第百三十一話 空と胡桃の秘策②
「はぁ……とんだ期待外れね、もういいわ」
と、聞こえてくるのは胡桃の声。
彼女は見えない盾に、体当たりを繰り返しているスライムへと言う。
「さっさと消えて、あたしの経験値になりなさいよね! 《イージス》!」
直後、スライムの身体中に無数の穴が空く。
胡桃が銃弾の様に《イージス》を飛ばしたのである。
結果、スライムはドロっと崩れただの液体へと変化する。
胡桃はそんなスライムをつまらなそうに見た後、空へと言ってくる。
「ねぇ空! この平原ってスライムしかいないの? こいつ、すっごい弱くて少ししか実戦経験積んでる気がしないんだからね!」
「いや、スライムもそれなりに強いんだよ。僕なんか、初めて戦った時――」
「あたしは天才だから、元凡人と比べても意味ないんだからね!」
「も、元凡人……」
まぁ確かに空は元凡人だった。
むしろ、元凡人以下だった。
(でも元ってことは、胡桃はちゃんと僕のこと認めてくれてるのかな。今は強くなったって……だとしたら、ちょっと嬉しいな)
それにしても。
と、空は続けて考える。
(胡桃は強いとは思ってたけど、レベル無しでスライムを圧倒か)
この防御能力と攻撃能力さえあれば、スケルトンくらいならば倒せるに違いない。
けれど、さすがに胡桃を連れてダンジョンに行く気はしない。
故に空は胡桃に提案するのだった。
「じゃあ、今度は少し強いと言うか、トリッキーな魔物と戦ってみようか」