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第3話:召還

9月18日:月曜日:4時半起床、サムはビスコッティとコーヒーを持って副業部屋へ、まずは観葉植物たちに水を与える。副業部屋は日当たりが良いので、植物を育てるのに最適だ、サムは外出時に目に付いた植物をこまごまとかっていたところ、副業部屋は植物部屋になりつつある。今は種から育てたアボカドが大きく伸び日の光を浴びて、その葉を生き生きと伸ばしている。サムはガリガリ触感のビスコッティを口に運ぶ、その生地にはコーヒーが練りこまれているので、かじると、ほろ苦さがありそのあとの甘みを引き立てる。当然飲むコーヒーとの相性も良い。そうしてサムは幾つかのファイルを本棚から取り出してテーブルの上に広げる。色々と進行中の計画があり、それぞれ細々と進めているが大きな進展はない。といった状況が長く続いている。どれか一つでも芽が出れば、サイドラインでの活動域を広げることが出来るのだが、と考えている。サムはコーヒーを一口飲むと、 「まぁ、焦る必要はない。時間はいくらでもあるんだ。」 と独り言をいうとサイドラインへと向かう。



場所は無為の家の向かいの酒場。そこにはいつもと違った不穏な空気が流れている。客の狩人もなんだかそわそわしているのだ、サムは不思議に思って 「_ カゲトキ、何かありましたか?」 と聞けば 「_いや、無いんだ。」 と帰ってくる。 「_ではどうしてこんな空気に?」 「_だから、無いんだよ。リクス嬢がまだ来ないんだ。いつもなら、サクラの所に来る時間だってのに、まさか!本当に帰っちまったんじゃ!!」 とカゲトキは興奮して声が大きくなり、狩人の皆様の耳に届いてしまう。 「_なんだと、おまえ、そんなわけがあるか!!我らのリクス嬢がサクラ嬢のことをあきらめるだなんて、そんながあるものか!!」 「_しかし、もしそうなら、我らのサクラ嬢はこの村に留まってくださる!!」 「_なんだと、お前らお前らはどちらの味方なんだ!!」 「_我らはサクラ派。サクラ嬢の望みがかなうことが、最良の目的!」 「_お前ら、この多数派のリクス派に歯向かおうってのか!!」 なんだか知らない間に、狩人内でそんな派閥が生まれていたことに驚くサムだが、カゲトキに詳しく聞いてみると、狩人の大体7割がリクス派で2割がサクラ派、残りは両方らしい、そしてカゲトキはリクス派とのことだった。 そして



「_おい、サム、ちょっと調べて来ては貰えないか?このままじゃみんな心配で狩りにも行けねぇってよ。」 とか言い出す始末。 「_なんで、僕が、、、どなたかが様子を見てくれば良いでしょう?」 「_いや、俺らは、全派閥のみんなは紳士協定を結んでいるから駄目なんだ!」 「_紳士協定?」 「_そう、俺らはこの問題に関して口を挟まないってことと、一人で両お嬢と楽しく会話などしないってことだ。だから、サム頼む。お願いだから村まで行って確認してきてくれ。」 「「「「_よろしく頼む!!」」」」とサムはお店にいる全員からお願い事をされてしまう。はてさてどうしたものかと考えていると。サムの酒場に普段は現れない者が現れる。 



「_サム様、なにやらお取込み中に失礼いたします。村主様のお言伝で、『今すぐ屋敷まで来てくれ』だそうです。」 「_ツバサさん、、何用でしょうか?」 「_このような人の多いところでは、言うわけにもいきません。。。」 「_、、、ふぅ、分かりました。村主様の所に伺いましょう、丁度こちらからも行くしかない所でしたので。。。タマ、フク付いて来てくれ。サクラは一先ず、家で待機しているように。」



屋敷へ向かう道中 「_あの、こちらから呼び出しておいてなんですが、、酒場で何かお願いされていたようでしが、そちらは大丈夫なのですか?」 「_ええ、そっちは大丈夫です。むさい奴たちのつまらない希望などに付き合っては居られませんから、、、まぁ愛すべき奴らでもありますが。」 「_?、そうなので??」 「_そうなのです。だからお気になさらず。それより、お屋敷の方で何かありましたか?」 「_はい、今朝がたの話でございますが・・・」 とツバサがその時のことを話してくれる。



