次代の預言者が可愛い
世界樹さんと初めて会話をした日から八日、浄化を初めて十九日目、今日も世界樹さんと他愛の無い話をし、浄化を終え用意してくれた屋敷に戻ると。
「トコ様、こんちは!」
「こらっ、オリ! トウコ様だと何度言わすのだ! それと気安いぞ!」
「ハハハ、バオさん問題ないですよ。オリちゃん、こんにちは」
笑顔で私の元に駆けてきてそう言ったのは、バオさんのお子さんのオリちゃん七歳。
オリちゃんの後ろから来たバオさんがオリちゃんを怒っているが、バオさん達もオリちゃんぐらい気安いと嬉しいのだがと心の中で思う。
そんなオリちゃんは、なんとバオさんとスーリさんのお嬢さんなのだ。
私の勝手な思い込みで、白ハン族の人は白ハン族の人と、黒ハン族の人は黒ハン族の人結婚するのかと思ってたけど、そんな決まりは無いそうだ。
結果的に同族で結婚する人が多い様だけど、他族同士で結びついた家も何組かあるんだって。
しかも、“預言者“の職は黒と白の二族で結ばれた子に現れるんだと。
そして、オリちゃんが次代の預言者だそうだ。
そんなオリちゃんの容姿はファンさんの容姿と似ている。
左右で違う白と黒の毛色に、輝くような金色の瞳。
ただ、まだ小さいからか、美人というよりも溌剌さがある可愛らしさの際立つ美少女だ。
そう言えば、ファンさんとオリちゃんの金色の瞳はカマック様の色に近いなと思い出した。
流石、神様の声を聞くことができる“預言者”の職を持った人達。
容姿が並はずれて美しい。
私も一応神様の加護を頂いているのに、容姿には全く反映されていない悲しさ。
良いんだけどさ!
「トコ様! 今日もお疲れ様です! 世界樹様がとてもイキイキしてるからアタシも嬉しい!」
「オリッ! トウコ様毎度の事ですが、申し訳ございません」
「バオさん本当全然気にしてませんから」
オリちゃんは、世界樹さんと初めて会話をした翌日、バオさんとスーリさんに次代の“預言者”であると紹介する為連れられてきた。
その時から何故か懐いてくれているのは非常に嬉しい。
それから三日に一回のハン族のお世話になる日は、いつも来てくれる様になった。
ファンさんのサラサラな毛並みとは違い、フワフワした毛並みがとても可愛くて、良く撫でさせて貰っている。
「ヒース様、バステちゃんもこんちは!」
「今日は」
「にゃ〜」
隣にいるヒースさんとバステト様にもちゃんと挨拶の出来るオリちゃん。
トウコと言う名前が発音しずらいらしくトコになってしまうのも含め、控えめに言ってこの美少女完璧じゃない?
世界樹さんと初めて会話をした翌日、オリちゃんを紹介されたときに世界樹さんと会話ができる様になった事は皆さんに伝えている。
ファンさんは、代々“預言者”に受け継がれる話の中で、数百年前までは世界樹と会話ができていた事を聞かされていたそうだ。
会話が出来るまで浄化されていることに感動し、綺麗な涙を一筋流しながら感謝されてしまった。
私だけの力では無いのだけれど、どういたしましてと言った。
私の総魔力量も日々増えていき、一度に浄化できる範囲も広がっている。
そのお陰か、世界樹さんの枝から落ちてくる浄化された葉っぱも数が増えていた。
「トウコ様、漸く、漸く出来上がりました」
その日の夕食を食べ終え、お茶を皆んなで飲んでいた時、そうファンさんが話しを切り出した。
何事かと尋ねると。
「万能薬でございます。漸く二瓶完成致しました。こちらでございます」
そう言って懐から出したのは、透明に近い薄緑色をし、黄金色の光を纏う液体の入った小瓶だ。
「キレイ……キラキラしてますね。これが万能薬……」
「はい。こちらをお納め下さい」
「へっ!? いやいやいや、戴けません! これはハン族の皆さんが頑張った結果ですよね? 皆さんのもしもの場合に使って下さい」
「とんでもない! こちらはトウコ様がお納め下さい」
