天使は激強!?
もう少しでロッテントークを離れます!
漸く『万能薬(極)』を百二十本作成し、未奉納だった五十本をセージュさんへ奉納した。
前回奉納した時もビックリしたけど、根の部分がパカッと開き、空洞が出現したのだ。
子供から大人まで大好きな、大きな森の精霊が出るアニメ映画の根の様な雰囲気。
そっとそこに残りの五十本を置くと、根が元通りになる。
『ありがとう。これで何万年かは問題ないと思うわ』
「そんなに!?」
『私も毎日浄化しているし、ハン族がこれからも手伝ってくれるでしょうから心配いらないわ』
「そ、そうですよね。お役に立てて本当に良かったです」
『それにしても、もうすぐ行ってしまうのね? 寂しくなるわ……』
本当に寂しそうに聞こえる。
それがちょっと嬉しい。
「私も寂しいです。でも、加護ももらいましたから、セージュさんを身近に感じられますし、ヒースさんが撮った写真もありますし!」
『ふふふ、そうね。加護を与えた者の状況はわかるから、何かあったらこの枝に念じて』
そう言って一部の根が動き、私に小枝を差し出した。
「えっ!? 枝ですか!? まさか、折ってないですよね!?」
『ふふ、大丈夫よ。貴女に悪さをする様な奴がいたら、根こそぎ魔力を奪ってやるわ!』
「アハハハ、ありがとうございます大事にします」
『私もこのシャシン? とやらを大事にするわ。状態保存もかけているし』
ヒースさんへお願いして私とセージュさんを撮ってもらっていた。
それを業務用印刷機でA1サイズに印刷し、セージュさんに渡している。
日本の職場で購入した事のある備品だったから、【買い付け】アプリに出てきてくれて本当に感謝した。
何故か本部の備品なのに私が探して稟議上げてとやらされたけど、今はあの時やらされて良かったと思ったわ。
業務用印刷機から、特大の写真が出てくるのを見たヒースさんのあの興奮した顔も忘れない。
キラキラした目をした少年だった。
そして、私の写っていないセージュさんだけの全体写真もA1で十部印刷してあり、セージュさんに状態保存の魔法もかけてもらった。
一部はファンさん達ハン族の皆さんにお渡ししてある。
この大きい写真を見て、皆さんしきりに驚いていた光景も忘れられない。
あまりにも実物に忠実だからね。
ヒースさんの腕前はもはやプロではないかと思う。
「この世界の大陸を周って、セージュさんの布教を終えたらまた来て良いですか?」
『もちろんよ! そうしたらまたいっぱい作ってね!』
「ハハハっ! はいっ!」
セージュさんとそんな話をし、最後に浄化をかけ、屋敷に戻った。
♢♢♢
セージュさんが渡してくれた枝で思い出したけど、この大陸に来た時に襲われたエルダートレントを、バオさんに渡してなかった。
きっと何かの素材として使えるだろうと、倒した全てのトレントもまだストレージの中だ。
「ヒースさん、忘れてましたけど、エルダートレントとトレントって何かの素材になります?」
「そう言えば忘れていたな。もちろん武具や防具にも、家屋や家具の素材としても一級品だ。それにこの大陸の魔物は通常より遥かに強い。強度も上がっているだろうから希少価値は高いな」
「ほぉぉ……じゃ、トレントの素材だけ少しもらえるかバオさんに聞いてみます」
「バオ殿なら恐縮して全て持っていけと言いそうだがな」
「ああ、確かに。でも倒してくれたのはバオさん達ですしね」
そんな話をヒースさんとし、その日屋敷に来たバオさんに聞いてみた。
「私共の事はお気になさらず、全てお持ち頂いて問題ないですよ」
「えっ、いやぁ、私たち倒して無いですし……それに屋敷まで建ててもらってしまったので、これは受け取ってください! それで可能ならトレント一体下さい!」
「しかし……」
「私は定住する予定が今の所ないので、これだけあっても困りますから、よければ引き取って欲しいです」
そう言って目の前のエルダートレントとトレントの死骸達に目をやる。
「トウコ様がそう仰るのであれば……でしたら、エルダートレント一体をお持ち下さい。私共はこのトレントを頂きます」
「エルダートレントは良いんですか?」
「ええ。それにこれからも私達は狩りが出来ますから」
「そうか……ではお言葉に甘えて」
バオさんの言葉に甘え、エルダートレントを仕舞う。
そして、今は世界樹の元なので、十二体もあるトレントの死骸は一旦また私のストレージに仕舞い、ロッテントークを離れる前に里で出す事になった。
「トコ様、さよならなの?」
そんなバオさんとのやり取りを聞いていたオリちゃんが、悲しげな声と顔をして私の元に駆け寄ってきた。
うっ、その潤んだ瞳は反則ですやん。
「うっ、うん、そうなの……」
「ヤだ! トコ様行かないで! 一緒にお薬作ろう?」
だから、その純粋な目で見つめないでくれ!
「オリ、トウコ様を困らせてはいけません」
そう優しくスーリさんがオリちゃんに声をかける。
すると、オリちゃんが私の腰に手を回して抱き着き、泣き出してしまった。
その泣き声は非常に切なく、私の胸を締め付ける。
ん?
いや、胸よりも物理的に腰回りが締め付けられてるんだが?
痛いのは気のせいか?
