生きる意味
やっぱり、難しい。
遅れて申し訳ありません。
いつの頃だっけ?
こんなに血塗れになりながら殺し合いをしたのは…。
まず、日本にいた頃に絶対してはいけない経験が少しフラッシュバックしていた。
しかし、思い出せない…。
白と黒の翼の何かと戦った。
何だっけ?
ヤベッそんなこと考えている場合じゃなかった!
目の前に迫り来る『相手』噛みつきにかかってくる。
俺は体を回して切り裂く。
『相手』の中には一瞬止まったのがいた。
俺は『相手』が止まったことによりできた連携の穴を逃さず数体を屠る。
「チッ、また下位個体か…」
そう、先程から下位個体以外を一体も倒せていない。
どうやら向こうの『相手』は俺の体力を削いで行くつもりらしい。
俺は嗤う。
「まだ…舐めてんのか…?」
ズバッチン、俺は小さく呟いた直後俺の周りに巨大な魔力のプラズマが発生する。
俺は剣を構え走り出す。
俺は無意識で『身体能力強化』より派生された『強化魔法』で全体強化をしていた。
そして、もう一つ。
レールガンの飛ぶのと同じ理由で加速していた。
例え本物のプラズマでは無くても似た性質であることは変わらない。
ならば、魔力の爆発やプラズマもどきを利用して加速するのも訳無い。
しかし、それは自らに強力な爆発を浴びせて加速するのだから必然的に大きなダメージを負うことになる。
故に『相手』は俺に触れることによりダメージを受けるがそれと同時にこちらは相手の受けたダメージの何倍もののダメージを受けている。
俺は下位個体を何匹くらいか分からないが屠る。
そして、一度止まり再び『相手』を睨みつける。
「ヤッベ、死にそ…
けど、もうお前らは俺に指一本触れることは叶わないよ。」
その直後、俺はもう一つの秘策を使った。
いくら、諸刃の剣が強かろうと敵には触れられてダメージを受ける確率はゼロでは無い。
ならば、全力でギリギリを狙って避ければいい。
更に俺は嗤う。
『危険感知系』と『予知眼』を発動する。
それぞれ機能連携させて能力の僅かなバージョンアップを行なった。
すると、『予知眼』能力で起きるブレは無くなりその代わりに危険な場所が赤いラインで描かれていた。
今は俺の首辺りに横薙ぎのラインが引かれている。
俺は一歩後ろに下がる。
直後、『相手』の一体がそのラインに沿って飛びかかっていた。
当然避けるだけじゃない。
俺は自分にとってのラインの真ん中に『相手』がくるのを待ち。
斬る!
やはり、即興で思い付いたため斬りが甘かった。
まだ、『相手』は生きている。
俺は次くる全ての攻撃に備える。
約58個の攻撃が予測されている。
他には別の色で予備線が引かれており絶対的にアンチな場所が分かる。
しかし、あえて俺は殆ど動かずに魔力と力を溜める動作に入った。
敵は予測通りに(多少は予備線の方)動きだし俺を捉えようとする。
俺は溜めた力を一気に解放する。
ズパッチン
やけに複雑な爆発音が響く。
向かってきた『相手』の全てが魔力の爆発により生き絶える。
しかし、俺はそんなものは今は関係ない。
なぜなら、今倒したのは下位個体の雑魚にしか過ぎないのだから。
俺は休む暇なく走り出して中位の『相手』に向かう。
中位の狼の個体名は牙狼というらしい。
この個体は物理特化タイプで魔法が弱点といってもいい。
しかし、あくまで魔法が弱い方であって決して魔法防御力は低くない。
今の魔法でも勝てるか怪しい。
しかし、俺はあえてその下策を選んだ。
どのみち、倒さねばならない。
更に言えば、下位に集中している間に来られるより遥かにマシである。
そして、俺の間合に『相手』が入る瞬間、予測線が引かれる。
俺の頭と右肩に綺麗に斜めの予測線である。
いいや、その表現は間違いである。
正確には俺が捉えた『相手』の1歩手前を中心の円である。
初めて見るタイプであるが、おそらく爪を振るうか、尻尾を振るうかのどちらかであろう。
予測は出来る。
しかし、対処を出来るか怪しい。
カウンターに持ち込めば上々だが、まともに当たれば死しかない。
俺と『相手』との実力差はそれだけあるのだ。
故に油断は許されない。
俺は『相手』が攻撃してくるギリギリにまで引き付ける。
攻撃が終わる瞬間を狙うために。
そのためには相手をより引きつけて、より小さい挙動で避けねばならない。
そして、『相手』が動き出す。
それは予測通りであり、予想以上の速度で迫ってきた。
俺はギリギリで避けるもののそれが精一杯だった。
俺は運が悪いのか、それとも気を抜いたのかバランスを崩してしまう。
直後、大量の予測線が発生する。
直後、俺は思う。
ー終わったー
ここで終わる。
始めから勝ち目なんて無かった。
当たり前の結果だ。
俺はゆっくりと目を閉じる。
そう、終わりを迎えるのを待つために…。
今までの人生が走馬灯のように…。
ーダメだー
ー終わらせたらダメだー
声が聞こえる。
いいや、違う。
遠い昔の記憶?
