オリちゃんのギルド登録
ちょっと前の登場人物なので、少しご紹介。
クリフ君は譲り受けた愛馬。
エンデル街はレベルアップの為に行った、ダンジョンのある街。
エンデル街商人ギルド長のシャーリーさんの愛馬リリーちゃんは、クリフ君の恋人です。
涙涙でバステト様に別れを告げ、歩く事一時間弱。
ヤヴォン国の王都についた。
私とヒースさんはギルド証を持っているが、オリちゃんにはないので真偽を見抜く水晶での検査と入場料を支払った。
オリちゃんは始め検問所で沢山される質問に、とても嫌そうにしていたが、「オリちゃんは初めて会う人をすぐに信用できる?」とか、「これから悪い事をしようとしている人や、悪い事をした人をこの国に入れない為に、確認して守ってくれているんだよ」と言えば、「そっか!」と、すんなり受け入れてくれて、兵士の質問にしっかり答えてくれていた。
門を通るとき、何故かその兵士さんにありがとうと言われたけど、お疲れ様ですとだけ言っておいた。
だって、門番さんて絶対大変な仕事だと思うもんね。
時には貴族と揉めたり、時には賊を見つけて捕らえたり、職務を全うしているだけなのに心無い言葉を言われたり、賄賂を渡してきたりするのかもしれない。
現に今まで私が通って来た門で、揉めている人を見たことがあるし。
どちらが悪いのかはわからないけど。
もしかしたら中には職務怠慢な人もいるかもしれないけど、それでも、真面目に働いてくれていると考えたら、真摯に検問を受けようと思えるよね。
オリちゃんが聞き入れてくれてよかった。
そんなオリちゃんは、現在私のフード付きポンチョを着て、フードを被っている状態。
獣人がいない事はないんだけど、やはり数は少ない。
それにオリちゃんの見た目はかなり目立つので、目をつけられないため被ってもらっている。
王都に入ってから、まず初めに宿の確保をした。
私とオリちゃんは一緒の部屋。
ヒースさんは別だ。
それから二人に許可を取り、商人ギルドでナージンさんへの言伝をお願いした。
これできっと、ナージンさんから何かしらのアクションがあるはずだ。
それと、エンデル街の商人ギルド長シャーリーさんにも。
クリフくんの様子を手紙で知らせてくれると前に言ってくれていたから、今この街にいると言伝をお願いした。
シャーリーさんの名前を出した時、受付の男性の顔色が真っ青になったのは何か理由があるのだろうか?
そんなに怖い人ではなかったと思うんだけど……まあ、確かにリリーちゃんの話になった時の目付きは怖かったけども。
そして今、冒険者ギルドに来ている。
今は二時過ぎなのでギルド内は人が少なく落ち着いている。
「この子のギルド加入手続きをお願いします」
「……かしこまりました。失礼ですが、ご年齢をお伺いできますでしょうか?」
「七歳だよ!」
「私が後見となる」
オリちゃんが元気良く年齢を答え、ヒースさんがギルド証を出しながら続けた。
「……申し訳ありません、当ギルドでは七歳での加入の前例がございませんので少しお待ち頂けますでしょうか」
「わかりました」
そう言って、受付してくれている女性が席を立ち、後ろにある階段を上がっていった。
流石に七歳は幼過ぎるのか、今まで登録した人はいないようだ。
この世界では小さい頃から家の手伝いで仕事を始める子が多いと聞くが、命のやりとりが発生する仕事を任される事は殆ど無いだろう。
それに、いくら小さい頃から鍛えていたとしても、Cランク以上の冒険者が後ろ盾になる程強さを付けるのは現実的ではない気がする。
まあ、魔法が存在する世界だからゼロとは言えないし、現にオリちゃんなんて規格外でレベルが高いんだけどね。
「おい、聞いたか?」
「七つったら、ガキじゃねぇか」
「ガキが登録なんて俺らも舐められたもんだなぁ」
ヤバい、隣の酒場から不穏な声が聞こえる。
これはあれか?
何かのフラグが立ってしまったのか?
「大丈夫だ」
私が酒場の声にソワソワしていたら、ヒースさんがそう声を掛けてくれた。
オリちゃんも特に気にしている様子はなく、私だけが過剰に反応してしまったようだ。
確かに他の冒険者からしたら、命をかけて冒険者という職業をしているのに、七歳の子供がお遊びで登録に来ているのではないかと感じたかもしれない。
でもお遊びでCランク冒険者が簡単に七歳の子の後ろ盾となるだろうか?
