第百八話 空は怪人と戦ってみる④
「っ!」
空は襲ってくる痛みを覚悟し、一瞬身構える。
しかし、その時はいつまでたってもやってこなかった。
その理由は。
「これは……見えない、盾?」
そう、胡桃の《イージス》だ。
彼女が咄嗟に空の目の前へ、不可視の盾を張ってくれたに違いない。
(なんだかんだ胡桃、ちゃんと戦えてるみたいだな……よかった)
そして、空は改めて思う。
胡桃も頑張ってくれているのだから、こんなところで苦戦するわけにはいかないと。
「胡桃! 盾の解除を!」
言って、空はすぐさま怪人の胴へと蹴りを入れ、真横へ吹き飛ばす。
すぐさま追撃を――。
「兄さん……あれは、だめです」
かけようとしたところで、聞こえてくる時雨の声。
意識を取り戻したに違いない。
彼女はやや辛そうな様子で、起き上がりながら空へと言ってくる。
「寄生されている間にわかりました……あれは、弱点があるタイプ、です」
「時雨、無理はしないで――」
「いいから聞いて、ください」
と、言ってくる時雨。
彼女は有無を言わせない様子で空へと続けてくる。
「身体の中をコアがランダムで動き回っているんです。範囲攻撃をすると、そいつは地面に潜ってかわす……だから、あの怪人に特化したヒーローを呼ばないと……誰も勝てません……あれでは私で――」
「わかった、それなら簡単だ」
空は一言、すぐさま魔眼《王の左目》を発動。
次いで、魔法 《ブラックスミス》を使い、左手に両手剣を作成。
再び近づいてこようとしていた怪人に近づき。
斬りまくった。
斬って斬って斬って。
ひたすらに斬りまくる。
頭の先から足の先まであらゆるところを。
もう同じところを斬っていようが斬っていまいが、斬りまくった。
両手剣と片手剣が粉々になるまで、怪人を刻み続けた。
「も勝てません……この戦力じゃ逃げない、と?」
と、聞こえてくる時雨の言葉の続き。
そして、久しぶりに襲ってくる魔眼の反動。
空はそんな中、ただの靄となって消えていく怪人の死体を見ながら言うのだった。
「コアが高速で動くなら、それより早い速度で体中斬りまくればいい。そうすれば、いつかはコアにあたるよね」