第百六話 空は怪人と戦ってみる②
「ああぁあああああああああああああああああああああああああああっ!」
と、空は怪人を渾身の力を込め、地面へと叩き付ける。
すかさず、空は怪人が抜けたせいで、倒れかかっている時雨へと近づき。
「時雨、大丈夫!?」
彼女を抱きとめる。
するとやはりと言うべき。
(意識はないか……このまま時雨を抱えて戦うわけにもいかないし)
空はそう考え、一旦胡桃のもとまで下がる。
そして、彼は胡桃の横に時雨を寝かせながら、彼女へと言う。
「僕はこのまま怪人と戦うから、いざって時は胡桃が時雨を守ってほしい」
「む、むり……だって、あたし……こ、こわくて。怪人を見ているだけで、からだ――」
「胡桃」
「っ」
と、身体をぴくんとさせる胡桃。
きっと空が胡桃を怒ると思ったに違いない。
もちろんだが、空にそんなつもりはない。
空は胡桃の頭の上に手を置きながら、なるべく優しく彼女へと言う。
「大丈夫だよ。絶対に僕が守るから、きっと万が一なんてことは起きない。それに……胡桃が本当は強いの知ってるから、怖がる必要なんてないよ……僕が保証する」
「なん、で……あたし、あんたに酷い事言ったのに、それなのになんで」
「わからない。でもなんでか、胡桃ならまぁいいかって思えるんだ」
「なに、それ……」
と、言ってくる胡桃。
空はそんな彼女の瞳から流れる涙をぬぐった後、彼女へと言うのだった。
「とにかく、胡桃。もしそれでも怖かったら、自分と時雨の周囲に《イージス》を張って目を瞑っていて。次に胡桃が眼を開いた時、怪人はいなくなってるから」
「あんた……ちょっとかっこつけすぎなんだから……」
「あはは、やっぱそうですかね。でも、ヒーローはかっこつけて、助ける人を安心させる仕事でもありますよね?」
「そーね、そうかも……少なくともあんた、ちゃんとヒーローしてるわよ。あたしにとっては……本当に、最高のヒーロー」
と、空はそんな胡桃に笑顔が戻った所で、改めて怪人の方へ向く。
すると、怪人はちょうど瓦礫から起き上がって来るところだった。