やはりキツい
誤字報告ありがとうございます!
読み返しておらず、気づいてませんでした。。
お気づきの点がありましたら、今後もお願いします!
「あいつには全体に毛布をかけて体の保温をしろ! こいつには消毒液かけて包帯巻いとけ! そいつは傷口を焼け!」
「「はい!」」
「うぅうぅっっ」
「ぐぁぁ、っ、うぐっ」
「急げ! 倉庫から薬品を補充しろ!」
至る所から呻き声が聞こえる室内は、薬品や人の血の匂いで充満している。
「そこ突っ立ってんな! 邪魔だ!」
入り口付近に立っていた私達に、中で指示を飛ばしていた人が叫ぶ。
「手伝います!」
「素人はすっこんでろ! 邪魔だ!!」
手伝うと叫んだ私に、こちらを見る事無くその人は吐き捨てた。
でも、その手は傷ついた兵士を懸命に治療している。
どう見ても私達は邪魔でしかない。
だからと言って、この光景を見て何もしないではいられず、広い室内を見渡す。
ベッドが沢山並び、その大半に兵士が寝かされていて、恐らく手前にいる人たちが重症者と、運ばれて来たばかりの人達だろう。
一時的な治療を終えた人たちは、奥に運ばれているのではないかと推測した。
寝かされている人の中には、腕や脚を失っている人、顔や体が焼けてしまったり、切られたような鋭い傷のある人が沢山。
そして、恐らく手遅れだろうと判断された人達は……
見たくない、キツい、逃げ出したい。
でも……
「オリちゃん、手前から治療していこう。私はこっち、オリちゃんはそっちから良い?」
「はぁい!」
「魔力が切れる前に言ってね」
「はぁい!」
「ヒースさん、ナージンさんはこれを。あの最奥に寝かされている人たちに」
「ユエさん!」
「良いから!」
二人に渡したのは、オリちゃんと作った普通の方のエリクサーだ。
普通の方と言っても、瀕死の傷を癒す力があるし、欠損も治せる。
そんな貴重なものを簡単に渡して使えと言うのだから、ナージンさんが私に非難の声をあげるのもわかる。
でも今はそれどころではない。
貴重なものだって、溜め込んでて使わなければ意味がないのだ。
だから、ナージンさんに強気で返す。
ヒースさんは薬を受け取り何も言わず奥へ向かう。
ナージンさんは渋々その後をついて行った。
「スミマセン、邪魔しないよう勝手にやらせてもらいます!」
誰にともなく言い、私とオリちゃんは手前にいる怪我の重い人から順番に治療していった。
「「は?」」
「な、何故ここに、教会の……」
「聖、属性? しかも二人?」
恐らく私達をここまで案内してくれた兵士達の声だろう。
でも今その声に答えている程余裕がない。
傷ついた人達を前にして、吐き気を抑えるのに必死だし、助けられなかったらどうしようと不安でいっぱいになりながら回復魔法をかけている。
正直しんどい。
何故、同じ人同士で傷つけ合わなければならないのか。
どうしてここまで酷い怪我を負わせる事ができるのだろうか。
そんなことばかり考えてしまう。
ダメだ、考えるな。
考えると何かに飲み込まれそうだ。
「その人はもう大丈夫だ」
「え?」
私が何人目かもわからず治療をしていると、ふと、ヒースさんに手を取られ、止められた。
どうやら過剰に回復魔法をかけていたようだ。
それにも気付かないほど無意識で魔法を使っていたのか。
周りを見ると、さっきまでの混沌が嘘のように室内は落ち着いていた。
「トコ様、こっちも終わったよー」
「あ、オリちゃ、ゔっ、ぉぇぇ」
「トコ様っ!!」
張り詰めていた気持ちが解けたのか、魔力の使いすぎなのか、私はその場で吐いてしまった。
そして、迷惑な話だが、そこで私の意識が途絶える。
♢♢♢
「うぅっ」
「!? トコ様起きた!?」
激しい頭痛で目を覚ますと、そこはほんのり明かりが灯った室内で、私はベッドに横になっている状態のようだ。
そして、隣からオリちゃんの心配するような声が聞こえた。
「ご、めん、オリちゃん? 私倒れたんだよね?」
「うん。ゲェした後倒れちゃったから心配したよ!」
「ゲェ……ご、ごめん……汚しちゃった?」
今は倒れたことより、そっちの方が私にとっては気掛かりだ……
「うん、ヒース様にかかってた! でも洗浄したよ!」
「うわぁぁぁ! なんて事ぉぉぉ!!!」
あまりの失態に、体に掛けられていた布団を頭からかぶる。
人様にゲェするなんて!!
