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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
大学編

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122/123

【絢音】探索とチュートリアルだよ【異星食堂】

暗闇の中から、ゆっくりと意識を取り戻し、

黒髪のポニーテールを結った少女は頭を振りながら、ゆっくりと上体を起こした。


「私は……」


すると、名前入力のダイアログが表示される。


「ここで名前を決めるんだ……?」


少しだけ迷ったものの、

名付けが苦手な絢音は、深く考えるのをやめ、

そのまま「星野光」と入力した。


「私は星野光。料理人だ」


少女は立ち上がり、周囲を見回す。

そこには明らかに文明の痕跡が残る風景――

まるで、廃墟と化した都市の残骸のようだった。


【WASDで移動 Eで調べる/話す SHIFTでダッシュ】


「あっ、私のスーツケース」


星野光は、少し離れた場所に置かれていた銀色のスーツケースを見つけ、近づいて拾い上げる。


「確か、中には……」


記憶を辿ると同時に、

装備選択画面が表示され、

その中から三つを選んで初期装備にできるようになっていた。


「えっと……」


剣や斧といった冷兵器、

拳銃などの火器、

防弾ベストのような防具類。

いずれもスーツケースに収まる程度の軽装備ばかりだ。


「銃って強そうだけど……弾切れしたら、ただの鉄の塊になりそうだよね」


絢音は、弾薬制限を心配する。


: ありそう

: この手のゲーム、無限弾じゃないでしょ

: 少なくとも序盤はなさそう


「とりあえず、防弾ベストは確保して……

あっ、料理人用の包丁あるじゃん」


絢音は出刃包丁を選択する。

料理人らしくて、しっくりきた。

最後に、弾数の最も多いライフルを護身用に選んだ。


装備を整え終え、

周囲を見回すが、今のところ調べられそうなものはない。


「よし、探索開始」


絢音は意気揚々とキャラクターを操作して進むと、

崩れた建物と生い茂る植物が入り混じり、

ひどく荒廃した光景が広がっていた。


「ん?」


星野光の頭上に、大きな感嘆符が浮かぶ。


「この方向、音がする……

もしかしたら、船に乗ってた他の人かも」


あまりにも分かりやすい誘導に、絢音は素直にその方向へ向かう。


そこでは、

鋼鉄製の貨車を盾にしたフード姿の人物が、

革鎧を着た三人の盗賊と対峙していた。

盗賊が近づくたび、フードの人物は銃で牽制している。


【フードの人物を助ける】

【盗賊を加勢する】


画面に選択肢が表示された。


「もちろん左。正義の味方ですから」


絢音は迷うことなく【フードの人物を助ける】を選び、前へ飛び出した。


「そこまでだ!」


星野光はライフルを構え、両者の間に割って入る。


「誰だ!?」


先頭に立つトカゲ頭の盗賊が驚いた表情を見せ、

すぐに獰笑した。


「こんな辺境で、正義感過剰な奴に会うとはな。

こりゃあ、神様が稼げって言ってるんだろ」


「兄貴の言う通りだぜ」

「ラッキーだな」


左右の犬頭の盗賊も同調する。


「えっ、人間じゃないの?」


絢音は少し驚いたが、

手を止めることはなかった。


【左クリック:攻撃 右クリック:防御 スペース:回避ロール】


「なるほど、これが戦闘のチュートリアルか」


星野光は銃を構えて発砲。

敵のHPゲージが、一気に削れる。


「うおっ!? やる気か!」


トカゲ頭も撃ち返してくるが、

絢音は即座に回避ロールでかわす。


――ソウル系は慣れてます。


敵の攻撃速度は遅く、

部下二人に至っては刀しか持っていない。


戦闘はあっという間に終わった。


フードの人物が近づき、声をかけてくる。


「助けていただき、ありがとうございます。

差し支えなければ、お名前を伺っても?」


その声は、女性のものだった。

フードの下から、黒い長髪がわずかに覗いている。


「……なんか、この声、聞き覚えがあるような?」


絢音は首を傾げたが、まだ思い出せなかった。


「星野光です」


主人公が名乗る。


「星野光様。ご助力、心より感謝いたします」


フードの女性は、

馬車に積まれた大量の荷を示しながら続けた。


「ご覧の通り、私は旅商人です。

感謝の印として、こちらをお受け取りください」


【回復薬×3 ライフル弾×100

ノート×1 バックパック×1 を入手】


「おお……! こんなにもらっていいの?」


装備欄が一気に充実し、

絢音は素直に喜ぶ。


「ノートには、地図や重要な情報を記録できます」


【Mでマップを開く Pでノートを開く】


ノートを確認すると、まだ何も書かれていない。

続いてマップを開く。


そこには、

星野光が最初に目覚めた地点と、

旅商人と出会った場所までのルートが表示されていた。

それ以外は、真っ白だ。


「探索によって、少しずつ埋まっていくタイプだね」


「星野光様は、なぜこのような辺境の星へ?」


旅商人が不思議そうに尋ねる。


星野光は、

宇宙タコとの遭遇、そして不時着の経緯を簡単に説明した。


「なるほど……

それでは、まだ拠点となる場所もお持ちではありませんね」


女性は頷き、

地図の一角に印をつける。


「でしたら、こちらへ向かわれてはいかがでしょう。

以前、料理人の女性がしばらく住んでいた場所です」


「彼女も一人暮らしに不便を感じており、

同居人を探していたはずです。

きっと、いくつかの助けになるでしょう」


「ありがとうございます。助かりました」


星野光は礼を述べる。


「いいえ、こちらこそ。

では、急ぎの用事がありますので、これにて失礼します」


旅商人は鋼鉄の馬車に乗り込む。

前方には、半透明の馬が現れた。


「幽霊馬車!? かっこいい!」


絢音は目を輝かせる。


「それでは、ごきげんよう。星野光様。またいつかお会いしましょう」


その言葉を残し、

馬車は音もなく、遠くの彼方へと消えていった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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