ことは早朝に起こった。屋敷ではリクスがサクラのもとに行こうと準備していた頃である。その時に一匹の牛が村に入り、屋敷の方へと歩いて近寄ってきていた。その牛は筋骨隆々としており、毛は黄金色、角は大人の鍛え上げた腕の様に太く長く、それはそれは立派な牡牛であった。またその牛は他の牛と異なり強力な神通力も併せ持っていた。それはむらかみの結界を振動させるには十分な力を持っており、神通力を持っているものが結界内にいたならば、大地震のごとく、その場に立っていられないほどの衝撃を受けたことだろう。事実、村主の一家はあまりの衝撃に、起きていたものは悲鳴を上げ転げながら家から飛び出し、寝ていたものは布団から飛び起きてだが、立ち上がることが出来ずに祝詞を唱え始めるといった具合であった、だがその衝撃でもさすがはむらかみ、その震源に向かったらしい。すると先ほどの牡牛が堂々とそれでいて闘志を燃やして、その身体からは朦々と湯気が立ち上がっており。



一言 「_リクスはどこか!」 と村中に響く大音声で述べたそうな、それから、むらかみは結界を弱め、牡牛を屋敷の奥座敷に招き、それからすぐにリクスは奥座敷に呼ばれ、ツバサはすぐにサムを呼んでくるように申し付かったそうだった。 「_・・・と言うことで、わたくしも詳細は知らないのでございます。ただ、リクス様には関係があることのようです。それにサム様を呼んだということは、、」 「_サクラとも関係がありそうですね。」 「_はい。そのように思います。」そして屋敷に近づくと、 「_サム様、、、ただ者ではない神通力を感じまする。」 「_ご主人様、これは、、怒り?」 と式の二人がそわそわし始める。



サムは神通力を感じる器官を持ち合わせていないので、いつも通りの静かな屋敷だなと思いながら入っていくが、ヌバタマとダイフクは要警戒モードでサムの前を守るように配置していた。そして 「_村主様、サム様をーーー」 とツバサが言いかけると、 「_遅い!!!」 という大音声がとどろき屋敷を振るわせる。それには式の者たちは皆驚きにしりもちをついてしまっていた。サムも思いっきりびっくりして 「うおっびっくりしたーー」 と声が漏れてしまった。サムはなんだか知らないけど厄介そうだと思い、木の面で顔を隠すことにする。これには、相手の術にかからなくするためとこちらの動揺を隠す両方の意図があった。それは雲龍から言われたことで、何でも相手の目を見て術をかけるものも居るとのことで以前より準備していたものであった。そしてそれで顔を隠してサムは恐れを悟られぬようにに襖を開ける。 



「_村主様、何か御用で?ちなみにサムには用事があるので、僕はその使いとしてまいりました!」 とこちらも精いっぱいの大音量で返す。むらかみと村主はサムの奇行に何も話せないでいる。それを良いことにサムはいまだ姿を見ぬ大音声の主に話しかける。 「_それともそちらの方が御用ですか?」 大音声の主は声量を一切変えずに話しかけてくる。 「_サムはおらんだと、何をやっている、早く連れてこぬか!!」 「_その様に大きい声を出さなくても聞こえます。もう一度言います。御用は何ですか?」 「_なんだと!!一介の法師に話をすることすら汚らわしいのに、その使いごときがどの口を聞くか!!!」 あまりの怒声にどんどん気持ちが弱っていくサムだったが、それと同時にそもそもなんで怒られにゃならんのだと。、気持ちがどんどん冷めていくのを感じる。サムは大音量で話すのをやめて、普通の声量で話しかける。 



「_で?どこの何様が、何用ですか?」 と言うと 「_貴様!!このワシはザイヤクシの町主の全権をもってこの村に来ておる者ぞ!!無礼である。」 「_では僕もサムの全権を担ってきています。互いに本物の代わりですね。なにか問題でも?」 「_貴様!!、こ、ころーーー」 「_やめて頂戴!!ウシオ!!!」 とサムのオウム返しの茶番にリクスが割って入る。ウシオと呼ばれたのが、大音声の主で今朝現れたという牡牛様なのだろう。サムはウシオとは話にならないと思い、無視して、リクスに話しかける。 「_リクス様にお話を聞いたほうがよさそうですね。サムに何か御用ですか?」 「_き、貴様、このワシを無視するだとっ!!!」 「_やめてと言ったはずよ。ウシオ!!」 その頃にはサムの心の中には恐怖は消えて無くたっていた。ただ、無関心と冷静の間のような心持になっていた。なので、サムは無言を貫くことにする。すると、リクスが空気を読んだのか話し始める。