そう、香恋と俺と洸夜の三人で…。
遊んだ記憶だよな?
その記憶の中には確かにあった。
血溜まりの中誰かが倒れて死んでいる映像がフラッシュバックする。
思い出せない。
けれど、約束はした!
絶対、強くなって守るって!
だから…。
だからだから…。
だからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだから。
俺は!
俺は!
ここで倒れる訳にはいかないんだ‼︎
直後、先程まで走馬灯のような飛んだ意識が戻る。
俺を殺そうと突っ込んでくる『相手』が今までよりハッキリ認識出来る。
そして、やる事は簡単…。
ただ全力で剣を振るうだけだ!
俺はその時いい意味で考えることをやめた。
************
優希は全身全霊をかけて狼達と戦っていた。
しかし、先程までの動きとは違い、迷いが一切無くそして、圧倒的に速く強くなっているのだ。
レベルアップによる恩恵にも見えなくないが、それを否定する材料がそこにはあった。
一つ目は動きが速く強くなったのは先程のバランスを崩した後である。
要するに相手を倒すことでレベルアップする筈なのにそれ以外のところで強くなったのだ。
要するに別の要因により彼は強くなった。
それは一時的なのか永続的なのかは分からないが…。
彼は一切の魔力を使わずに下位の個体を次々に屠っていく。
そして、中位の個体は魔力を最大限に活かして屠る。
「まだだ!
まだ、足りない!
速く速く速く…。
強く!」
優希は壊れたかのように叫び始める。
すると、彼の更に速くなる。
まるで、彼の願望を叶えるかのように強く速くなる。
次第に剣の一振りでとんでもない衝撃が走り離れた狼達にも被害がくるという現象や、中位の狼が何の魔力も篭っていない一撃により弾け飛んだりと起き始める。
「もっと、もっと…。
速く‼︎」
更に優希は加速し始める。
しかし、優希は気付いている。
これでも届かない。
上位種と中位種の差というものはこの状態になったことにより理解してしまった。
だから、彼は求める。
強く速くなり、生き残るために。
ただ、ただひたすらに…。
優希は今まで気をつけていた攻撃をくらうということに躊躇いが感じなくなってきた。
死にさえしなければいい。
その言葉を体現するかのように彼は傷が増えていく。
見事に致命傷を避けながら彼は一匹また一匹と屠る。
まだ残っている下位個体は目算で五百強といったところだろう。
やっと半分いくかいかないかレベルの量である。
中位に関しては元から個体数が下位より少ないおかげであと九十体位残っている。
勝てると内心優希は思うが即座に否定した。
一体だけでも化け物クラスの上位個体が十体がいるのだ。
中位と下位が全員死ぬまで御丁寧に待つわけが無い。
しかし、勝てる見込みが無い段階なので手を出すという下策もしない。
彼は考える。
勝つ方法を…。
死と隣り合わせのこの中頼れるのは自分の実力だけ。
だから、望む…強さを!
「もっと、もっともっともっと!
