万能薬(極)って……?
仕事の早いハン族の皆さんにより、整えられた離れで万能薬を調合する事五日。
「……出来た……のかな?」
「トコ様、キレイだね!」
私とオリちゃんの手には、光り輝く液体の入った瓶が握られている。
「製法をお教えしてから五日で完成とは、素晴らしいです」
そう言ったのは万能薬の製法を教えてくれたスーリさんだ。
ハン族に伝わる万能薬の製法はなかなかに難しかった。
そもそも空気中の水分量や気温を測る機械なんかもないから、手探りで前回の二瓶を完成させたらしい。
その記録はもちろん取っているけど、同じ状況を作り出す事は簡単では無かった。
暖炉の火を調節し室内温度を十二度程にし部屋を乾燥させ、不純物の少ない精製水を沸騰させ、そこに世界樹の葉を丸々入れる。
世界樹の葉の色が抜けたら葉を取り出し、熱を冷ます。
そこから弱火にかけ聖属性の魔力を一定量流し続けながらかき混ぜる。
簡単な様で、とても集中力のいる作業だ。
世界樹の浄化後にこの作業をしたのはかなりしんどかったです。
もちろん休憩して魔力が少し戻ってきてから作業させてもらっていたけど、日に何回も魔力欠乏になるのはしんどいよ。
しかも一定量流しながらかき混ぜるって、同時進行が苦手な私に取っては苦行でした。
それでも隣で頑張るオリちゃんを見ていたら、自分も頑張らざるを得ないなと思ったし、火の調整や部屋の室温管理は常に白ハン族の人が行ってくれていたので、弱音を吐く事なんて出来ない。
オリちゃんは昨日のうちに一瓶完成させていたからスゴいよ。
「トコ様のはアタシのより色が薄いしキラキラしたのが多いね!」
そう、前回ファンさんに貰った万能薬やオリちゃんの完成した万能薬よりも色が薄いのだ。
ほぼ透明で水か? と思ってしまうくらい。
だけど、キラキラ感がすごいし、念の為簡易鑑定してみたら『万能薬(極)』と出たのだ。
はい、ビックリ。
なんだ極って。
カマック様の加護のおかげか?
オリちゃんの作った万能薬を鑑定したら普通に『万能薬』って表示だった。
『万能薬(極)』を詳しく鑑定してみたら……
▽▽▽
品名:万能薬(極)
効能:生命力全回復、部位欠損修復、毒無効化、呪詛無効化、体内環境正常化、蘇生(死亡から十五分以内)
備考:生命活動終了から十五分以内に同薬を摂取する事で蘇生可能。
△△△
「ヒェェェ……なんじゃ、これ……」
恐ろしい文言が並ぶ鑑定結果。
「トコ様、どしたの?」
「如何されましたか?」
オリちゃんとスーリさんに聞かれる。
これはどう答えたものか……
ちなみにオリちゃんの万能薬は。
▽▽▽
品名:万能薬
効能:生命力全回復、部位欠損修復、毒無効化、呪詛無効化
備考:死亡時は効果なし
△△△
うん、これだけでもすごいのに極みの後では驚きが薄い。
「いやぁ……鑑定してみたら……スゴくてビックリして……」
「どのような鑑定結果でしょうか?」
万能薬の製法を教えてもらってるのに、効能を言わないのも失礼かなと思って、正直に話した。
「トコ様スゴイッ! スゴイ!!」
「「「……」」」
オリちゃんはぴょんぴょん私の周りを跳ねながらスゴイと言ってくれたが、スーリさんと手伝ってくれていた白ハン族の人たちは空いた口が塞がらないし、目が飛び出そうだ。
あまり動じる事の無さそうなスーリさんの驚いた顔は、失礼だが少し面白かった。
「あ、あのぉ……」
「はっ、失礼致しました。この事を長へ伝ても宜しいでしょうか?」
「はい、全然良いです」
まさか制限はあるものの蘇生まで出来る万能薬を作ってしまうとは、恐るべし創造神様、商業神様の加護だ。
今度これ持ってお供えしにいった方が良いかな?
