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凱旋パレード

 王都サラトガは、民衆の熱気に満ち溢れていた。

 それもそのはずで、長年に亘り人類を苦しめてきた魔王が、オレ達勇者パーティーによって討伐されたからだ。


 民衆の中には、魔王軍に家を焼かれ、かけがえのない家族を殺された者もいるだろう。

 民衆はそうした苦境を耐え、オレ達が魔王を倒した。

 人々を虐げていた邪悪なる者がいなくなり、街の人々の喜びは爆発したかのようだった。


 オレ達のパーティーは、魔王を討伐して凱旋帰国を果たし、歓迎のパレードで出迎えられた。

 レンガ造りの整然とした道を歩いていると、民衆がまき散らした紙吹雪が舞っている。

 後ろには王立楽団がいて、オレ達を歓迎するかのように勇ましいマーチを奏でている。

 この上ないもてなしに、つい口の端を上げてしまった。


 このパレードで、オレ達が王城へと難無く辿り着けるよう、道の両端には王立兵団がいて、興奮した街の人々を制している。

 その間を縫い、一人の町娘がオレの側に駆け寄ってきた。


 町娘は頬を朱に染め、「あ、あの……クリュッグ様をお慕いしております。どうか受け取ってもらえませんか?」と花束を渡してきた。


 快く花束を受け取り、町娘にお礼を言った。


「フッ、モテ男だな、クリュッグ」


 前を行くカインが隣に来て、オレの肩に手を回した。人懐こい彼は、爽やかな笑みを浮かべている。


「そんなことないさ、カイン。モテ度でいったらお前の方が断然上だ」

「そうかな? 僕にはそんな自覚はないが」


 どうやらこの爽やか勇者には、そんな自覚はないらしい。今や街娘の大半が、熱い眼差しを彼に向けているというのに。


「いや、カイン。あのさ……」

「どうしたんだよ、急に改まったりして? 僕達仲間だろ。遠慮すんなよ」

「盗賊や暗殺ギルドにいて、燻っていたオレを仲間にしてくれて本当にありがとな」

「やれやれ、またその話か。お前は今や僕達のパーティーに欠かせないだろ。もっと自信を持ってくれ」


 カインがオレのドンとオレの背中を押した。


「いや、クリュッグがいてくれて本当に良かったと僕は思っているぜ。マジでな」

「新参者のオレをカインは――いや、パーティーの皆は暖かく迎えてくれた。その時思ったんだ。『ああ、仲間って、友情って本当にいいものなんだな』って」

「そんなこと気にするなよ。てか、そうするのが当たり前だろ。クリュッグは、パーティーの大事な一員、仲間なんだからさ」

「カイン……」


 そこで言葉を詰まらせてしまった。胸に熱いものがこみ上げてくる。

 勇者カインや、パーティーの仲間には、本当に良くしてもらった。もう頭が上がらない。


 仲間に対する感謝の気持ちを抱きつつ、正門が開け放たれた城の中へと入っていった。

 これから、王の労いの言葉を受け、その後に晩餐会が開かれるとのこと。正に、国賓や英雄並の扱いだ。


 頼もしい仲間達と共に、王からの歓待。

 艱難辛苦を乗り越え、魔王を倒した苦労が、今ここに報われようとしている。

 この上ない名誉と幸せに、自然と笑顔になってしまった。

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