予定が組めない
また進みが遅くて申し訳ないです。。
取り敢えず、エリクサーの件をメズラム国の人に聞かれてもトボケるとして、この後の事を話し合う。
今は夕方の六時半過ぎ。
私はどうやら三時間ほど気絶してたようだ。
夕食はどうしたのか聞いてみたら、私が目を覚ましてから食べようと言う話をしていたとか。
この砦にも食堂はあるが、現在私たちに提供出来るほど食糧に余裕があるわけではないから、申し訳ないが自身で用意してほしいと言われたそうだ。
そりゃそうだよね。
物資を提供した時、国からの補給が遅れてるって言ってたし。
それにしても、物資の補給が遅れているのは大丈夫なんだろうか?
精々一日や二日とかなら凌げるかもしれないけど、それ以上になるともはや砦として機能できなくなる可能性もあるよね?
しかもまだ戦闘は続いているからこれからも怪我をする人は増えていく。
私たちが早く着き過ぎただけで、他国からの応援はまだ到着する兆しはない。
あれ?
ジリ貧じゃない?
いやいや、ただ少し遅れてるだけだろう。
明日には到着するかもしれないし。
うん、きっとそうだ。
私にはありがたい事に【買い付け】アプリがあるから、食うには困らない。
勿論この事は誰にも言ってないから皆んなの前で使う事はないけど、三人とも私のストレージ機能(三人はアイテムボックスと思ってる)がおかしい事には気づいているだろうから、物資を提供しても焦らない私をみてまだ食糧は問題ないと感じているとは思う。
ナージンさんも全ての食糧を出すとは思えないから、自分の分は確保しているだろうし。
ただ、今出来上がっている料理は無いから作らなければならない。
「出来合いのものが無いので作らないと……食堂の設備は借りれるんでしょうか?」
「ええ、既に許可は取りました。用意は私がしますので、ユエさんは休んでいて下さい」
「でも、頭痛も治りましたし、大丈夫ですよ」
「私も手伝う。ユエは休んでいると良い」
「アタシ、トコ様のそばにいるよ!」
「……迷惑かけて申し訳ないです。じゃ、お言葉に甘えさせてもらいます」
夕食は二人に任せ、部屋でオリちゃんと待つ事に。
「オリちゃんは大丈夫?」
「? 大丈夫だよ? 魔力もまだ残ってるよ?」
「いや、気持ち的なところは大丈夫なのかなって」
「気持ち? ありがとうって言われて嬉しかったよ?」
「そっか……」
頭痛は治ったけど、まだあの病室で見た光景が忘れられず、胸の辺りに違和感が残っている。
でも、オリちゃんは何の抵抗もなかったみたいにケロッとしている。
七歳なのに……それだけ生死が身近な世界で生きてきてるって事なんだろうな。
ああ、また自分が情けなくなる。
「トコ様にもみんなありがとうって言ってたね! 嬉しいね!」
「そうだね……そうだね! 助けられた人がいるんだもんね!」
「うん!」
「オリちゃん、ありがとう」
落ち込みそうになった私をオリちゃんの明るさが掬い上げてくれた。
そうだ、情けないって落ち込んだって何にもならないもんね。
それこそ凄惨な現場に衝撃を受けたからって何も出来なかったわけではない。
あの場を正気で何とか乗り越えられた自分を少しは褒めよう。
それに、薬のおかげで瀕死だった人も欠損した部分を取り戻せた人もいたみたいだし。
うん、前向きに考えよう!
暫くしてヒースさんとナージンさんが部屋に夕食を持ってきてくれた。
シンプルな野菜スープとパン。
オリちゃんのお陰で少し前向きになれたのと、スープの匂いでさっきまでなかった食欲も出てきた。
三人は食堂で食べるとの事で、私だけ今いる部屋で頂く。
優しいスープの味が私の涙腺をまた緩くする。
今まで以上に感謝してスープとパンを食べた。
深夜。
夜は襲撃を受けないようで、静かなものだ。
だからと言って油断する事なく、今でもしっかりと警備している兵士がいるだろう。
そんな中私はオリちゃんとベッドに横になっている。
ありがたい事に今いる部屋を使って良いと言われたのだ。
そこまで広くない部屋でベッドは一つだが、テーブルをずらせばもう一つベッドが置ける広さはあるのでストレージから持っていたベッドを出し、繋げている。
ヒースさんとナージンさんは隣の部屋。
隣の部屋も同じ広さだったので、私たちと同じようにベッドを一つ出してある。
ナージンさんにめちゃくちゃお礼を言われた。
そして今静かな夜、私は考えていた。
カジさんがこの戦地に到着するまでまだ時間がかかる。
その間もモジンバル帝国は攻撃の手をやめないだろうとナージンさんは言っていた。
いつ届くかわからない物資、増え続ける死傷者。
どうにかならんだろうか?
モジンバル帝国側の最前線で陣頭指揮を取っている人に、攻撃をやめてと言っても止めるわけはないよね?
攻撃をやめてもらえないなら防ぐしかない。
防ぐ方法は、相手方の攻撃手段を断つしかない。
即ち攻撃をする。
今と何ら変わらず、死傷者が増える。
……悪循環だ。
まだ砦がある分メズラム側が優勢だが……ん?
