくある帰れない展開にはならないに違いない。


(にしても、さっきの聖天魔法を使ったら、どっと疲れたな。頭痛も結構するし……)


 あれだけ強力な魔法だ。

 ノーリスクというわけには行かないようだ。

 さてさて、それはともかく。


「えーっと、リーシャ、さん?」


「リーシャとお呼びください、勇者様。あなた様に敬語を使わせるわけにはいきません」


 と、お祈りしながら言ってくるリーシャ。

 空はそんな彼女へ言うのだった。


「ここに居るのもなんだし、とりあえず落ち着ける場所に行きたいんだけど。困ってるなら見過ごせないし、そこで詳しい事情もそこで聞かせて欲しいし」


「はい、ですが待って下さい……」


 と、リーシャは辛そうな様子で立ち上がる。

 そんな彼女は、空へ続けて言ってくるのだった。


「騎士様たちを埋葬させてください。わたしを守ってくれた、大切な人達なんです」


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