第2話:新顔
なにやら、サムのことを探っているものがいる様子。
村からの帰り道、特に不穏なことが起こることもなく、無為の家へ。この時間は町の狩人が酒場に集う時間なので、そちらに向かう。そこには朝からお酒を飲む元気なおじさんたちが沢山いて、口々にサムに挨拶をする。こんなおじさん達でも、薬草採集やイノシシや鳥などの狩猟依頼を出すときちんと仕事をこなしてくるのだ、狩人という職業にきっと誇りを持っているのだろう。狩人という仕事もありかなと思うサムであったが、それではキャミーと約束したゆっくりとした世界発展に何も結果が残せない。なんやかんやで一応お給料はもらっているのだ、やはり、やりすぎない範囲で何かせねばなるまい。だがしかしそれはそれ、まずは酒場に集まっている狩人たちに仕事の依頼を出していく。今は狩人に依頼したいことは、村人がこの酒場に依頼を出して、それをサム達がまとめてから狩人たちに出す仕組みになっていた。ようはゲームの世界の集会所のようなものになっている。どうやら、町の規模になると集会所というのはあるそうだが、村でそういう施設が仮にでもあるのは珍しいらしいと狩人歴の長いおじさんが教えてくれた。それでその仮の集会所の狩人の皆様に仕事を依頼しきると、、、
一人の男だけが残った。サムは不思議に見ていると、ヌバタマが話しかけてくる。 「_サム様、この者が村からずっとつけてきた男です。」 「_ああ、そういえばあったね。家まで来てくれたんだ。」 とその男をみると、器用に帽子をくるくると回している。その間もちらちらとこちらを見てくるので、サムから話しかける。
「_あなたは、狩人の方ですか、それとも酒場のお客ですか。」 「_いんや、どちらでもないよ。あんた、どうにも有名人らしいじゃないか、この集会所もさぞ儲かっているんだろ?あんた知っているか、あんまり儲けすぎると恨みを買ったりすることもあるんだぜ。」 「_いやいや集会所の儲けなんて、狩人さんたちの賃金とお酒の仕入れ代で相殺されて、何にも残りませんよ。だからこちらの労働の手間がかかるのみでいいことなんか何もないですよ?」 「_それは嘘だね。俺は金に汚くない奴なんてこれまで見たことがない。あんたも相当儲けをため込んでいるんだろ?もし金じゃないとするなら、他になにか狙いがあるはずだ。違うかい?」 「_えーと、それであなたは何を言いたいんでしょうか?」 「_多くは望まない、ただあんたのやることに一枚かませてもらえればいいんだ。俺は役に立つぜ。」 「_具体的には何ができるんでしょうか?」 「_そうだな、あんたの護衛をするのもいいし、もっと儲けたければ助言もするし、邪魔な奴がいれば消してやらんこともない。まぁ、あんたは村じゃ薬でもないが毒でもないという扱いみたいじゃないか、だからその毒の部分をやってやらんこともないってことさ。あー、他にこんなこともできる。」 というと急に一人でダンスを始める男、最初は何をしだすんだと思ったサムだったが、時にはクールに時には情熱的に踊る男に魅せられていく。そしてそのダンスが終わると、その場にいたサム一家の面々が拍手喝さいをするほどだった。 「_どうだい?これできれいな姉さんでも用意してくれれば、もっと綺麗に踊って見せるぜ。」 それには萩ノがもう少し若ければ、、と少し嘆いていたのが面白かった。 「_いやいや、お見事です。なかなかに多彩な方なようだ。で、真の目的は何ですか?」