この間は嘔吐くだけで何とか吐くのは耐えたのに……
お嫁に行けん。
今更だが。
「大丈夫だよ、トコ様! ヒース様はキレイにしたよ!」
「オリちゃん……そういう問題では無いのだよ……一応私も乙女でね、尊厳がね……」
「??」
「いや、洗浄してくれてありがとうオリちゃん」
「うん!」
ああ、その笑顔が眩しい、眩しすぎる……
吐いて倒れるなんて、何て傍迷惑なんだろうか。
聞けば、ここまで運んでくれたのはオリちゃんらしい。
「皆んな驚いてたの!」と可愛い笑顔で言うが、私より体の小さいオリちゃんが私を運んだら、そりゃ驚くだろう。
護衛の役割を果たしてるよと褒めて欲しそうに言うオリちゃんが可愛くて、頭を撫でながらありがとうと伝えた。
それから、ヒースさん達に私が起きたら呼べと言われたらしく、オリちゃんは部屋を出て行った。
もしかしたら、この後部屋にオリちゃん以外の人が来るかもしれないと思い、着ている衣服を確認する。
どうやらオリちゃんは私の服にも“クリーン”の魔法をかけてくれたようで、綺麗そのものだった。
なんて気の効く子だ。
そして、暫くすると部屋の外から、ドタドタと走ってくるような足音がこちらに近づいてくる。
その足音が部屋の前で止まったと思ったら、激しく扉をノックされた。
「? はい、どうぞ?」
私が入室の許可をすると、扉は勢いよく開かれ、人が雪崩れ込んできた。
「ええぇ!?」
私が驚くのも無理がないと思う。
一人の兵士が失礼しますと言って、部屋の四隅のランプに火を灯してくれて室内は明るくなったが、部屋に入ってきたのは全員軍服を着た兵士達で、ヒースさんやナージンさん、オリちゃんが見当たらないのだ。
一応先頭にいるのは、砦内を案内してくれた兵士数名だが、ここに来ている兵士の数は広くない室内に入りきらないようで、外からも声が聞こえる。
「ど、ど、どうしま……あ、急に倒れてごめんなさい、ご迷惑お掛けしま、」
「「謝らないでください!!」」
「お助け頂きありがとうございました!」
「お身体は大丈夫ですか?」
「まだ休んでいて下さい」
「ああ、何と儚い……」
私が謝ると、キラキラした目で兵士たちが一斉に話し始めた。
え?
人生初のモテ期か?
んな訳ない。
「?? どうなってるの?」
私がこの状況についていけないでいると。
「皆あなたに感謝している。まさか聖属性持ちだとはな」
先頭の砦内を案内してくれた兵士の一人が説明してくれた。
「あぁ、黙っててすみません、初めから言っていれば混乱させませんでしたよね。医師の方達にも申し訳ないです」
「いや、医療班も感謝していた。目覚めたばかりなのに大勢で押しかけて済まなかったな。おい! 全員出ろ!」
「いえ……」
みなさん心配して来てくれたのか。
有事なのに申し訳ない……
その兵士の一言で部屋に訪れた他の兵士達は、お大事にとか、無理しないでとか言って去って行った。
「嵐のようだった……」
そんなひと言を漏らしていると、開いていた扉からヒースさん、ナージンさん、オリちゃんがやってきた。
「すごい数の兵士が来たな」
「皆ユエさんとオリさんに感謝していましたぞ」
「ヒースさん!? あの、その、ごめんなさい!!」
「ああ、構わない。気にするな」
私が吐いた事なんか忘れてるかのように、部屋に入ってきたヒースさんとナージンさんは普通に話しかけて来たけど、やらかした本人はそうはいかない。
きっと顔が真っ赤だっただろう私に、気にするなと言うヒースさん。
本当になんとも思っていなそうな感じで良かったけど、乙女心としてはなかなかなんとも言えない感情だ。
「しかしユエさん、大変ですぞ。瀕死の兵士をエリクサーで治した為、あの薬はなんだと言われました。高品質の特級ポーションだと言いましたが、欠損まで治してしまっているので、信じてはいないでしょう。しかも、それを惜しげもなく一般の兵士に使ったのです。恐らく、まだまだ持っているのではないかと思われていますな」
「あぁ……そう思いますよね……作ればあるにはありますが……はい、そう言う問題じゃないですよね」
私が作ればとか言ったもんだから、ナージンさんの顔が般若のようになり、目つきがヤバかった。
ごめんなさい。
「最悪、逃げても良いですかね? あ、でも冒険者ギルド証出しちゃってるからギルド経由で探されても嫌ですね……また色々と面倒な事してごめんなさい」
「もう手に入らない事は言ってありますから、後は、この国の良心にかけるしかありませんな。まあ、エリクサーである事を知られないのが大前提ですがな。知られたら……」
「怖い怖い怖い! ナージンさん、顔が怖いですから! わかりましたから!」
ふぅ……ナージンさんの圧が強すぎて、マジで気を付けようと思ったわ。
それに、作れるなんて他の人に知られたら、最悪拉致されてエリクサー製造機にさせられかねないし。
考えただけで恐ろしい。
更新が遅く申し訳ないです。
少しでも面白いと思ってもらえたなら嬉しいです!
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