よく考えればわかる事だが、なかなか伝わらないのも事実だろう。
「お待たせ致しました。十四歳以下の方のご登録に関しては試験実施が義務となりますので、地下訓練所へご案内致します」
未成年の登録は試験必須なのね。
でも、それは当たり前か、実力もない子供に簡単にはギルド証を発行しないよね。
それにしても、オリちゃんも試験を受ける許可が降りてよかったよ。
三人で受付の女性の後をついて行くと、地下には高さのある体育館ほどの空間が広がっていた。
そこの中央に男性が一人ぽつんと立っている。
「お待たせ致しました、今回の試験を担当する元Bランク冒険者のデラさんです。彼から合格をもらうことが登録の条件となります」
「デラだ。元Bランクで、今はギルドの職員をしている」
「オリ、七歳! よろしく!」
「元気は良いな。では、試験を開始する。俺に力一杯攻撃を仕掛けてこい。勿論スキルを使っても良い」
案内してくれた受付の女性が、中央に立っていた男性を紹介し、その男性もオリちゃんに挨拶をした。
そして、オリちゃんに力一杯攻撃をというが、それはまずい。
(オリちゃん、流石にオリちゃんが力一杯やったら大変な事になるから……ヒースさんオリちゃんはどの位の力を出せば良いです?)
(そうだな、身体強化も使わず、十分の一程の力で殴ると言うのはどうだ?)
私とヒースさんでオリちゃんの耳元で囁く。
ちょっとその光景が、ギルド職員の二人には不可解だったみたいで、不思議そうな顔をしている。
「わかった!」
そんな中オリちゃんはまた元気に答える。
そして、ゆっくりとデラさんの元に向かうオリちゃん。
「じゃ、いくね!」
そう言って、オリちゃんが拳を握った瞬間、私でも分かるほど空気が変わった。
「っ!? ま、まさかっ!? ちょ、ちょっ……」
「おりゃっ!」
デラさんも一瞬でそれを感じ取ったのか、咄嗟に両手を前にクロスして構えて何かを言おうとした次の瞬間、ドフッと言う変な音と共に彼は後方に吹っ飛んでいた。
「へっ?」
「だ、大丈夫かな!?」
「……済まない、私もオリの力を見誤った様だ」
「ヒースさん!!」
受付嬢はその光景に間抜けな声を出し、私は見誤ったと言うヒースさんに叱責の声を飛ばしながら、飛ばされたデラさんが心配でそちらに駆け寄る。
飛ばされたと言っても二、三メートル程だが、もしオリちゃんが本気で殴っていたらと肝が冷えた。
「ッ、ゴホッ、ゴホッ」
「良かった生きてる……」
駆け寄ったデラさんは、倒れたところから起き上がるも、片膝をついて咳をしている始末。
血までは吐いていないけど、右腕は震えているようだ。
「だ、大丈夫ですか? “ヒール“」
「ッ!? 面目ない」
咳をしていたデラさんに慌てて私はヒールをかけると、それにびっくりしながらお礼を言ってくれた。
「もう大丈夫だ、世話になった。しかし……俺も鈍ったもんだ。文句なく合格だ」
「わーい! トコ様やったぁ〜」
「……」
ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶオリちゃんの後ろで、口を開いて驚く受付嬢さんが何ともシュールだ。
それから、デラさんが受付嬢さんを正気に戻し、登録してやれと諭してくれた。
その時にできればオリちゃんの力と、私の聖魔法は内緒にしてくれと伝えてある。
まあ、七歳の子に吹っ飛ばされたと言っても信じてもらえんだろうよと笑ってデラさんは頷いてくれたけど、未だに受付嬢さんは現実を受け止められていないような表情をしていた。
「……お待たせ致しました。こちらがオリ様の仮ギルド証です。これより一年間は必ず、後見のCランク冒険者の方と共に依頼をお受けください。依頼達成など登録されますが、ランクが上がる事はございませんのでご了承下さい」
まだ納得いっていない受付嬢さんが細かく説明してくれる。
どうやら一年間は後見人と一緒に依頼を受ける必要があるし、通常のFランク同様半年間依頼を受けないと登録も抹消されてしまうし、依頼も十回以上達成しなければ登録取り消しとなるそうだ。
一年で下地をしっかり整えろって事ね。
登録料も通常通り銀貨一枚かかったし。
説明と登録をしてくれた受付嬢さんにお礼を言ってギルドを出ようとした時。
「出た後は気をつけろよ」
と、デラさんがお見送り兼忠告をしに来てくれた。
「うん、わかった!」
「デラさん、ありがとうございました」
説明を受けている間、まさか七歳の子が受かるとは思っていない他の冒険者たちの視線が痛かったからね。
そりゃ嫌な予感はしますよ。
デラさんにお礼を言い、ギルドから出る前にオリちゃんと手を繋ぎ、ヒースさんの服を掴む。
そしてギルドから出た瞬間、私は“隠匿操作”で気配を絶った。
後ろの方で「おい! あいつらどこにいった!?」とか、「お前はあっち探せ!」とか聞こえて来たけど無視無視。
デラさんに言われた通り気をつけた結果、絡まれずに済みました!
事を荒立てないに越した事は無いからね。
よし、ちょっと時間的には早いけど、オリちゃんの登録祝いで美味しいものを食べに行こう!
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