「_ウシオは私を町に連れ返しに来たの、それで私は、サムのもとからラクサを取り戻すまでは帰れないと言ってしまったの、そしたら、、、」 さらに無言を貫くサムにリクスは続けて 「_こんなことになってしまってごめんなさい。。。ごめんなさい。。」 とごめんなさいだけを言い続ける。 「_”こんなこと”とはどういったことでしょう。」 「_知れたことよ!!!、そのサムと言う外法師のもとから力ずくでラクサという物を取り戻すのだ!!!」 とまたウシオが割って入る。サムは ”リクス様はそれでよろしいので?” と言いかけてやめる。そういうのはまだ未成年の少女なので、酷かなと思ったのだ。それにしてもウシオはうるさいなと思い始めていたが、そいつはさらに話すのをやめない 「_それに!!ワシの声は町主の声、むらかみも村主も相違はあるまい。」 むらかみと村主は沈黙でもって返す。サムは大人ってずるいと思いながら、後ろを向き、ヌバタマとダイフクに目配せする。 



「_下品にもほどがありますね。リクス様のお父上は本当にそんなことをおっしゃるので?」 と言うやいなや、ウシオがその角をサムに伸ばす、だがそれは空をきる。大蜘蛛化したヌバタマがサムとダイフクを抱えたのだ、そして次の瞬間には高速で糸を巻き取る仕草を見せると屋敷の外へ、屋敷の外からは内垣の外へ、そこからさらに外へと飛んでいく。サム達は念のため、不可視の糸を逃走用に準備していたのだった。外垣を超える頃、屋敷の方から声が聞こえてきたが、もう何を言っているのかうまく聞き取れなかった。とりあえずは無事に屋敷からは逃げられたらしい、だがしかし激しい動きの中で、水筒を落としてきてしまったようだった。



サム達が家に戻ると、今か今かと待っている狩人とカゲトキがいたが、サムはみんな、全力で逃げろとだけ答えて、家に籠ったかと思うと、一抱えの荷物のみを持って、森の中へと駆けていく。だが一度だけ振り向くと、 「_何をしている、全員すぐさま逃げなさい、怪物が来ますよ!!逃げ道は、、、村の南門から入って、あとは村人の振りをして北門を抜けて、各々の町に帰りなさい。お金は全て店の中にあるからそれを持ってまずは村に逃げなさい、いいですね!!!」 というやいなや、村の方から 『グオオオオオッ』 という人ならぬ声がとどろくのを聞くと、カゲトキが金を持ち南門へと駆けだす。すると狩人たちはそのカゲトキを追って駆け出す。それを見届けるとサムは森の中へ姿を隠すのだった。そのあと無為の家に何が起きたかは分からないが、騒動が終ったころに無為の家に戻ったカゲトキが見たものは全てが更地となった、家の土台すら残っていないほど、いやまるで地面ごとひっくり返されたかのような壮絶な現場だった。そしてそれは森の中へと続いていた。



その頃サム達は、念のためヨモギに現集落を離れて旧ブラボーグループの集落へ逃げよと指示を出したのちは、森を東へ東へと逃げ、そして時折輝く金色の閃光と轟きがウシオの居場所を告げており、それからは正確にサム達の後をものすごい速度で付けて来ていることがわかる。だが、森の中では蜘蛛に分があるので、何とか追いつかれずには済みそうだった。




9月19日:火曜日:4時半起床、サイドラインへ、未だ森の中、遠くで閃光と何かが轟く音がする。ヌバタマに指示を出し、谷に沿って北に向かうように指示を出す。そしてダイフクには村への連絡をお願いする。




9月20日:水曜日:5時起床、サイドラインへ、まだ逃走中、ヌバタマ曰く、ウシオのペースは落ちてきているとのこと。今後も様子を見ながら、谷に沿って北に向かうように指示を出す。




9月21日:木曜日:5時半起床、サイドラインへ、場所は、、、、、、目的は叶った。サム達は、間違ってもウシオがゴブリンの集落に近づかないように大きく北東へ回り込むような経路で追いつかれない程度の速度でゆっくり進むように依頼する。そしてダイフクにはとある役目を依頼し、まずは村へと向かってもらう。




9月22日:金曜日:5時半起床、サイドラインへ、ウシオのペースが目に見えて落ちたらしい、サム達の後をつけては来ているそうだが、もう閃光も轟きも聞こえてこない。なのでウシオから十分距離を保ったところにヌバタマ作成の拠点を作り、隠遁生活を始める。