「_真の目的?そんなの金もうけに決まっているだろ?」 「_いや、そもそもあなたのような人が、何の目的もなしにこんな村に来るのがおかしい気がするんですよね。」 「_そうか?そんなことないと思うぜ。」 「_もしくは何かひどく悪いことをして、指名手配されているとか?」 「_ははー、大悪党ってわけか、それもいいかも知らんね。よし今度からはそれでいかせてもらおう。いいか、悪人ってなぁモテるんだぜ?」 なにやらつかみどころのない男である。このままだと何をいってもはぐらかされて、日が暮れてしまいそうだ。 「_村娘で満足するような人には見えませんがね。まぁいいでしょう。あなたお名前は?」 「_おう?雇う気になったかい?俺はカゲトキっていうんだ。よろしくな。」 「_ええ、よろしくお願いいたします。」 「「「_え!?」」」 「_ご、ご主人様、このような怪しさ大爆発な者をお雇いになるので?」 「_そうです、サム様、わたくしもやめたほうがよいかと。」 「_やっぱり怪しいですよ。サムさま。」 「_おいおい、ひでえこと言うな、あんたの連れ達は。まぁそれがまともな判断かもしれんがね。」 「_いや、僕も怪しいとは思っていますよ。でもそれ以上にあなたを説き伏せて真意を聞くことのほうが手がかかりそうだと思いましてね。まずは酒場の主人でもお願いできますか?それで僕の家族たちの信用を勝ち取ってください。」 「_あんたの信用は貰えないのかい?」 「_僕はもう信用していますよ。カゲトキさん。さて、僕はもう家に戻ります。お店のことは萩ノさん説明お願いします。賃金の相談はまた明日にでも。それではよろしく。」 というとサムはさっさと無為の家に入ってしまう。
「_サム様、本当によろしかったので?」 「_いいよいいよ、ほうっておいて変な噂を立てられるよりは良いのじゃないかな、きっと。」 「_ご主人様、わたくしめは、あのような者絶対に信用いたしませぬぞ?」 「_うん、それで良いよ。そうすればいつかきっと向こうからボロを出してくれるよ。それよりも、タマ、カゲトキは神通力を持っているかい?」 「_いえ、何も感じませんでした。」 「_そうか、それは良かった。この家は力の強いものが多いからね。そこから変な噂を立てられると困っちゃうからね。とりあえす、皆には彼を信用するように強制はしないよ。それで一旦は様子を見てみよう。それじゃね。」 といってLog Offするサムであった。
9月17日:日曜日:5時起床、無為の家の皆は食卓についていたが、一人だけ立っている男がいた、それはカゲトキだった。 「_いいか、みんなよく聞け、これが今都市で流行っている最新の朝食だ、食べやすい、健康に良い、美容に良い。そして安い。都市じゃぁ、子供から老人まで、平民から貴族までみんな食べてるって代物だ、お前らはきっと感謝する。この俺を雇ったことを、そして宣言する、これを酒場の新メニューとして売り出し、さらに店の売り上げを増やしてやる。さあみんな、食べた食べた、お変わりはいっぱいあるぞ、欲しい奴は我慢せず言うんだぞ。」 「_これが都市のはやりのメニューなの?」 と少し目をキラキラさせているサクラ。それ以外の者たちも薄っすら期待をしているように見える。そしてサムもこの世界の新たな食の扉への興味を隠せないでいた。そしてみんな一斉に食べ始め、一口口に含むやいなや、口が止まる。サクラと萩ノだけは美容のため美容のためと己に言い聞かせているが、それでも耐えられないのか、やはり口がとまる。そして萩ノが立ち上がると、昨日の残りで申し訳ないけどといって朝食の準備を始める。 「_おいおい、どうしたどうした。最新の味だぞ。もっとよく噛んでみろ、うま味があふれ出してくる、、、」 と果敢にチャレンジしたカゲトキが家の外に飛び出していく。 「_どうやら、新商品はお預けだね。」 とサムがいうと全員がうなずくのだった。そして萩ノが準備した朝食を食べるとサムは家を出る。すると極まりが悪そうなカゲトキが話しかけてくる。