それから、報告を聞いたファンさんが駆け付けて素晴らしい素晴らしいとまた泣かれ、その『万能薬(極)』を譲ると言ったらフリーズされてしまい、正気を取り戻したファンさんに通常の万能薬十本と交換と提案され、その条件を飲んだりと慌ただしかった。
この事をヒースさんに伝えたら、普段驚かないヒースさんもフリーズしていたから面白かった。
『万能薬(極)』の騒動から二日経ち、万能薬生成にも慣れ、生成する為の環境も自分で“予定”スキルへ入力し、整えることができる様になった。
これはちょっと反則技だけど、白ハン族の方達にずっと環境維持させているのも申し訳なかったし、自分のペースで作りたかったから、そこはお願いした。
そして、昨日作った『万能薬(極)』を持って日課の世界樹さんの元にきた。
「セージュさん、おはようございます」
『おはよう』
このセージュとは、私が勝手に世界樹さんに付けた名前だ。
世界樹さんと言うよりもっと親しく呼びたくて、聞いてみたら好きにどうぞ〜と言ってくれたので、今はセージュさんと呼ばせてもらっている。
「今日は、浄化の前にご報告があります」
『なぁに?』
「これ、漸く安定して万能薬が作れる様になりました!」
『あら、綺麗ねぇ』
「どうやら私が作ると、通常の万能薬よりも効果が高いみたいで。セージュさんの葉を頂いて出来た物なので、セージュさんに奉納をと」
『ふふふ、奉納って。私は神ではないのよ? ただ長生きなだけで』
「いえ、もはや神です。それにセージュさんが居なかったらこの世界はもうなくなってたでしょうし、セージュさんの葉が無ければこれは完成しませんでしたし」
『長生きするものね。ありがとう』
「では、かけさせて頂きます!」
何かの儀式のように、私は自分自身に【クリーン】をかけ、万能薬の瓶の蓋を開け、液体をセージュさんの根に掛けた。
『あら、あら、まぁ、まぁ!』
万能薬をかけた根から眩い光が溢れ出し、その光はセージュさんの幹全体を照らし、上へと昇って行った。
「……えっ、すごっ」
『ちょっとトウコ! この薬ヤバいわ! 癖になっちゃう!』
私がいつもヤバいヤバいと口にしていたから、セージュさんもその言葉を覚えてしまった。
しかし、癖になるとはどう言うことだ?
ちょっとやらしいぞ?
「えっ? 何、どう言うこと?」
『トウコのお陰で大分浄化されていたけど、私の中で残っていた瘴気も今ので吹っ飛んでったわ!』
「えっ、マジで?」
『マジよ、マジ! とっても気持ちが良かったし』
マジまで覚えてしまってたか。
せめて漢字の“本気”なら良いけど、そんなニュアンスじゃないよね。
「万能薬(極)ヤバいですね……」
『ええ、これはヤバいわ! ねえ、私の浄化を終えたらヒューマニアに帰るって言ってたわよね? 暫くここでその万能薬(極)を作って残しておいてくれない?』
「えっ、でもこれって日持ちするんですか?」
『そこは私が状態保存の魔法をかけるから、心配いらないわ』
「なんですかその魔法……それもヤバいですよ?」
『それに比べたらなんて事ないわよ』
いや、状態保存出来るなんて聞いたことないし。
そんな魔法あったら、掃除とかしなくて良いじゃん!
セージュさんしか知らない魔法かもだけど。
ちょっと聞きたかったけど、私には“予定”スキル様がいらっしゃるので、これ以上贅沢はいかん。
聞かないでおいた。
♢♢♢
「はぁ……バステト様にお会いしたい……」
「ヒューマニアへ戻る際に会えるだろう?」
「そうですけど……」
セージュさんが完全に浄化されてから色々あった。
既にこの大陸を覆っていた瘴気はセージュさんにより吸収され、陽の光が入る様になっている。
それにより、植物や作物も息を吹き返し、水も浄化されつつある。
ハン族の皆さんの生活も良い方向に進んでいるそうだ。
そして、私が作った『万能薬(極)』はセージュさんにもかなり効力があり、正気を失う前にかけるようにするから百本作ってと軽く言われてしまった。
そうすると、当初の一月では全く時間が足りず、バステト様を拘束してしまうことになる。
それをバステト様に話したら、仕事もあるのでその間神界に戻ると仰ったのだ。
そうなると、ヒースさんがここでは暮らせないとなる。
困ったぁ、って話をしていたら。
『じゃあ、私が加護をつければ良いじゃない?』
って、セージュさんがヒースさんに加護を与えていた。
神でないのに加護って付けられるの? って聞いたら容易いわって。
ついでに付けとくって言って何故か私にもセージュさんの加護が与えられた。
加護の大盤振る舞いや。
加護もそうだけど、やはりセージュさんは神に近い存在だよね。
それにより、ヒースさんもバステト様がいらっしゃらなくても瘴気に耐えられる体となった。
“予定”スキルでヒースさんが瘴気に侵されても大丈夫なようにしていたけど、加護をもらえるならそれほど安心な事はない。
なので、私の“予定”で組んだヒースさんの瘴気払いもオフにした。
そして、バステト様が神界に帰られて一月経つ。
今現在バステト様シックに陥っている私だ。
「トコ様グリグリして良いよ?」
「っ!? オリちゃん!!」
癒しがここにいた。
天使のオリちゃんが。
控えめにオリちゃんの頭を撫でさせてもらい、癒しをもらって復活。
始めのうちは日に一本が限界だったが、今では日に四本『万能薬(極)』を作成できる様になった。
そして今現在八十四本完成した。
五十本出来たタイミングで先にそれだけ奉納は済んでいる。
セージュさんには百本お願いされているが、自分の分もいくつか欲しいから、百二十本を目標に頑張っている。
毎日セージュさんから落ちる葉をストックさせてもらっているから、この大陸から出ても作る事はできるけど、いざと言う時に完成品が無くて後悔したくないし。
今日も、隣で頑張るオリちゃんと共に『万能薬(極)』の作成に励む。
評価、ブックマークして下さりモチベーションがかなり上がりました!!
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