プロローグ1-3
俺達が異世界に召喚されてから、1週間が経った。
城での生活に少し慣れてきた俺は今、図書室 (実際は本の物置部屋)で本を読んでいた。
幸い、本に書かれている文字は、ひらがなが中心だったので、そこまで苦労せずに読めた。
本を読みながら、俺は、この1週間の内に起こった出来事を思い出していた。
まず、戦闘職が城の練習場で、それぞれの武器、魔法の扱い方を騎士から教えてもらっている。
俺?は商人だからと免除 (排除)された。
そして、明日辺りから、城の裏にある森に行き、レベルアップのために魔物を狩りをする予定だと聞いている。これには、もちろん、俺も同行する予定だ。
それ以外だと、案の定、 (弱い)俺を対象に (転移前から)不良のA、B、C (名前は知らないし、覚える必要はないだろう)から暴力、妨害、嫌がらせをうけたが、陸のおかげで、そこまでひどくはならなかった。
その陸から教えてもらった事がある。
今回、転移した総人数は、教師を含めて30人で、最上級職が勇者を含めて8人、上級職が15人、中級職が6人、最下級職が1人 (俺)らしい。
不良3人は、全員上級職だと教えてもらった。…まぁ、関係ないよな、無視する関わらないのが1番だ。
そうだ。無視するといえば、ここ1週間、やたらと頻繁にイケメン野郎…え、えと…天城だったか?が (桜目的で)絡んできている。
やれ、俺がいるから大丈夫とか、俺が守ってやるとかを来るたびに言っているな。
そういえば、転移前からも似たようなことがあったような…
その行動を桜は、はっきりと言っていないが、嫌がっているのが、見るだけでも簡単にわかるはずなのに…
今は、玲が中心になって、追い返している。
俺?俺が何を言ってもやつは、平然と聞き流してくるから、いつも言うだけ無駄に終わっている。桜と玲もそれが分かっているから俺にたいして特に何も言わない。一応、手助けはしているつもりなのだが。
それ以外には…あっ!忘れてた、そういえば、俺に新しい友達ができたんだった。名前は八神裕太で、職業は上級の忍者らしい。
何でも、自称オタクで、俺に主人公の匂い?を感じたから、友達になりたいと正直に言ってきた。まぁ、実際に話してみて、良いやつであること、気があったことで友達になった。
最後に、初日以外で誰も王族と会っていないらしい。一体何をしているんだか。
俺は読み終わった本を元の位置に直してから、自分の職業のことを考えていた。
読み終わった本に書いてあったことが本当なら、俺は、Lv.10で、1つ上の下級職にクラスチェンジすることができることと、クラスチェンジする前に一つのスキルを得ることができる。
この得ることができるスキルは、この世界では、ハズレスキルと言われているらしいが、スキルの説明を読んだ俺は、一つの可能性を思いついた。
この可能性は、今は誰にも話さずに黙っていよう。
もしかしたら、失敗する、間違っている可能性もあったので、そのとき、あいつらをがっかりさせないようにと、幼なじみや友達の顔を思い浮かべながら、俺はそう決めた。…同時に、成功したら驚かせてやろうと考えていたり、考えていなかったり。
次の日、
予定どおり、今日は城の裏にある森に魔物を狩りに行く。
今は、森の入り口付近で、それぞれいくつかのグループに別れて、待機している。
俺のいるグループは、いつもの3人と新たに友達となった裕太の計5人と護衛 (監視)の騎士1人の6人グループだ。
そういえば、グループ決めのとき、あの、あまなんとか…イケメン野郎がいろいろと言って、俺達のところに来たけど、俺、陸、玲が中心になって、追い返した。いたら絶対に邪魔になるやつはいらない。
まだかなぁ〜と思って、待っていると、久しぶりに、王女が姿を現れて、俺達に「皆さん頑張ってください」とだけ言って、またどこかに行ってしまった。
一体、何しに来たんだ?と、俺が思っていると、他のグループが次々に森の中に入って行った。
まぁ、気にする必要はないか。
俺達も、その後に続くように、森の中に入って行った。
ちなみに、今の俺の装備は、
武器、ショートソード
防具、皮の鎧
両方とも、城にあった予備の品で、質はそれほど良くはなかった。
当然、他の連中の装備は高品質の良い装備だ。…ちくしょう。
森に入って、10分くらいで、俺達は、異世界に来て、最初の、初めての魔物と遭遇した。
その魔物は、 (見た目は、アメーバの)スライムだった。
鑑定してみよ
名前
種族 スライム
Lv.1
HP 10
MP 10
筋力 3
頑丈 2
魔力 5
速さ 10
良かったぁ〜、これなら俺1人でも倒せそうだ。
心の中で安心していたら、同行している騎士から、スライムは核を狙うように言われると、陸が1人で、スライムに向かって行き、持っていた剣で、スライムを切った。…一撃、いやオーバーキルだろう威力がスライムを襲った。
「これで終わりか?」
簡単すぎると言いたそうな表情をしている陸に、俺を含めて全員が似たようなことを思っていたようで、何も言わずその場で黙っていたら、
「ほら、さっさと次の魔物を見つけに行くぞ」
騎士からそう言われて、俺達は再び、森の中を歩き始めた。
ちなみに、今の戦闘?で俺にもなぜか経験値が入っていて、レベルアップしていた。
名前 田中太一
種族 人間 (異世界人)
職業 見習い商人
Lv.2
HP 110
MP 110
筋力 25
頑丈 15
魔力 20
速さ 20
スキル (スキルポイント残り2)
鑑定
アイテムボックス
その後、何度か城に戻りながら、スライム、ゴブリン、ラビット等の魔物を夕方近くまで狩り続けた。
陸が剣で、玲が拳で、裕太は短剣で、魔物を倒し、桜は杖で疲れを癒していた。
俺?俺は後ろで戦闘を見ているだけだった。
だって、しょうがないじゃん出てきた魔物の8割以上が、俺より高い数値のステータスだったから。無理、絶対死ぬ。
さすがに、俺より強いスライムが出てきたときは、マジで落ち込んだ。嘘だろう〜。
その結果、最上級職の3人は、Lv.3に、上級職の裕太がLv.5に、俺がMaxのLv.10になった。
そして、無事に城の中まで戻ると、そのまま全員で食堂に行き、夕食を食べた。
夕食を食べ終わった後も、しばらくの間、雑談を楽しんでいた。
さすがに、そろそろ寝る時間になりそうだったので、解散、
俺は自分の部屋に帰ろうとすると、
「たっくん!」
桜に呼び止められた。
「どうした?」
俺はとりあえず、呼び止めた理由を聞いたが、
「両手を出して!」
無視された。そして、要求された。
「はぁ、…これでいいか」
俺は少し呆れながら、両手を前に出すと、
「うん。ありがとう」
そう言って、桜は自分の手を使って、俺の手を包み込んでから、祈るように目を閉じた。
すると、俺と桜の手が光始めた!…俺はただ黙って見ていると、1分ぐらい、時間が経ったくらいで、光が消えた。
「桜、今のは?」
さすがに、何をしたのか気になって聞いてみたが、
「えへへ、おまじないだよ」
なぜか嬉しそうにそう答えた桜は、そのまま自分の部屋へと行ってしまった。
まぁ、いいか
俺は、今の桜の行動を深く考えず、さっさと自室に帰って行った。
だから、気付かなかった。
今の俺と桜のやり取りを離れた場所から見ていた人がいたことを…
次回の投稿は、来週になります。