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予定は確定ースケジュール管理は基本ー  作者: 秋海棠
第六章 ロッテントーク大陸
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世界樹は葉も巨大


 私の瞼の上をテシテシと何かが叩いている。

 実家で飼っていた猫が、餌を欲しがるときに寝ている私を起こす動作によく似ている気がする。


「……ゃぁ……にゃ……」


 ん?

 聞き慣れた猫の声がするし、このテシテシしてくる感触……


「バステト様!?」


 目を開けガバッと起き上がると、私の枕元に見覚えのある愛くるしい黒猫様がいらっしゃった。


「にゃぁ〜」

「バステト様! お会いしたかったです!!」


 一日と数時間だがバステト様養分が足りていなかった私は、無礼も顧みず抱きしめてしまった。


「にゃ! にゃ!」


 何だか、離すの! 的な事をおっしゃっていそうな雰囲気を感じ、すぐさま膝の上に下ろす。

 

「起きたか。大丈夫か?」

「ん!? あっ、ヒースさん。お帰りなさい? いや違うな、いらっしゃい?」

「にゃぁ〜、にゃぁ〜」

「私達も先ほど着いたのだが、バステト神がユエの部屋に入れろと扉を掻くのでな。入らせて貰ったが問題ないか?」

「に“ゃ!!」

「あっ、バステト様すみません! ご飯ですか? お茶ですか? 温かい方です?」


 バステト様の鳴き声に反応していないと怒られてしまった。

 バステト様はお茶とご飯をご所望の様だ。

 ちょっとまだ魔力不足で頭がクラクラするが、急ぎお茶とシチューとパン、串焼き類をストレージから出して、ヒースさんに机へ運んでもらった。

 ヒースさんへもホットのお茶を渡す。

 美味しそうに召し上がるバステト様は眼福だ。


 私はベッドに入ったまま、ヒースさんは部屋に置かれたソファに座り話の続きをした。


「体は大丈夫か?」

「はい、ちょっとまだクラクラしますが」

「ご苦労だったな」

「いえ。あっ、私どの位気絶してたんだろう」


 洋服は朝着ていたもので、ポケットに入れたままだったスマホを取り出す。

 今の時間は十三時二十二分だった。

 恐らく五時間以上気絶していた事になる。

 ワンド国でスーに魔法を教わっていた時何度か気絶していたけど、これほど長くは気絶していなかったと思う。

 まあ、叩き起こされていたからなのかもしれないが。


 でも、それ程までに世界樹に私の魔力を搾り取られたって事なのかな?

 いや、搾り取られてって表現がおかしいかもしれないが、自分で止めることが出来なかったのだ、そう思っても仕方がない。

 

「結構気絶していたみたいです……」

「ああ、その様だな。ハン族の皆が心配していたぞ」

「申し訳ないですね……でも、勘違いかもしれませんが、浄化をした時私の魔力を世界樹が吸い取る様な感じがしたんです。途中で止めようと思ってたのに、止められず気絶しちゃいました」

「何? 危険を感じる程か?」

「いえ、嫌な感じではなかったと思います。後でファンさん達にも聞いてみようと思います」

「そうだな。それが良いだろう。明日もし、危険を感じたのなら一時取り止める事を考えた方が良いだろう」

「うーん、大丈夫だとは思いますが、もしまた吸われる様な感じがあったら叫びますから、その時は引き剥がしてもらえますか?」

「承知した」


 ヒースさんに承諾してもらい、その後はヒースさんがここへたどり着くまでの話を聞いていた。

 バステト様は既にお食事を終え、ヒースさんの横でスヤスヤ。

 

 すると、扉がノックされスーリさんから声が掛かった。

 起きた旨を伝えると、ファンさんを呼んでくると扉越しに言って遠ざかる足音が聞こえた。


 暫くしてまた扉がノックされ、入室を許可すると、ファンさん、バオさん、スーリさんが部屋に入ってきた。

 ん?

 バオさんの後ろに何かある?