砦?
障害物……障害……防ぐ……
結界!
そうだ!
今まで旅してきた中で、何度も“予定”スキルで結界を作ってるじゃないか!
今の私の魔力量なら何とか砦範囲内で結界を張る事はできないかな?
私は久しぶりに自分のステータスを開く。
▽▽▽
名前 :トウコ・スズキ(偽名:ユエ)
職業 :販売部
レベル :33
HP :1,010/1,050
MP :1,430/1,710
スキル :隠匿操作・鑑定・聖魔法・風魔法
ユニーク:予定・ストレージ
その他 :創造神の加護・商業神の加護
△△△
レベルは上がっていないけど、総魔力量が上がっているのは、ロッテントークでセージュさんの浄化を毎日行った事と、エリクサーを作り続けたお陰だ。
早速“予定”スキルに入力してみよう。
ーーーーー
イベント:メズラム国国境メージー砦を中心に、モジンバル帝国兵の侵入と攻撃を不可とする結界を張る
日時 :開始 3153年2月1日 終日
終了 ーー
場所 :メズラム国国境砦紛争地
繰り返し:毎日
アラート:なし
ーーーーー
ブブーッ
【予定を実行出来ません】
今私がいるメージー砦を中心に結界を張るにしたけどダメか……
でも、もうちょっと内容を絞ればいける気がする。
メージー砦全体をってなると広すぎるのか?
そもそも定義が曖昧すぎたか?
ーーーーー
イベント:メズラム国国境メージー砦前方に、横一キロメートル、縦五百メートルのモジンバル帝国兵侵入不可と攻撃不可の結界を張る
日時 :開始 3153年2月1日 終日
終了 ーー
場所 :メズラム国国境砦紛争地
繰り返し:毎日
アラート:なし
ーーーーー
ブブーッ
【予定を実行出来ません】
ダメかー……
そう簡単には出来ないか。
しかもいくら広く設定しても回り込んだら攻撃できてしまうから、さほど時間も稼げないか。
その後、モジンバル帝国側の兵士を出られないような結界にしたりと入力を変えたけど、そもそもどのくらいの兵力があるかもわかってないからか、実行出来なかった。
うーん、出来そうな気がしたんだけどな……戦いを防ぐのは他に何かないかな?
そもそも戦ってほしくない。
みんな戦いたくて戦ってるのかな?
中には戦闘がしたくてしている人もいるかもしれない。
でも戦うのが嫌な人でも上に言われれば逆らえないよね。
ん?
上に逆らえない?
ああ!
そうだよ!
基本的に所属している組織があれば上の指示は絶対じゃん!
それこそ軍の組織なんて上下関係が厳しいだろうし。
それなら指示する人が指示を出せなくすれば良いんじゃない!?
流石に今モジンバル皇帝の指示を止めたとしても、皇帝がいるところから離れているだろうここでは意味がない。
既に信頼した将軍とかに託しているだろうし。
今ここの戦況の陣頭指揮をとってる人と兵士を引き離せば良いのか!
ーーーーー
イベント:メズラム国国境メージー砦紛争地にて、モジンバル帝国側本陣営を中心とした半径百メートルに結界を張り、結界を張った時点でモジンバル帝国兵の出入りが出来なくなり、外部との連絡手段を断つ
日時 :開始 3153年2月1日 終日
終了 ーー
場所 :メズラム国国境砦紛争地
繰り返し:毎日
アラート:なし
ーーーーー
【消費魔力は日毎に「1200」です。実行しますか?】
【はい・いいえ】
やばー!!
出来るけど、消費魔力やばー!!
ちょっと欲張りすぎた感はあるけど、実行可能のポップアップが出てよかった。
もしかしたら、今その指揮官がその場にいないかもしれないけど、敵の本陣って事は後方支援の人達も集まるところだろうし、そこが機能しなくなったら大ダメージだよね?
この予定を実行する事により、どのくらいのダメージを与えて戦闘を遅らせることができるかわからないけど、やってみよう。
私は「はい」を押した。
すると、一気に千二百もの魔力を消費した為か、魔力はまだ少し残るはずなのに怠さと気持ち悪さで意識を手放した。
♢♢♢
「……ま。ト……さ……。トコ様!」
「う、うぅん? オリちゃん?」
「うん! 大丈夫? うなされてたよ?」
「ちょっとまた頭痛が……」
「あ、大きい声出してごめんなさい……」
「ううん、大丈夫。ごめんね、心配かけて」
「お水のむ?」
そう言ってコップを渡してくれたオリちゃん。
ベッドから上半身を起こし、ありがとうと言ってそれを受け取った。
部屋の窓は開けられていて、外から日差しが入ってきている。
今は何時だろう?
スマホで時計を見ると、十時五分だった。
寝坊してしまったが、静かな朝だ。
ん? 静か?
「オリちゃん、今日はまだ戦闘が始まっていない感じ?」
「うん! さっきヒース様にも聞いたけど、砦近くには敵兵の姿がまだ見えないって」
あれ?
戦闘が何時から始まるかなんてわからないけど、思った以上に効果があったとか?
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