【絢音】星野、強くなりすぎたみたい……【異星食堂】
夜が明けて間もなく、ナイアが部屋の前に姿を現した。
「これは驚きました。あなたは本当に、あの御方に深く寵愛されているのですね」
ナイアはパッと音を立てて扇子を開き、口元を隠してくすりと笑う。
「……あの御方、とは?」
星野光は首をかしげて尋ねた。
「どうぞ、こちらへ。ご説明いたします」
「分かりました」
絢音は素直に星野光を操作し、ナイアの後について会議室の脇へ向かう。
すると、そこには本来壁しかなかったはずの場所に、いつの間にか“瞳”のような紋様が刻まれた重厚な石扉が現れていた。
「これは……?」
「こちらが、あの御方の神殿です。すでに使者がお待ちですので、お入りください」
ナイアは扇子を閉じ、石扉を軽く叩く。
次の瞬間、扉は音もなく左右へと開いた。
星野光が中へ足を踏み入れると、四隅の柱に掛けられた松明が自動的に灯り、空間を照らす。
柱は、三本の石の触手が螺旋状に絡み合ったような形をしており、さらに奇妙なことに、この部屋には壁が存在せず、周囲は果てしない闇に包まれていた。
まるで柱だけが闇の中に領域を切り取っているかのようだ。
淡く燐光を放つ床は、一歩踏み出すたびに小さな波紋を広げる。
その空間の中央には、四角い祭壇があり――
そこに鎮座していたのは、白と黒の毛並みを持つシベリアンキャットだった。
「猫ちゃんだ!」
絢音の目が一瞬で輝く。
自分の愛猫と同じ種類というだけで、好感度が一気に最大まで跳ね上がった。
「こちらが神の使いです」
ナイアは猫に向かって、静かに一礼する。
「神の……使い?」
星野光は戸惑ったように尋ねる。
「神のお名前を直接口にすることはできませんが、この御方が、星野様の旅にどのような助けを与えてくださるかはお伝えできます」
ナイアは再び扇子を開いた。
「祝福を授かりたい品を、使者の前にお供えください」
絢音は砕骨刀を祭壇の上に置き、猫を選択すると、インタラクションメニューが表示された。
【猫を撫でる】
【供物を捧げる】
【道具に付与する】
「……付与を選択してください」
しかし、絢音の指はすでに左の選択肢を押していた。
:判断が早いw
:そりゃ先に猫撫でるよね
「ニャ〜」
猫は目を細め、星野光の手に頭をすりっと擦りつける。
「……付与を選択してください」
ナイアは再び告げるが、絢音は我慢できず、もう一度猫を撫でた。
「……付与を選択してください」
ナイアは怒る様子もなく、星野光を一瞥してから、淡々と告げる。
「……あれ?」
今度選択しようとすると、他の二つの選択肢が灰色になり、選べなくなっていた。
:怒らせた
:もう選ばせないw
絢音は不要な道具を供物として捧げ、ゲージを満たす。
すると、猫が小さく「ニャ」と鳴いた。
【砕骨刀 攻撃力+10%】
「そして、あなたの信仰が深まるほど、神はさらなる神恩をお授けくださいます」
ナイアは説明を続けた。
「神恩? おお……」
絢音が首をかしげていると、【信仰+150】という表示とともに、新たな選択画面が現れた。
「なるほど、スキルなんだ」
その効果はどれも非常に強力だった。
攻撃力・体力・防御力・移動速度の上昇に加え、武器の連射速度強化、さらには無限弾薬といったものまで存在する。
必要な信仰値はスキルごとに異なり、強力なものほど多く要求される。
だが幸い、右上にはリセットボタンがあり、信仰値を10消費するだけで何度でも振り直しが可能だった。
新たな要素が加わり、絢音の熱量はますます高まっていく。
それからというもの、絢音は基地を出ては敵を倒し、戦利品を市場に持ち込み、
クエスト用に必要なものを確認し、余った分はすべて神殿に捧げた。
そのサイクルを繰り返し、装備とスキルを強化していくうちに――
この周辺の敵が、通常攻撃一発で倒せるほどになっていることに気づいた。
「あれ……星野、強くなりすぎた?」
絢音の脳裏に浮かんだのは、一つの考えだった。
――そろそろ、あの橋を渡ってみてもいいかもしれない。
あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!