9月23日~:ウシオのペースに合わせて拠点を転々と移動しつつ、隠遁生活を送る。この頃になると、森での生活も悪いものではないと思い始める。 「_こういう生活もいいですよね。心が落ち着くというか。こう、、、自分を見つめなおせるというか。。」 「_かかかっ、いい若いもんが何を言うか、隠遁生活など何百年も早いぞ。それにお主には目的もあろうが。」 「_あぁ。森の奥地から世界発展なんて、まぁ無理な話ですかねぇ。やっぱり人との接点は必要ですよね。。。でもやっぱりたまにはこういう時間も良いものです。」 と完全に落ち着いているサムであった。。。「_あぁ、そうだ、サクラ。」 「_はい、なんでしょうかサムさま。」 「_君の見つけてくれた薬草茶、とても美味しいよ。適度な苦みと酸味、それに焙煎した香り。。これがあるからこの生活も楽しかった。でもそろそろ戻ることになるだろうから、、、リクスとどうするか、考えておいておくれ。」 「_、、、はい。。。サム様は、、サム様にとってわたしはご不要でしょうか?」 「_、、、要不要で考えたことはないよ。。。僕がサクラを式にしたのは君に幸せを味わってほしいからだ、決して君を縛るために式にしたわけじゃぁない。でも、君の幸せは君にしかわからないからね。そこは厳しいかもしれないけど、サクラ自身で考えてほしいんだ。」 「_はい、、、分かりました。」



ところ変わって無為の家の跡地、とある男たちが跡地を掘り返して何かを探している。。 「_おい、あったか?」 「_いえございません。出てくのは木版ばかりです。この木版は、、、なんでしょうか、、、文字や図画がびっしりと。。。」 「_この木版に何か情報があるかもしれぬな。俺が読もう、お前たちは引き続き ”アレ” を探してくれ。」 「「_は!」」 と時間はゆっくりと過ぎていく。。



9月30日:土曜日:4時起床、サイドラインへ、場所はもう村の外垣の東門だ。そこにはサム達一家とむらかみ、村主、リクス、チョウザイ、ホウセンとなぜか狩人とカゲトキまでが揃っていた。ウシオの到着にはまだ時間が掛かるようだ。するとサムのもとにリクスが歩み寄る。 「_サム、ラクサ、ごめんなさい。私のわがままでまさかこんなことになるだなんて。。」 「_かまわないさ、子供が大人に頼ることの何が問題だろう。だから2人とも今は僕らのことは考えなくても良いよ。でもどうだろうそろそろ本音で語り合う丁度よい機会じゃないかい? あそこにリクスの乗ってきた籠があるだろう? その中で話すと良い。」 「_でも、ウシオが、、」 「_そういう面倒なことは大人に任せなさい。でもそれも君たちが子供の間だけだよ。さあ、行った行った。」 「_リクス、行きましょう。」 「_、、、分かったわ。」



リクスと、サクラが籠に籠ったのち、 「_さて首尾はどうです?」 とサムはむらかみ村主に話しかける。 「_うむ、マレヒトガミに言われるまでもなくやるつもりだったがの。それにしてもあ奴もマレヒトガミも好き勝手やってくれたもんじゃの。」 「_え、僕ですか?でもあの時は逃げるしか方法がなくなかったですか?」 「_だが、あ奴を怒らせる必要もなかったであろう。」 「_いやいや、彼はきっと何を言っても怒ってましたよ。それよりも、、、お屋敷は大丈夫でした?」 「_玄関から奥座敷までが全壊じゃ!風通しが良すぎてかなわん!!」 「_聞かなきゃよかった、、それで町主とは会話できましたか?」 「_ああ、マレヒトガミのおかげて会話もできたわ、まぁ文は我らで先に出して居ったから話は早かったがの。。聞けばあ奴は立ち寄った村々でも問題を起こして苦情の雨あられだったそうじゃ。」 「_まぁ、ありうる話ですねぇ。じゃあ、むらかみ様からの文のおかげでウシオの神通力が落ちたので?」 「_いや、我らの村に来る頃にはあ奴への神通力の供給は止めていたそうじゃ、それに気づかず暴れまわって、、、、あの体たらくらしいの。」 とむらかみが顎で指す先を見ると、森から一頭のボロボロの牛が出てきたのが目に入った。サムが直接ウシオを見たのはこれが初めてだったが、聞いていた話とは大違いの姿で、筋骨隆々であった体はやせ細り、黄金色の体毛は血や傷でボロボロに、たくましい角は両方とも折れてしまっている。そして蹄は割れ血を流していた。もう動いているのがやっとという様子だったが、それでもサムを睨み、向かってくることをやめようとはしなかった。やれやれずいぶん恨まれてしまったようだと思いながら、サムはむらかみが持っている水筒を見つめる。むらかみもやれやれと言った顔をしながらウシオに話しかける。



