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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
大学編

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118/123

【祈】真実は何時も一つ!

金髪の少女は少し離れた場所に立ち、

自分の親友が黒髪の青年とゲームの細部について話し合っている様子を見つめていた。


少女の名前は上野祈。ハーフである。

見た目は金髪碧眼の完全な外国人だが、実は生まれも育ちも日本の子どもだ。

日本人離れした外見と飛び抜けた身長のせいで、周囲からはよく珍しい生き物のように見られてきた。


ちなみに、現在の身長は一六〇センチ台。

百七十センチにあと一センチ届かないが、届かない以上「一六〇台」。

それが彼女自身の小さなこだわりだった。


そんな幼少期の経験もあって、祈は次第に口数の少ない性格になった。

幸いなことに、中学生の頃、最高の親友――篠原琴梨に出会った。


琴梨はとても明るくて社交的で、常に人が集まってくるタイプだ。

だが、人を信じやすい彼女には、時々悪意を持って近づく者もいた。

琴梨を守るため、祈はいつの間にか、人を観察する習慣を身につけていった。


「改変の四つはみんなで相談して作って、オリジナル怪談は一人ひとつね。手伝いが必要なら、いつでも言ってくれればいい」


目の前の青年は穏やかな口調でそう言った。

落ち着いた態度は同年代とは思えないほど大人びていて、

鍛えているらしい体は、無駄なく引き締まって見える。


青年の名前は長谷川瞳。

ある日、琴梨が授業中に声をかけてきたクラスメイトだ。

琴梨いわく「ゲーム制作が得意な人」。


祈はしばらく観察して、彼が琴梨の容姿目当てで近づくようなタイプではないと判断した。

さらに、あの日隣にいた祈ですら見惚れてしまうような絶世の美女――

あの人が常に一緒なら、琴梨を奪われる心配もないだろう。


「長谷川さん、ここはこういう設定にしたいんだけど、どう思う?」

琴梨が身振り手振りで説明する。


「いいと思うよ。でも、ここを少し調整すると、ゲーム展開にもっとインパクトが出る」

瞳はまるで最初から案を持っていたかのように、滑らかに説明した。


「なるほど……。ねぇ長谷川さん、『狐の巫女』みたいな形式で作るのって、可能かな?」


瞳はすぐには答えず、

「まず確認。『狐の巫女』の形式っていうのは、昼夜システムとノード探索のこと?」と問い返した。


「うん、そう!」


「それなら問題ない。あれは別にオリジナルなシステムじゃなくて、同じような仕組みのノベルゲームは多いから」


「そっかぁ……」


「そういう構成にするなら――」

瞳は少し考えてから言う。

「昼夜システムを使って、昼は日常探索、夜は怪談解決にあてるのはどう?」


その様子を見ながら、祈は直感する。

長谷川くんは制作進行や監督の立場に慣れている――と。

(それに絵柄も……)


瞳が描いた簡単なラフを見たとき、祈の脳裏に浮かんだのは――

琴梨が熱狂するゲーム制作者【瞳中之景】の絵だった。


「……ありえないよね」

祈は思わず小声で否定する。

もし本当に彼が瞳中之景なら、高校生の時点で名作を量産していたことになる。


「祈ちゃん? 何か言った?」

琴梨が首を傾げる。


「何でもない」

祈は静かに首を振った。


「じゃあ祈ちゃんも一緒に相談しよ! ほら、存在しない部屋を怪談の一つにするのってどう?」

琴梨が祈の手を引きながら嬉しそうに言う。


「存在しない……部屋?」

祈は問い返す。


「そう! 昼はどこにもないのに、夜になると廊下の一番奥に出現するの!」


「その部屋の中には、何があるの?」


「ん〜……」

琴梨は考え込む音を漏らす。まだ固まっていないらしい。


「例えば、学校の真実が隠れてるとか、迷い込んだ生徒が昏睡してるとか」

瞳がさらりと例を挙げる。


「おお〜、長谷川くんって本当にすごい! よくそんなすらすらに出るなぁ」

琴梨が感嘆の眼差しを向ける。


「ただの例だからね。後で全体のバランスを見て、どっちが効果的なのか調整すればいい」


(……やっぱり、どう考えても怪しい)

祈はじっと瞳を見つめた。


じーっ。


その視線に気づいたのか、瞳は少し落ち着かない様子で問い返した。


「どうかした?」


「……いえ、別に」

祈は軽く首を振る。

――この不思議な同級生が、琴梨の崇拝するあの制作者なのか。

祈は今後も静かに観察することにした。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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