おぉぉぉぉォォォォォォォ‼︎‼︎」
雄叫びを上げて優希は剣を振るう。
直後、とんでもない暴風が起き優希が振るった剣と平行に下位から中位の狼達を抉る。
それは一つの衝撃波であり災害にも似た破壊力と化して全てを吹き飛ばす。
直後、上位種は何かを感じたのか動き出す。
それを見逃す程今の優希は甘く無い。
それが普通ならば…。
直後、優希は見た。
背後から引かれる予測線を…。
それは絶対強者と呼ばれる者の猛威によるもの…。
決定的な差であり、勝敗を決する材料…。
速いなんてものでは無い。
たったの一匹に引かれる予備線は約98本、引かれている範囲はほぼ全面…。
優希は嗤う。
勝てる見込みはゼロ、絶対勝てない差を見せつけられて尚彼は嗤い続ける。
彼は同時に強く思う…。
ーもっと、強く!ー
気持ちがどんどんと昂ぶっていく。
それの表れか彼の周りにオーラのようなものが僅かながら纏わりつく。
そして、動き出す。
直後、とんでもない暴風が起こる。
一つは衝撃波によるもの…。
もう一つは上位種が動き出したことによる暴風。
音速に近い速さにより両者一進一退の攻防を繰り返す。
二体目の上位種が攻撃体制に入り始める。
おそらく、このままだと負けると思ったのだろう。
しかし、今の優希は限界に近かった。
優希は一切敵と離れないようにしていた。
それは上位種の名前から予想していたことにある。
上位個体名は『魔狼』であり、この個体は魔力を操れるようになった中位個体の強化版みたいなものである。
要するに魔力で何らかのアクシデントを起こすことを考慮して戦っていたのだ。
この戦いは中位と下位が入る隙が無いので無視しているが上位個体はその限りでは無い。
故に他の上位個体にも気を配らなければならないのは分かっている。
優希は少し焦りながら攻防を繰り返す。
ズゥォン、直後衝撃波が発生する。
それは二体目の上位個体による咆哮である。
その咆哮は魔力が込められており強力な一撃を作り出している。
それは俺に直撃する。
俺の体のあらゆる場所から血が噴出する。
「…それを……待っていた‼︎」
優希は一体目の上位個体に向かって走る。
理由は簡単だ。
いくら、上位個体とはいえでも同じ上位個体の攻撃ならば避けねばならない。
そこが優希の狙いだった。
避けた瞬間、それが狙い。
そのために彼は踏ん張りが効くように魔力をずっと防御に回していた。
俺の今の実力では斬ることはできない。
しかし、砕くことなら出来る。
優希は全力で持って剣を振るう。
それは魔狼の胴体に当たり…弾かれた。
優希の表情が少しずつ絶望に染まる。
二体目の魔狼はその直後、飛びかかってくる。
避ける術は無い。
俺が生き残る唯一の活路目の前で砕け散っている。
ー今度こそ本当の終わり?ー
そんなことを考える。
(いや、待て、待てよ!
考えろ!この場における最大の手段を…。
弱点を考えろ。
『相手』は何を避けた?
あれは一種の衝撃波だ。
御丁寧に体内に大きく影響を及ぼす類の衝撃波だ。
待て、…………体内?
今、使った技は体の中にまで響くような衝撃波が起こるような振り方だ。
もし、それが予想通りなら…勝てる!)
直後、優希は一体目から背を向ける。
そして、二体目に思いっきり剣を振るう。
ガンッ、さっきより、大きな音が鳴り弾かれる。
直後、二体目の魔狼は口から血を吐いて絶命する。
そして、よくよく見ると一体目は死にはしていないが痙攣して倒れている。
今起きたことは発勁の容量と少し似ている。
発勁はあくまで体内にダメージを与える技であり一つの衝撃波とも言えなくも無い。
恐らく、内臓が少し傷付いたのだろう。
いくら魔物とはいえでも内臓まで丈夫な個体は少ないのだろう。
要するにそういうことだ。
しかし、いくらこの技でもリーダーに勝てないことは理解している。
「とりあえず、反撃…開始だ!」
とんでもない暴風がこの場に吹き荒れた。
誤字脱字がありませんように…
2017.10.26 修正
少し、改行などを加えました。