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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
七作目『配信事故』
101/103

【晴香】その目、誰の目?

7月23日を越え、暗転した画面からまず少女の荒く苦しそうな息遣いが聞こえてくる。


「どうしたの?晴ちゃん」

晴香は画面を食い入るように見つめ、物語の主人公の体調を心配した。


「病気?それとも悪夢でも見てるの?」

絢音が横で推測する。


小野晴はなんとか目を開ける。世界はぼやけ、ぐにゃりと歪んでいた。


小野晴「……薬、枕元のテーブルに……あったはず……」


晴香は慌てて少女を操作し、薬の瓶と水を手に取らせる。震える手で何度か試してようやくペットボトルの蓋を開け、水で薬を飲み込んだ。

しばらくすると視界は急速にクリアになっていくが、晴香は昨日よりも画面全体が少し暗くなっているような気がした。


「晴ちゃん、何の病気なんだろ、大丈夫かな?」

晴香は心配そうに画面を見るが、薬の瓶に書かれた文字は小さすぎて、どんな薬か読み取れない。


「ホラーゲームとか映画だと、大体こういうのは精神系の薬だよね」

ホラー好きの絢音がそう推測する。


:精神病かな

:現代人はストレス多いしね

:配信者みたいな長時間労働だと鬱とかになりそう


「そうだ、窓のところ!」

晴香は昨日寝る前に窓辺に立っていた人影を思い出し、カーテンにカーソルを合わせると、開けられることに気づく。

カーテンを開けると、外は明るい日差しが差し込んでいるが、目ざとい視聴者が異変に気づいた。


:窓の右下、手形ついてない?


「手形?あ、本当だ」

晴香は視線を右下に向ける。確かに手のひらの跡があり、何より恐ろしいのは、それが内側からついたように見えることだった。


小野晴「……手形、前の住人が掃除し忘れたのかな?」


「いやいやいや、どう考えてもそうならないでしょ」

晴香は即座にツッコミを入れる。


小野晴「とにかく今日は一日休んで、料理でもしよう」


少女はゆっくりと部屋を出て、スーパーに食材を買いに行った。


特にイベントもなく、家に戻った。小野晴は買ってきた食材を取り出す。

ここからは二つ目のミニゲーム、料理ゲームの開始だ。


作るのはオムライス。食材の下ごしらえ、加熱、盛り付けまで自分で操作でき、最後に小野晴が点数をつける。

気に入らなければやり直しも可能で、晴香は何度か試してみた。


「95点か、けっこうおいしそうじゃん」

晴香はケチャップでハートを描き、確認ボタンを押した。


「美味しそうですね」

絢音はそう言った。


:あさみさんの手料理食べたい

:めっちゃ美味しそう

:手順見てたら本当にオムライス作れそう


小野晴「完璧、写真撮ってアップしよう」


「ちょっと待って、反射するものがないか確認して」

晴香が心配していると、小野晴は狐のお面を被った。


「これ、白禾ちゃんのマスクじゃない?」

絢音が言う。


「うん、まさかこんなところでコラボするとは思わなかったけど、これなら顔バレしないね」

キャラクターデザイン担当の晴香が頷き、小野晴はオムライスの写真を撮ってネットに投稿。


そのまま評価コメントを読み始めた。



【美味しそう】


【料理上手ですね】


【いくらですか、言い値で買います】


ネットの反応はほとんどが好意的だったが、その中の一文が晴香と主人公の注意を引いた。


【鉢植えの後ろになんか誰の目がいない?】



:は?

:やめろw

:怖い怖い



「えっ?」


小野晴はもう一度鉢植えの方を振り返ると、【どかす】という選択肢が表示された。

晴香が【どかす】を選ぶと、カメラが壁へと向く。


「何もない……いや、ちょっと待って」

晴香は壁の一部の色がわずかに違うことに気づき、そこをクリックすると、紙のようなもので覆われていることがわかった。

小野晴が紙をめくると、不規則な小さな穴が現れた。


【覗く】【覗かない】


「怖すぎるでしょ、もし誰かと目が合ったらどうするの!?」

晴香は思わずツッコミを入れる。


「壁の穴はホラーの定番だよね」

絢音は腕を組み、深く頷く。


しかし、ここまで来て「覗かない」という選択肢は実質ない。晴香は【覗く】を選んだ。

少女は顔を近づけ、穴に目を当てる。向こう側も同じように部屋になっているが、人の気配はない。だが、壁一面にはハルのポスターと、小野晴の写真がびっしりと貼られていた。


「隣、完全に変態ストーカーじゃん!」

晴香が叫ぶ。

「早く警察呼んで!」


だがその時、世界が再び歪み、ぼやけ始める。そして画面が暗転。


7月23日の「3」が「4」へと変わった。


7月24日がやって来た。

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