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予定は確定ースケジュール管理は基本ー  作者: 秋海棠
第七章 対立

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怒られないわけないよね

うっかり、オリちゃんとヒューマニア大陸の人との会話で、補足し忘れてました。




 カイラさんとハリオさんを置いて逃げるようにワリ商会を後にして、その足で王都を出た。


 この三日で既に出発の準備は終わっている。

 宿も引き払ったし、食料類も十分。


 出発準備の為、昨日商人ギルドへ顔を出した時には、なんとエンデル街商人ギルド長のシャーリーさんからお便りが来ていた。

 嬉しくて速攻その場で開けたら、内容に少し泣いてしまった。

 受付の男性にホール内の脇に置かれた椅子を優しく勧められ、またそれにも涙する私の涙腺はどうかと思う。


 私と別れた初めのうちは、とても元気をなくしていたクリフ君だったが、リリーちゃんが励ますように終始寄り添い、シャーリーさんも気に掛けてくれた事により、今ではすっかり元気になり駆け回っているそうだ。

 そして、私が元気にしている事をクリフ君に伝えたら、嬉しそうに嘶いていたと書かれていた。

 ああ、私の名前を覚えていてくれたんだなと嬉しくなって泣いてしまったのだ。 

 クリフ君が元気にしてくれているならそれが何よりの便りだ。


 それからその場で、これからまた王都を離れる事や、クリフ君やリリーちゃん、シャーリーさんが元気で良かったなどの返事を書いた。

 手紙の書き方は不安だったけど、シャーリーさんの書き方を真似させてもらい、そこまで堅苦しくなかったのは助かった。


 書いた手紙を商人ギルドの受付で、エンデル街商人ギルド長のシャーリーさんに渡して欲しいとお願いした。

 商人ギルドに加入している者なら、手紙は一通銀貨一枚で希望の商人ギルドへ届けてくれる。

 一通日本円で一万円って高過ぎるけど、魔道具を使って送るらしくその位が相場なんだと。

 その魔道具を使っても送れるのは手紙類だけらしく、一緒にエリクサーもと思ったが叶わなかった。

 今度エンデル街に行った際に直接渡そう。

 

 しかし、受付で手紙を出した際は、その便箋に注目されてしまい、どこで手に入るのかや、もしまだ持っているなら売ってくれないかと、人だかりが出来てしまったのは苦い記憶だ。

 日本で気に入って使っていた、淡い鶯色に花の模様がうっすらと入った和紙の便箋だったのがいけなかったのか。

 この技術が今のこの世界では知られていない様だ。

 売り物は無く、制作も企業秘密ですと濁すしか出来なくて、皆さん渋々引き上げていったけど、まだ諦めていなさそうな目の人もいたのがちょっと怖い。

 私はその作り方すら知らないのだけどね。


 そんなこんなはありつつも、王都でやり残したことはないので、そのまま出発。

 しばらく徒歩で進み、人気のない森に入り、オリちゃんにグンちゃんを呼び出してもらった。


 バサッと上空から音がして、グンちゃんが降り立つ。

 何度見ても凛とした佇まいと威厳のある顔立ちだ。

 接するオリちゃんや私たちには目を細めて懐いてくれるので、愛くるしさも満点。


 そんなグンちゃんに、ストレージから出した籠に私たちが乗るので運んでとオリちゃんが説明すると、グルゥと鳴き頷いてくれた。

 もちろん移動速度や飛行時間などはグンちゃんの体力に合わせる。


 籠に乗り込み、三人分の椅子を用意し、オリちゃんがグンちゃんに合図を送る。

 籠に乗りながらも意思疎通出来るのは、念話というものを使えるからなのだと教えてくれた。

 これはオリちゃんとグンちゃんが従魔契約をしているかららしい。


 そして、グンちゃんが籠の持ち手を掴むとフワッと浮き上がった。

 浮き上がる際に衝撃がないのは、こう言ったものをグンちゃんが運び慣れている証拠だ。

 お利口過ぎる。

 お利口なグンちゃんに感心している場合ではなく、私は籠に隠匿操作スキルをかける。

 これは念の為。

 