「イタ、痛い? ご、ごめんね、オリちゃん。また絶対来るから!」
「ヒッ、ヒッ、また……ヒッ、来る?」
「うん! 絶対!」
「……なら……アタシもトコ様についてく!」
「「「はあ?」」」
「ふむ、なるほど……」
私、バオさん、スーリさんの声が重なった。
そして、ファンさんはなるほどと言いながら何やら思案中。
「いやいや、危ないし! オリちゃんはハン族の次代長でしょ! ダメでしょ!」
「そうよオリ、まだまだ学ぶ事があるでしょう」
「何を言っているんだオリ! 良い加減にしなさい!!」
スーリさんには粛々と諭され、バオさんにキツく怒られるオリちゃんだが、耳に入っていないようで、覚悟を決めた様な目を私に向けてくる。
心なしか腰の締め付けは緩くなった?
「ふむ、それも良いかもしれないですね。しかし、トウコ様にご迷惑を掛ける事だけはなりませんよ」
「えっ、長、何を仰ってるのでしょうか?」
「次代の長として、見聞を広げる事も重要だと思うのですよ」
「そうだよ! 長の言う通りだよ!」
ファンさんの話に乗っかるオリちゃん。
意味がわからない。
オリちゃんはまだ七歳ですよ?
「あのぉ、そもそもオリちゃんはまだ七歳ですよ? 逸れてしまったら責任取れないですし、攫われたりしたら危ないでしょう!」
そう私が言うと。
「いえ、その心配はしておりません」
「他の大陸の常識が心配ですが……」
バオさんとスーリさんが同時に言った。
「えっ?」
「ユエ、オリは私よりも強いぞ? そして恐らくナージン殿よりも……」
「はっ?」
「失礼ではありますが、ヒース様より武力では上と存じます」
ファンさんがサラッと仰った。
えっ?
七歳のこんな可憐な子がヒースさんやナージンさんより強いの?
冗談でしょ?
いや、確かにさっき抱きつかれた時の痛みは、七歳の力じゃないと思ったけど……
「冗談……じゃない? オリちゃん鑑定しても良い?」
「うん! 良いよ!」
▽▽▽
名前 :オリ
職業 :預言者(未継承)
レベル :154
HP :5,315/5,360
MP :5,620/5,910
スキル :槍術・体術・召喚術・無魔法・聖魔法・身体強化・気配察知
ユニーク:
その他 :次代ハン族長
△△△
「強っ!! 次代長は伊達じゃない……」
「アタシ自分の身は自分で守れるよ! ねっ、お父さん!」
「あ、ああ、まだまだ未熟ではあるが、狩やある程度身を守る術は教えているからな……いや、そうではない!」
「そうよ、寂しいでしょう……」
「えっ、スーリさんはそっち?」
なんだか今の状況がまた理解できないんだけど。
「瘴気がこの大陸を覆う前までは、他大陸へ渡った者もおりましたが、ここ何百年かの記録では、世界樹の浄化、種族の存続を優先し、大陸を出た者はおりませんでした。トウコ様のお力により世界樹も浄化され、我々の生活にも明かりが灯りました。ですので、これからはより長くこのハン族を維持できる様、様々な視点を用いる事が必要ではと感じております」
「は、はぁ……それは理解します。でも……」
「トコ様お願い! 迷惑掛けないようにするし、自分の事は自分でするし、お手伝いもするから! 里には自分で帰るから!」
「えぇぇ……」
「オ、オリが変な奴を連れて来たら……やるか……」
オリちゃんの圧が強い。
そしてバオさんからも違う意味の圧を感じる。
「オリ、自分で帰るとは?」
そんな中、ヒースさんはそこが疑問だったみたい。
「グンちゃんに乗って帰ってくる!」
「グンとは?」
「グリフォンのグンちゃん!」
「グ、グリフォンッ!?」
ん?
グリフォンってなんだろう?
聞いた事ないけど、ヒースさんは驚いている。
「グリフォン?」
「ああ、グリフォンとは空を飛ぶ魔物なのだが、個体数が極めて少ない為私は見た事がない。そして、獰猛かつ自尊心の高い魔物であると聞いた事がある……オリは手懐けているのか?」
「うん! グンちゃんは可愛いよ!」
「グリフォンをグンちゃんと……」
ここ最近ヒースさんの驚く顔をよく見れている気がする。
グリフォンはそんなに凄い生物なのか。
「って、移動手段の話ではなくて、オリちゃん本当についてくるの? 危ないかもしれないし、もしかしたら差別だってあるかもしれないんだよ?」
「さべつって何?」
「私とオリちゃんは違う種族でしょう? それをよく思わない人が中にはいるの。心無い言葉を言われるかもしれない。終いにはそれを理由に意地悪をしようとする人も出てくるかもしれない。ここにいればそんな思いはしないよ?」
「うーん、よく分からないけど、アタシはアタシだから大丈夫だよ!」
やばい、なんて真っ直ぐな瞳なんだ。
でも、もしオリちゃんにちょっかいをかけてくる貴族とか宗教団体がいたらと思うと……心配だ。
その後ファンさんに、それも含め経験になるとか、オリちゃんはフェーリアやヒューマニアでなら強い部類に入るから、私の護衛として是非とかグイグイ言われた。
しかし、こんな可愛い護衛がいるか!?
強いのも実際見ていないから実感ないし……
それに、両親のバオさんとスーリさんが反対するだろうとそっちを見たけど、ファンさんの決定には絶対服従なのか、目線でノーと言わせなかったファンさん。
その目線を受け、二人は小さな声で「御意……」って言ってた。
結局、私もオリちゃん大好きだし離れる寂しさもあったし、ファンさんに恩を返させてほしいと言われ、いつのまにか「はい」と言ってしまった。
押しに弱い自覚はある。
だから、聖女とか賢者の職を手に出来なかったんだろうしね。
はぁ、何事もないと良いな……
ここまでお読み下さりありがとうございます!
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なのに、コンスタントに更新できず申し訳ないです。。
精進します。。