「_町主の式よ、我の話を聞け。」 「_・・・。」 「_どうした、既に言葉すら失ったか?」 「_、、、ぶ、ぶれい、で、、ある。」 「_町主の式よ、我からかける言葉はない。」 「_で、では、なにようぞ。」 「_お主と直接話したい者がおっての」 というとむらかみはその手に持つ水筒を高々と掲げる。すると水筒から涼やかなそれでいて重みのある声が聞こえてくる。 「_ウシオよお主何をしておる?」 「_!、これは町主様、、、、我は町主様に、無礼を、働く、、輩に、、、輩を、、」 「_、、私はお主に何を依頼した?」 「_、、、」 「_何を依頼した?」 「_、、、リクス、様の、奪還、を。。」 「_ウシオお主に機会をやろう。傷はサム殿とやらが治してくださるそうだ、そうしたらそのまま歩いて町まで帰ってこい。そしてその間に町を出てからのことを全て話せるようにしておけ、帰ってきたら報告してもらう。良いな?それ以外のことはもう何もするな。」 「_ぎ、御意、、」 というとひざをついてしまうウシオだった。。。



サムは急遽考えた作戦の割にはうまくいったと思う。その作戦とはまずはサムが町主の本心を知りたいというものが始まりだった。だが直接話すには兄姫村とザイヤクシの町はあまりにも遠すぎる、一度は蜘蛛一族間の通信で会話することも考えたが、その一族の存在を知られたくはなかったので断念した。その次に思いついたのは、村主の屋敷に落としてきてしまった水筒だ。あの水筒は森のお池と繋がっていて、よくガマが出入りしているものだったが、あれがもう一つあればガマ仙人を返して会話が可能と考えたのだ。それで、ウシオから逃げながら森の奥の谷に沿って移動しガマのお池を探して、新たに準備した水筒とお池を繋げてもらい、それを神通力をたくさん譲渡しさらにゴブリンの怪腕でブーストしたダイフクにザイヤクシの町まで飛んでもらい、そうしてむらかみと町主で話し合ってもらい今に至ったのだった。いや、町主が常識のある人で助かった。



「_さて、兄姫村の皆様、ご迷惑をかけた、申し訳ない。申し訳ついでに、、、そこにリクスはいるかい?」 「_いや、いまは乙女の会話中でございます。」 「_そうか、、ラクサか。君は? 君がサムかい?」 「_ええ、村のそばに住まう者、サムです。」 「_君にも迷惑をかけてしまったね。申し訳ない。」 「_いえいえ、思いがけず、静かな時間を過ごさせていただきました。」 「_君のことは娘の文からも聞いていた、薬師見習いだとか、迷惑料というわけではないが、もし君が良ければ、町での勉強を許可するが、、」 「_いえ、お気持ちだけで結構です。」 「_そうか、他に私に何かできることはあるだろうか。」 「_いや、ウシオ様を止めて頂いただけで結構です。。。あぁそうだ、その水筒、リクス様が戻られたら渡してもらっても良いですか? そうすれば、何時でもラクサと会話できますから。。」 「_そうか、、、ラクサは帰らぬか。」

 「_ええ、それが彼女の望みだそうです。」 「_そうか、父母には私の方から話しておこう。」 「_お手数ですがよろしくお願いします。」 「_それから、ウシオのことなのだがな、、、本来はとても真面目な奴なのだ、どうか許してやってほしい。」「_、、、まぁ、人的被害は無かったようですし、僕は何とも思っておりませんよ。」「_そうか、ありがとう。」



しばらくして、籠からでてくる、リクスとサクラ、そしてリクスは水筒の向こうの父親に話しかける。 「_父上、私、帰るわ。。ウシオとチョウザイとホウセンと。。。」 籠の中でどのような会話がなされたのかは分からないが、リクスは何かを吹っ切ったような顔をしていた。村には夏の終わりが近づいて来ていた。


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