第百二十一話 空は胡桃に武器を買ってみた
時は武器屋を出てから数分後。
場所は商店街。
「空! これみなさいよ! 盾よ、盾!」
と、胡桃は両手に持った盾を空へ見せながら騒いでいる。
そんな彼女は空へと続けてくる。
「ねぇねぇ、空も触ってみたい?」
「ちょっ、そんな押し付けたら歩きにくいよ……」
「ふんっ! なによ! 空って毎回ノリが悪いわよね!」
と、ぷんすかといった様子の胡桃。
けれど、すぐに胡桃は盾で顔を隠しながら言ってくる。
「で、でも……盾を買ってくれた事は嬉しかったわ。ありがとう……か、感謝してあげてもいいわ!」
「どういたしまして。盾くらいで喜んでくれるなら、僕としても――」
「クルミ! セスタスは嬉しくないのか!? シャーリィがせっかく選んだのに!」
と、言ってくるのは狐尻尾をふりふり、狐耳をぴこぴこシャーリィである。
胡桃はそんな彼女へと言う。
「嬉しくないわけないでしょ? 友達がせっかく選んでくれたんだから……そ、そりゃあ少しはあれな点もあるけど、大事に使わせてもらうんだからね!」
「そういってもらえると嬉しい! シャーリィは嬉しいから、クルミにこれをプレゼントだ!」
と、シャーリィはいつの間にやら買ったのか――革で出来た半球体の何かを取り出す。
そして、彼女はそれを胡桃へ渡しながら言葉を続ける。
「セスタスの鞘みたいな奴だ!」
「え、これ……あたしに?」
「そうだ! セスタスはそのまま腰に括り付けるのが普通だけど、時々ちくちく痛い時があるんだ! これがあれば安心なんだ! シャーリィのおすすめだ!」
ぶんぶん。
ぶんぶんぶん。
ぶんぶんぶんぶん。
シャーリィは凄まじい速度で狐尻尾を振っている。
きっと彼女は胡桃が喜んでくれるか、そうとう期待しているに違いない。
また胡桃もそのことを理解したに違いない。
「ありがとう」
と、胡桃はシャーリィの頭をなでなでしながら、彼女へ言う。
「すっごく嬉しいわ! ずっと大切にするんだからね!」
「そう言ってくれると、シャーリィも嬉しい!」
と、ぴょこぴょこ跳ねるシャーリィ。
空は話が一段落したのを見計らって、胡桃へと言うのだった。
「そろそろ朝ごはん食べに行こうか。あと、セスタスはともかくその盾貸して。僕が《道具箱》にしまっておくから」