第百七話 空は怪人と戦ってみる③
「さて」
さきほど、空が怪人にした振り回し攻撃。
あれはレベル3の力を全力で発揮したものだ。
(自分で言うのもあれだけど、筋力強化の最高峰――筋肉ヒーロー『マッスル』の攻撃より威力がでてたのは間違いない)
となると、あの怪人は見た目通り物理ダメージが通りづらいのか。
もしくは。
(体のどこかに弱点があって、それを狙わないと無敵なパターンか。教本通りなら、物理無効のケースが多いってことだけど)
時雨が放った光の柱を受け、生き残っていたのが不可解だ。
あれは確実に物理ダメージではないのだから。
(なんにせよ、魔法 《ファイア》で様子を見る)
と、空は左手にレベル3で上昇した魔力を溜め始める。
ちょうどその時。
「gyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!」
と、怪人が無数の鎌触手を伸ばし、空へと攻撃を仕掛けて来たのだ。
けれどこの程度。
「スケルトンエリートの方がよっぽど早い……!」
空はその全てを右手に持つ剣のみで弾き返していく。
そして、空は怪人の隙を見て左手の魔力を解き放つ。
レベル3になり、初めてのフルコンディションでの《ファイア》。
さらに魔力を意識して溜めに溜めたそれ。
「gyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!?」
聞こえてくるのは怪人の悲鳴。
それも仕方ないに違いない――怪人は現在、炎の波に飲まれているのだから。
…………。
………………。
……………………。
しばらくして炎が収まると、そこにはもう怪人の姿はなかった。
それでも空は決して油断せず、怪人が居た地面を見ていると。
「空!」
聞こえてくる胡桃の声。
様子から尋常でないのがわかる。
空がすぐさまそちらへ振り向くと。
空の目の前には無数の鎌があった。
当然、怪人の攻撃だ。
「っ!」
胡桃はこれを教えてくれたに違いない。
けれど、この距離はもう――。
空に無数の鎌が同時に襲いかかるのだった。