第百三十八話 空と胡桃は日本に帰ってみる
時はあれから数時間後。
場所は人気のない森の中――具体的に言うと、シャーリィの家の近く。
「それじゃあ、あたしたちはそろそろ帰るんだからね!」
と、聞こえてくるのは胡桃の声である。
彼女はシャーリィへと言う。
「あとシャーリィ、あんたも今日は付き合ってくれて感謝してるんだからね!」
「いい! シャーリィはクルミと居れて楽しかったから、お礼を言う必要なんかない! それにシャーリィは奴隷の先輩だ! 先輩は後輩に優しんだ!」
「はいはい、あんたは優しい先輩ね」
「あ、あぅ……あ、頭撫でるな! シャーリィかっこいい事言ってるのに!」
と、シャーリィは胡桃の手を払いのけようと、頑張っている様子。
けれど、彼女の狐尻尾がぶんぶん激しく振られているのは、もはやご愛敬だ。
空はそんな事を考えたのち、シャーリィへと言う。
「僕達はもう帰るけど、シャーリィも早く帰ってね」
「了解だ! もう少し歩いたらシャーリィの家だから、すぐ帰る!」
と、言ってくるシャーリィ。
空と胡桃はそんな彼女に、最後にもう一度お礼を言った後、ゲートを通ろうとする。
そして、その間際。
「そういえばさ、空」
と、なんでもない様子で言ってくる胡桃。
彼女は空にだけ聞こえるような声で、簡潔に言ってくるのだった。
「今度の土曜日、あたしと一緒に買い物いきなさいよね! そこで伝えるから……鈍感なあんたにもわかるように」