「トウコ様! ご体調は如何でしょうか!?」

「あ、ああ……」


 おお、いきなり近くまでグイッとくるファンさんにちょっと引き気味な私。


「ファン様、トウコ様が驚かれております。少し距離をお取り下さい」


 すかざす察したスーリさんが一声掛けてくれた。

 出来る女や。


「失礼致しました。ご体調は如何でしょうか?」

「え、ええ、少しクラクラする位で大丈夫です。ご心配お掛けしました」

「勿体なきお言葉、恐縮でございます。万全なご体調ではない様ですので、こちらに食事をお運び致しましょうか?」


 ファンさんが気を遣って食事を部屋で取れるよう提案してくれた。


「あっ、そうしてもらえると嬉しいです」

「かしこまりました。では、私は申し伝えますので失礼致します」


 そう言ってスーリさんが部屋を出て行った。

 

「トウコ様の浄化魔法は見事でございました。こちらをご覧下さい」


 そうファンさんが言って、後ろに控えていたバオさんが私に差し出してきたのは、三枚の葉。

 しかしただの葉ではない。

 一枚一枚が巨大で、小さな子供くらいなら隠してしまいそうな程大きい。

 葉の色は鮮やかな緑色だが、その輪郭に沿って金色の光を放ちキラキラしている。


「おおぉぉ……なんか綺麗……」


 さっきバオさんの後ろに違和感を感じたのはこれか。

 語彙力の乏しさは無視してほしい。


「これは世界樹の葉でございます。これ程までに瑞々しく光を放つ葉を私は見たことがございません。今まではこの様に枯れたものが落ちて来るのみでございました」


 そう言って見せてくれたのは、先ほどの葉と同じ大きさではあるが、薄茶の枯れた色をしていた。

 あまりに違い過ぎる。


「元々世界樹の葉はあまり落ちてはまいりません。落ちたとしても私共は枯れたものしか見たことがございませんでした。ですが、トウコ様が浄化を行った後、見る見るうちに世界樹は色を取り戻し、葉を散らしたのです。葉を手にした際、体に力が漲るのを感じました」


 えっ?

 葉を触っただけで力が漲るってヤバくない?

 むしろ大丈夫?

 でも、触っただけでってのもちょっと気になるよね?


「あの、触ってみても良いですか?」

「勿論でございます」


 そうファンさんが言って、バオさんに手渡された。


「お、おぉぉ?」

「ユエ、大丈夫か?」

「なんかよくわからないけど、確かに力が漲る気がします!!」


 なんだこれは、力が漲るなんて生まれて初めて感じたぞ?

 自分を鑑定してみたけど、HPはMAX、MPは減ったまま。

 魔力が戻るわけではないようだ。

 でも、今ならフルマラソンいけそうなぐらい力が漲っている。

 もちろんやらないけど。


「これすごいですね。薬とかに使えそうですよね」

「ええ、今までの葉では何も作れませんでしたが、こちらの葉は万能薬が作れるでしょう」

「万能薬? どっかで聞いた気がしますね」

「ユエ、恐らくエリクサーのことだろう」

「ああ! 欠損した部位も治せるとかいう眉唾物」

「ユエ、眉唾物と……言わないでくれ」

「ええ、万能薬はいくつか作成方法がある様ですが、世界樹の葉は唯一無二でございます。この葉一つで一瓶と言ったところでしょうか」

「えっ!? この大きな葉で一瓶しか作れないんですか!?」


 子供一人ぐらい平気で隠れそうな程の大きさなのに、一瓶しか作れないのか。

 それだけ作るのが難しい上貴重だって事くらいは理解出来た。


「トウコ様、厚かましいお願いではございますが、この葉、私共に加工させて頂けませんでしょうか?」

「ん? 全然良いですよ? 寧ろ私に許可取る必要ないんじゃないですか? そもそも世界樹の葉ですし」

「何と慈悲深い! 必ずや万能薬の作成を成功させて見せます!」

「は、はあ……?」


 何かファンさんがしきりに感動してるけど、そもそも何で私に許可取る必要があるんだろうか?

 世界樹は私のものでは無いのに。

 まあ、万能薬が出来るならそれはそれでハン族の皆さんが助かるから良いよね。

 私は“予定”スキル様のお陰で怪我する事が無いから、必要性を今の所感じてないし。

 あっ、でももし、もし、余ったりしたらヒースさんの分として欲しいなぁとかは思うけど、流石にタダで下さいとは言えないしなぁ。

 大量の食料と交換とか了承してくれるかなぁ?

 ま、出来たら聞いてみよ。


 その後、軽い食事が出来たと声が掛かり、白ハン族の男性が部屋に持ってきてくれた。

「では、また明日も宜しくお願い致します」と言って、ファンさん達は部屋を出て行った。

 夕食も部屋に運んでくれるようだ。

 

「しかし、世界樹とは途轍も無いな。あれ程までに心震えた光景は初めてだ。何度シャッターを切った事か。そして、切れた……済まない充電とやらをしてもらえるだろうか」

「アハハハ! そんな気がしてましたよ。後で写真見せて下さいね」


 ヒースさんはやはりカメラ小僧だった。


 あっ、ファンさんに浄化の際の魔力吸引について聞くの忘れてたわ。





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