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予定は確定ースケジュール管理は基本ー  作者: 秋海棠
第七章 対立

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ホームシック



 冒険者ギルドで絡まれそうになったのもあり、いつもは行かない少し高めの食堂に入り、オリちゃんの登録祝いをした。

 色々な種類の料理を頼み、運ばれて来たテーブルいっぱいの料理にオリちゃんは目を輝かせていたし、どれも美味しい美味しいと言ってたくさん食べてくれた。

 好き嫌いをせず口いっぱいに頬張るオリちゃんが可愛くて仕方が無い。

 そして、三人共お腹いっぱいになり、宿に戻った。


 ちなみにグンちゃんは今、自由にどこかを飛び回っているだろう。

 召喚術と言っても、どこかに契約した魔物を閉じ込めているわけではなく、契約者が呼び出しをした際に応じるものらしい。

 遠くに居ても召喚術を使えば直ぐに現れる。

 実に不思議だ。



「あ、ヒースさんもケーキ食べます?」

「ああ、頂こう」


 この後オリちゃんへケーキを振る舞おうと思っていたので、部屋に入る前にヒースさんにも声を掛ける。

 私とオリちゃんの部屋は二人部屋なので、ヒースさんの一人部屋よりも広い。

 備え付けのテーブルに【買い付け】アプリで買っておいたチョコレートケーキワンホールをストレージから取り出す。


「ふわぁ〜! 甘い良い匂い!」

「えっ? 匂う?」

「うん! 甘くて美味しそうな匂いがするよ!」


 流石オリちゃんの嗅覚。

 私にはチョコの匂いが少しするだけで、見た目は確かに美味しそうだが、匂いで甘さを感じる事はできない。


 ケーキを切り分け、お皿に移し二人に渡す。

 ただ、テーブルには椅子が二脚のみなので、オリちゃんがベッドに座り、私とヒースさんが椅子に座る形だ。


「オリちゃん改めて、ギルド登録おめでとう! これからも宜しくね!」

「オリ、試験ご苦労だったな」

「二人ともありがとぉ〜! チャーヨ!」


 そう言ってまた蕩けるような顔をしながらケーキを食べるオリちゃん。

 なんと、残り全てのケーキを食べてしまった。

 あんなにご飯を食べたのに……まあ、今日くらいは良いか。


 それからヒースさんは部屋に戻っていった。

 体に“クリーン”をかけ、私たちも眠りにつこうとなったが。


「トコ様……今日一緒に寝ても良い?」

「オリちゃん……良いよ」


 これまでそんな事を言わなかったオリちゃん。

 私は良いよと言い、オリちゃんと同じベッドで横になる。

 もしかして……


「皆んなと離れて寂しくなった?」

「……うん。昨日までは思わなかったのに……トコ様とヒース様にお祝いされて、思い出しちゃって……」

「会いたい?」

「……会いたいけど、アタシわがまま言っちゃったから……」

「そうだよね、寂しいよね……あっ!」

「トコ様どうしたの?」


 私は起き上がり、椅子にかけておいた鞄からタブレットを取り出す。

 アルバムを起動し、写真を探す。


「あった、あった。オリちゃん実際には会えないけど、写真でなら会えるよ」

「あ……う、ん」


 スマホでも良かったんだけど、大きい方が良いと思ってタブレットで表示した、セージュさんの前でみんなで撮った集合写真。

 ファンさんにバオさん、スーリさんにお世話をしてくれた白ハン族の皆さん、護衛してくれた黒ハン族の皆さん、総勢十三名の真ん中にオリちゃんもいる。

 その画像を見たオリちゃんはポロポロと涙を流す。

 七歳の子が初めて家族と離れて、寂しくない訳ないよね。

 昨日までは見たことが無い物にワクワクしたり、興奮していたかもしれないけど、いざ離れて会えない事を自覚すると寂しさが込み上げてきたのかもしれない。

 ホームシックだな。

 私もこの世界に連れて来られた時、初めて感じたもんね。

 日本にいた時はなんだかんだと同じ国にいるのだから、いつでも会えると思っていたけど、いざもう二度と会えないと思ったら寂しかったし悲しかったのを思い出した。

 

「オリちゃん、この写真明日紙にして渡すね」

「う、ん。トコ様ありがとう」


 そう言って、泣きながら私の腕に抱き付いてきたオリちゃんの力が強いけど、痛みに耐えた私を誰か褒めてほしい。


♢♢♢


「トコ様おはよう!」

「……オリちゃんおはよう」


 清々しい顔をして朝の挨拶をするオリちゃん。

 それとは対照的に、私は少しげっそりしている。

 昨夜あの後、左腕の痛みで寝れず、いつの間にか感覚が無くなり、気絶していた。

 そして今、やはり左腕の感覚がない。

 しかし、ちゃんと私の腕はそこにある。


「……“ヒール”」

 