 飛行は順調そのもの、何度か休憩しながら進み、日が暮れて来たので今日の移動は終了となった。

 ここから近い村や街には寄らず、開けた森で野宿をする。

 しっかり“予定”スキルで結界を張り、ベッドとソファも設置。

 野宿というには可笑しいが、まあ今更だ。

 

 グンちゃんがいるので魔物除けのお香を焚かなかったら、料理の匂いに釣られて何匹も魔物が現れた。

 しかし、グンちゃんを見て逃げ出したり、逃げ出さなかった魔物もグンちゃんの一鳴きで蜘蛛の子を散らす様に逃げていった。

 偉大なりグンちゃん。

 そんなグンちゃんにはお肉を奮発して差し上げました。

 明日からもよろしくお願いします。


♢♢♢


 翌日の夕方、メズラム国最端の『ポロポ』街近くの森に降り立つ。

 

「グンちゃんここまでありがとう」

「世話になったな」

「グルルゥゥー!」


 何だか、全然いいよ!って言ってそうな雰囲気を感じたら、オリちゃんが「お安い御用だ」って通訳してくれた。

 ここでグンちゃんとは暫しのお別れ。


 森を抜け街道を歩いていると、メズラム国側から出てきたと思われる馬車と引っ切り無しにすれ違った。

 反対に、私たちと進行方向が一緒の馬車に追い抜かれる事はなかった。

 なので、『ポロポ』街の門での検問も待つ事なくすんなり通れて、街に入った。

 しかし街の中は門外とは打って変わって騒然としている。

 街を出たい人とその馬車とで列をなし、門兵には早くしろと怒号が飛び交う。

 すり抜けようとする輩もいる様で、門兵も疲弊している様子。

 恐らく閉門時間が近づいてきている事もあるのだろう。

 今日中にこの街を出たい人たちの殺気立ち方が異様だ。

 