「_さっきは済まない、こんなつもりじゃなかったんだ、ちょっと、ちょっとだけ俺たちの口には早すぎたんだ。」 「_ふふふ、そうかもしれないね。酒場の店番は僕がしておくから、朝食を食べてくるといい、それよりもさ、都市では今なにが流行っているんだい?」 「_なんだ、儲け話を知りたいのか?都市のはやりは今も昔もチェスだろ、拳闘士だろ、あとは子供の遊びではカルタなんてのもあるぜ。」 「_チェス?あのポーンとかキングとかのかい?」 「_おいおい、もう知ってるのかよ、それ以外のチェスがどこにあるってんだよ。なんだお前、都市にいたことあるのかよ?」 「_カゲトキも都市に詳しいみたいじゃないか。」 「_いやいや、このくらい町の者でも常識、だぜ。そうだろ、ははははは。」 「_君はいい奴だね。本当。」 とサムはいってカゲトキの肩を叩き、無為の家に行くように言う。
今日も、サムの酒場はオープンするがオープン前からすでに人だかりができていしまっている。町から来た狩人のほぼすべてが朝から飲みに来ているから、しょうがない。サムはヨシっと人声上げると、さっそく酒の準備を始める。提供している酒は一種類なので、大きい盃にいれると、順々にお代を置いて、盃が持っていかれる。酒のつまみは干し肉の塊で、これは最初に大きい塊を買ってもらって以降は無くなるまで各自に持ってもらっているので、支払いの機会が少なく済んでいる。酒が一巡したあたりで、一息つく。昔パブで働いていたことがこんなところで役に立とうとは思う。人生何が起こるかわからないものである。捌けた盃とお代の計算をして、お金を袋に詰める。だがこのお金も、原価代と狩人たちの賃金に消えていくのだ。と考えながら、狩人たちとの話にも参加するサム。
「_それにしても、全然ゴブリンを見かけねぇ、例年なら、森に入れば涌いて出てきたってのに。」 「_まぁ、そんな年もありますよ。それよりも、今年は薬草で稼げるし、薬草の知識も身につくし、うまい酒も飲めし、危険もない。いい年じゃないですか」 「_がははは、ちげえねぇ。」 「_そういや、今日はあの綺麗な嬢ちゃんは来ねぇのかい?」 「_リクス様ですか?」 「_そうそう、そのリクス嬢よ、俺たちは彼女の応援をしているのさ、おめぇからもラクサって嬢ちゃんに言ってやりなよ。」 「_いやいやそんなことしたら、リクス様が帰ってしまうではないですか。そうしたら皆さん、何をつまみに酒を飲むっていうんですか?」 「_確かに、それは困るな。」 と今やお店の名物になってしまっているリクスとサクラの口論なのであった。そうしていると 「_なんだ?やけに盛り上がっているじゃないか」 とカゲトキは復活してくる。
「_お、なんだあんちゃん、やけに店主のことを聞いて回っていると思ったら、ようやくお近づきになれたのかい?」 「_そんなんじゃねぇよ。おれは働き口を探していたのさ。」 「なんだ、なんだ、狩人でもやろうってのか?この仕事はそんなに甘くはないぞ。」 「_いえいえ彼にはこのお店を任せることにしたんです。それではカゲトキあとはお願いします。」 「_おう、サム。まかせとけ。」 「_ああ、あと一個だけ注意、これから見目麗しい少女がやって来てサクラと口論を始めますが、それには口を挟まないこと。いいですね。そうしないとたくさんの怖いおじさんからお叱りを受けますので。それでは。」 というと無為の家へと戻るサム。サムは現在、ゴブリンの生態についてを出版されることを想定して木の板に書き記していた。これにはゴブリンの生態全てを書いてしまっては色々とまずいこともあり、自動操縦と自動書記にだけ任せるには難しい仕事なので、サムが選んでしゃべった言葉だけを記すようにしていた。そして数ページを書いたところで、リクスとサクラの口論がまた始まったようなので、Log Outして逃げるサムだった。
副業部屋へ戻ると、テーブルの上のメモに”カゲトキは都市の出身の可能性あり”、”チェスあり”と二言だけ書いて、リビングへと移動する。丁度ノドカとシホも起きてきたようで、ノドカは朝から元気にどたどたと走り回っている。シホはそのノドカをやさしく抱き上げると、オムツの交換を始める。サムは、ノドカの頭側に回って抑え役をする。ノドカはサムとシホの顔を交互に見てにこにこと笑っている。そして今日はみんなでどこに出かけようかと話し始めるサムとシホであった。