 じんわり温かくなり、腕に感覚が戻ってくる。

 指先まで動く……ちょっと泣けた。

 もし、今日の夜も同じ体勢だったならば……私の腕は、明日もげているかもしれない。

 

 そんな腕を摩りながら朝の準備をし終え、オリちゃんと食堂に降りた。

 一応ヒースさんの部屋にも声を掛けたけど、応答が無かったのでもしかしたら既に食堂かもと思ったら、案の定彼は食堂のテーブルに着いていた。


「ヒース様おはよう!」

「おはようございます」

「ああ、二人共おはよう」


 それから朝食を三人で取り、今日の予定を話し合う。


 ヒースさんとオリちゃんは、流石に昨日の今日で冒険者ギルドへ行ったら騒ぎになりそうな気がするからと、武器屋へ行く事に。

 ヒースさんは自分でも剣の手入れを毎日しているが、定期的に見てもらう必要があるのと、オリちゃんは自分の武器を探すためだ。

 一応バオさんから槍を預かってはいるが、自分の手に馴染む物を見つけるのも今回の目的としている様なのでヒースさんに同行。


 私はと言うと、二人とは別行動で商人ギルドへ。

 私が所持している武器はワンドだけど、前回ダンジョンでのレベルアップを終えた後、一度メンテナンスに出しているから今回二人とは別行動としたのだ。


 二人と宿で別れ、商人ギルドの受付に顔を出す。

 だが、まだ誰からも連絡は来ていないようだ。

 と言っても二人にしか知らせていないし、その内の一人は別の街だし、もう一人は国のお偉いさん。

 そんなに早く連絡が来る訳ないか。

 しかもナージンさんは他国の情報収集が主な部署だから、もしかしたら今この国にいないのかもしれない。

 前回までのナージさんの連絡の速さが異常だったのだろう。


 何となくナージンさんなら今日の朝には連絡がきていそうな気がしたから商人ギルドに来たけど、時間が余ってしまった。


 どうしよう、買い物でもしようか。

 そうだ、ヨーク国のラミーさんたちサンディス家にお手紙を書こうかな。

 と思ったところで気がついた。

 今まで商人ギルドで言伝をお願いしたりはしてたけど、手紙を出したことが無い。

 しかも、忘れてたけどラミーさんはお貴族様だ。

 そもそもお貴族様向けの手紙の書き方がわからない!

 季節の挨拶?

 回りくどい言い回し?

 知らん!

 あっ、詰みましたね。

 大人しく、ナージンさんから連絡来るまで待てってことかな。


 色々諦め、お昼くらいまでヤヴォン王国王都の散策と必要備品の買い出しをした。

 そして、お昼になりお腹がすいた私は、美味しそうな匂いがする食堂を見つけ、入る事にした。

 中は、四人掛けのテーブルが四つにカウンター席が四席と、こじんまりとしたお店だが、既にカウンターの一席を残し、他は埋まっている状態。

 忙しいのか、カウンター越しの厨房から「らっしゃい! 空いてる席へどーぞー」と声が飛んで来たので、カウンター端の席に座る。


 私は一席空いててラッキーと思いながら、鶏肉のメニューを頼んだ。


「そう言えば、お前明日からメズラム方面に行くって言ってなかったか?」

「ああ、それが?」


 隣に座る男性二人組は知り合いの様だ。

 席が近いからか話は丸聞こえ。

 しかし、メズラムって街かな?


「メズラム側から戻った奴が言ってたんだが、モジンバル帝国が仕掛けてるらしいぞ」

「何っ!? メズラムにか?」

「いや、今はムガド国が攻められてるらしい。次は隣のメズラムじゃ無いかって専らの噂だ」

「何で今更……しかし、まずいな。そこら辺の国じゃ太刀打ち出来ねぇだろ」


 おっと、何だかあまりよろしく無い話の様だ。

 モジンバル帝国ってどこだろう?

 でも話の流れから、その国が戦争を仕掛けてるってことかな?

 戦争……何度聞いても嫌な単語だ。


「それが本当ならメズラム国も危ういじゃねぇか。ちょっと会長に相談するわ」

「その方が良いだろうな。ギルドでも情報を精査してるらしいしな」


 メズラムは国名なのね。

 しかし、メズラム国もモジンバル帝国もこの国からの位置関係が私にはわからない。

 もし、隣接してるならばこの国も危ういのでは無いかと、運ばれてきた料理を食べながら考えた。

 そして、この話を聞いたからか、ナージンさんは今この国にいない気がするな。

 戦争に関する話なら最優先だろうし。

 私も宿に戻ってヒューマニア大陸の地図を見直した方がいいな。


ここまでお読みくださりありがとうございます!

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