「いやいや__」
「いえいえ__」
前にも同じ様なやりとりをしたなと思いながらも、タダで戴く訳にいかない私と、なんとしても私に渡したいファンさんとの攻防。
「では、こうしてはどうだ?」
そこにまたしてもヒース神の助言。
今回の一瓶は私が貰い受け、残り一瓶はハン族へ。
そして今後作ったものは全てハン族の物とし、私は作成方法を聞いて自分で作ってはどうかと提案してくれた。
丁度世界樹さんの浄化にも慣れ、午後の時間を持て余す日も増えてきた。
それなら一緒に作ってみても良いのではと。
「えっ? でも、作成方法って聞いても良いんでしょうか? 普通秘匿するものですよね?」
「トウコ様へ秘匿するなどあり得ません。喜んで開示させて頂きます。そして、私共の製法は聖属性に適正のある者に限られる上、気温や空気中の水分量にも影響され、毎度成功するとも限りませんし、前提として世界樹の葉がなければこの製法は叶いません」
「あっ、そうか。でも……もし断りづらいとかあったら断って頂いて構いませんからね!」
「私共に気を掛けて頂き、望外の喜びで御座います。その様な思いは一切ございませんので、ご安心下さいませ」
うーん、本当にいいのかなぁ?
「ユエ、我々の国では遠慮し過ぎるのも失礼に当たるのだ。今回はファン殿の意向を汲む事も必要と感じるぞ」
「そ、そうか……」
納得いっていないのが顔に出たのか、ヒースさんに言われてしまった。
確かに何でもかんでも遠慮して断ってたら、それはそれで失礼か。
って、ヒースさんが提案してくれなければ、製法を教えるなんて話にはならなかったんだけど……
でも、そう提案しなければ、私とファンさんはお互い譲らなかっただろうなとは思う。
一瞬どの口が言うんだと思ってしまった自分を反省したい。
それに、教えてくれて自分で作れる様になるならそれに越した事はないか。
「ファンさん、お言葉に甘えても良いでしょうか?」
「勿論で御座います」
嬉しそうなファンさんの顔を見たら、これで良かったのだと思えた。
「ヒースさん、ありがとうございます」
「いや、余計な事を言ってしまっていたら済まなかったな」
「いえ、ヒースさんにはいつも感謝しかないですよ」
「ハイッハイッ!! アタシもトコ様と作りたい!」
私がヒースさんに感謝を言っていると、左手を上げて一緒に作りたいとオリちゃんが言い出した。
「そうですね、オリにも次代の長として学ぶ必要がありますね。トウコ様、オリも共に宜しいでしょうか?」
「構いません。むしろウェルカムです!」
「うぇ、うぇるか……?」
「あっ、ごめんなさい、こっちの話ですっ」
ファンさん達にウェルカムが通じなかった。
そんな話をした翌日の正午頃。
今日も世界樹さんの浄化を終え、屋敷に戻ってくると、既に昼食の準備がされていた。
「あれ? 今日はお世話の日ではないですよね?」
「はい。ですが、早速本日より万能薬の製造を開始出来ればと思いまして、準備させて頂きました」
そうスーリさんが配膳しながら言った。
翌日から早速とは、動きが早いですね皆さん。
てっきり準備とかあると思ったから二、三日後かなと思ってた私は仕事ができない典型だね。
「トコ様、頑張ろうね!」
「うん!」
スーリさんはバオさん程オリちゃんには注意しない。
のびのび育てている感じが伺えてちょっとホッコリする。
それから、昼食を食べ終え案内された屋敷の離れ。
十畳ほどのその部屋にはいろいろな器具が揃えられていた。
しかし、ハン族の人のお世話を受けない日は自分で屋敷の掃除とかしてたけど、こんな離れあったかな?
「……こんな所ありましたっけ?」
「昨日よりトウコ様が浄化されていらっしゃる間に整えました」
「仕事が早すぎるっ!!」
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