 街のメインストリートと言われるような大きな通りの店も軒並み閉まっている。

 開いているのは各ギルドや武器屋、宿屋など。

 宿屋はむしろ繁盛しているようで、メインストリートの店は全て満室だった。

 恐らく他の街や村から移動して来た人達で宿は溢れ変えてるってことか。


 ただ、メインストリートから少し外れると、そこには変わらない風景があった。

 恐らくこの街の住民街。

 他国に知り合いがいなければ、国を出ても結局難民となり住む場所はないし、働き口も無くなる。

 出たくても出られない。

 だからいつも通りの日常を送るしかない、戦争に巻き込まれたとしても。

 帝国に侵略されても、もしかしたら今まで通りの生活ができるかもしれないという希望をもつしかないと言っていたのは、開いていた酒場で酔っ払っていたおっちゃんだ。

 しかも、国から若い男性は徴兵命令が下ったので、自分の息子も借り出されたと泣いていた。 


 そりゃ泣くわ。

 何もいい事が無い。

 この話を聞いて余計に早くカジさんと会わなければと感じた。

 何も力のなかった日本でならこんな事は全く思わなかっただろう私が、神様の加護をもらって粋がっていると言われても、止められるだけの力があると信じて行くしかない。

 辛い結果になっても。


 この日宿を見つけられなかった私たちは、住民街にある小さな公園で野宿をさせてもらった。

 この時は自重してテントを張るだけにとどめた。




 翌朝、商人ギルドへ行くと、ナージンさんから手紙が届いていた。

 今日の昼には到着出来るので、商人ギルドの一室を借りたからそこで待っていてくれと書かれていた。

 流石、用意周到なナージンさん。

 しかし、その部屋に案内してもらい入室すると、私とヒースさんは驚き、オリちゃんはテンション高く喜んだ。

 今までの商人ギルドで借りていた部屋は、会議室のようなシンプルに机と椅子が置いてあるだけの部屋だった。

 だが、目の前の部屋は、ザ・ホテルの一室。

 しかもファビュラスでラグジュアリーな、以前ヤヴォン国でナージンさんが取ってくれた一室と似た雰囲気。


「トコ様、ふっかふかだよ!」

「あ! オリちゃん靴は……ちゃんと脱いでる、エライ」

「ナージン殿はやはり怒っているな」

「やっぱり……」


 ナージンさんは、私が特別扱いされるのが嫌いな事を知っているはず。

 なのに、あからさまに特別な人を迎える時に使う様な部屋を取っている。

 これは、会った瞬間嫌味を言われる気しかしないな……


 その後商人ギルドの職員らしき人が美味しいお茶を人数分入れてくれたり、美味しいお菓子を出してくれたりと至れり尽くせりだった。

 こんないかにも一般庶民と冒険者ですって格好の私たちにも恭しく給仕してくれて、恐縮しきりだったわ。



「ユエさん、ヒース殿、お久しぶりですな! おや、そちらが噂のお嬢さんですか。初めましてナージンと申します」

「オリ、七歳です!」

「ナージン殿、久方ぶりだ」

「……ご無沙汰してます」


 めちゃくちゃいい笑顔で入室して、早速オリちゃんに挨拶するナージンさん。

 オリちゃんがこの大陸の人と話せているのは、私の“予定”スキルで設定しているのもあるが、少しずつヒースさんがこの大陸の共通言語を教えてくれている。

 そして今ナージンさんには、名前と年齢を共通言語で答えたオリちゃん、素晴らしいです。

 私は一番最後に挨拶を返す。

 シラっとした目で。

 同じようにナージンさんからもシラっとした目で見られてる。


「ナージンさん、言いたい事もあると思いますが、まずはどうぞ座って下さい」


 そう言って、ソファにみんなを促す。

 職員さんがナージンさんの分のお茶を出し、部屋を後にするとナージンさんが話し始めた。


「ユエさん、お元気そうで何よりです。神様からのご依頼は完了されたと言う事でしょうか?」

「はい、終わりました! あ、それでお土産が……」


 ナージンさんは、私が神様からのお願いでロッテントークに行っていたのを唯一知っている人だ。

 なので、私がストレージから出したエリクサーを見てナージンさんが「やはり」と呟く。

 そして。


「ユエさん! 貴女は目立ちたく無いと言いますが、行動が伴っていないのです!」


 めっちゃ怒られた。

 このナージンさんの言動により、オリちゃんから殺気が出たらしいんだが、ヒースさんがオリちゃんに大丈夫だからと宥めてくれたと、後で聞いた。

 それ位怒ってらしたナージンさん。

 でも、殺気は全然わからなかったけど。


「そこは申し訳ないと思って、います……でも」

「でもではありませんぞ! カールとカイラが卒倒したぐらいですからな!」

「あ、それは……ごめんなさい」

「しかし、鑑定したとはいえそれもエリクサーなのですか?」


 ナージンさんの問いに、ロッテントークでの世界樹の浄化をした事により、世界樹の葉をもらいエリクサーを作った事。

 私が作ると通常より効果が高く、死亡後十五分以内に摂取すれば蘇生できる事。

 カールさんとカイラさんに渡したものは、状態保存がかけられているから、ピンチの時に使ってくれと伝えた。

 あと、今出した一本はナージンさんの分のお土産ですと言って差し出す。


 一通り何も挟まず聞いてくれていたナージンさんの顔は、赤くなり、青くなり、最後には真っ白になって固まってしまった。


「ユエさんっ!」


 そして、再起動したナージンさんに怒濤の如くお説教を受けた。

 国宝として保管される程貴重な薬をお土産と言って渡してはいけないだとか、しかも、そんな物を渡して何も説明せずいなくなるなんて言語道断だとか、ロッテントークで得た素材を報酬で渡してはいけないとか、見た事もない素材の紙を大勢の人がいる前で出してはいけないとか……

 終いには、カイラさんがあの後ハリオさんに「何故ここにロッテントークの素材があるんだ!」や、「あの方は何者なんだ!」とすごい剣幕で詰め寄られたと嘆かれたんだとまで。


「ぜ、全部知ってる……怖い……」

「これくらいの情報、造作もない!」

「はぃ……」


 ヒィ……

 後半敬語ですらなかった、本当にごめんなさい。



お読みくださりありがとうございます!

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