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秩序の魔王の順応性  作者: ARS
災厄
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決戦2 七つの大罪

「『7つの大罪』【暴食】【強欲】‼︎」


そう言った瞬間、抵抗できない弱者に猛威が振るわれる。

それは魔力を奪われるという理不尽な猛威。

弱者には逆らうことが出来ず呑まれ、衰弱していく。

そして、その魔力は全て俺の元に向かっていく。


『ここより南南東の方角に人を発見しました。

威力の調整をして必要最低限の活動をできるようにしております』


相変わらず優秀だな…。

妄想スキルもとい、サムニウムが報告をする。

因みに名前は夢の意味を持っている。

詳しい発音はよく分かっていないので少し適当だが…。


とりあえず、そこに気をつけて戦うか…。


瞬間、災厄が動き出す。

とんでもない魔力のホーミングが放たれる。

その、瞬間…。


「【色欲】」


そう言うと共にホーミングはあらぬ方に行き、全て同じ場所に着弾する。

災厄…いいや、『相手』は一瞬、動きが止まる。

俺はその間を利用して走り出す。


しかし、それは甘かったようだ。

瞬間、レーザーと称してもいいほどの魔力のブレスを放ってくる。

色欲の能力じゃ、回避は不可能…。

色欲はそもそも意識を逸らして、攻撃をあらぬ方向に向ける技である。


「ならば【怠惰】【嫉妬】」


瞬間、ブレスは天高く反射する。

嫉妬は拒絶を意味する。

故に色欲以外での攻撃を逸らすのに向いている。

しかし、どうしても真正面から反射する関係上、受け切れない。

故に怠惰で予め威力を弱めておいたのだ。

干渉はあまりできないか…。

俺はかなりギリギリで嫉妬により、上に反射する。


「300%」


ポツリと呟き、俺は全力で走りだす。

『相手』は次弾を放つ。

次は色欲の介入の無いほどのホーミング。

これだけのホーミングに囲まれていては、色欲をやるよ余裕は無いと見るべきか…。

かと言って、嫉妬で全て逸らすのも辛いものがある。


「なら【強欲】【傲慢】」


瞬間、俺は手を前に突き出してホーミングにぶつかる。

痛みが無いと言ったら嘘になるが、最大限の防御を張っているため、無傷に近い状態だ。


「やはり、スキルのコピーまではさせてくれないな…」


俺はそうポツリと呟き『相手』が放ったホーミングと全く同じものを放つ。

これは元々の【強欲】からくるものである。

これは一度体験した攻撃の全く同じものを一回だけ放つという能力である。

それを【傲慢】で使われた技をコピーする能力へと変えたのだ。

しかし、この魔法は既に俺の取得した魔法のスキルの一つだった。

要するにあの全属性魔法壊に統合された魔法スキルがあるということだ。


とりあえずは同じホーミングでぶつけて、何とかその場凌ぎにはなった。


「でも、あいつの周りにある障壁を何とかしないと勝てないな」


このままだとジリ貧で負ける。

俺は再び踏みしめて敵に剣を届かせる術を考える。

『相手』もそれが分かっているのか、とんでも無い衝撃波が直後、放たれる。

俺は体内が破壊される感覚が走る。


「があっ!」


俺は口から大量に血を吐いて冷静に再生を行う。


やばい、これは時間稼ぎだ。

この時間の間に大技の準備を整えてやがった。

直後、理不尽なほどの天災が俺を襲う。

雪崩、雷撃、火の海、津波、嵐…考える限りの全ての天災が俺を襲う。


俺は自分の考える限りの最大の攻撃力を考える。

この場で助かる方法を…。


「あるじゃねぇか。

少し運任せだが…賭けるしか無いな」


俺は自ら、それぞれの天災の中に突っ込む。

自分でも、正気の沙汰とは思えない。

でも、勝つためには必要なことだ。

これを乗り越えなくちゃ勝てない。

順応しろ。

この全ての天災に対して…嵐も炎も雪も雷撃も津波も順応しろ…そして、それら全てを凌駕しろ!


俺は踏みしめる、ぬかるみ雪崩と津波で今でも飲み込まれそうな大地を…。

熱くもない…寒くもない…この場所に順応しろ。

瞬間、先程まで踏みしめ難かった足元が急に走りやすくなった。

そして、俺は全力で跳んだ。


「【嫉妬】全力展開!」


直後、無限に近い魔力弾が飛んでくる。

それら全ての魔力弾の軌道を逸らしていき、突き進んでいく。


「竜の武具の覚醒!」


瞬間、俺の着ていた外套とマフラー、そして剣が光りだす。

それと同時に【嫉妬】は破られる。

俺はもの凄い速さで相手に向かう。


「10000%!」


『相手』の目の前にまでたどり着く。

精神燃焼スピリットチャージ』の最大を使用する。


「そして【憤怒】」


俺は最後まで発動していなかった七つの大罪を使用する。

これは一つのステータスを一時的に下げて、もう一方のステータスを何倍にも膨れ上がらせる能力である。


「いっけー!」


俺は全力で叫んで剣を振り下ろす。

その剣は『相手』に食い込み、切り裂く。

この時、俺は知る由も無かった。

ここから先が本物だと…。


**************


災厄は初めての痛みを知った。

生まれてこのかた、痛みなど味わったことがなかった。

故に災厄はいいや『災厄』はこの先を理解できなかった。

ただの消失…。

全てを破壊する顕化を作動させた。


障壁は全て破られて、傷も与えられた。

それにより『災厄』自身が無意識下によりセーブしていた力が作動する。


瞬間、災厄の身体は小さくなる。

人と同じくらいの大きさとなり、堂々とした獣や竜と同じ姿である。


「何それ?」


瞬間、優希でさえも理解できなかった。

こちらのペースに入った。

そう思った矢先の出来事なのだ。

優希の持っていた竜の武具は砕け散った。


しかし、それと同時に優希は理解した。

ここから先は天災ディザスターではなく災厄カタストロフであると…。

ここから先は真の理不尽との対決であると…。


「0%【強欲】【暴食】」


強欲とは元々、二つの役割がある。

先程のようなコピーと一番最初に使った、能力拡張である。

優希はそれにより、再び…。


「なっ!」


その瞬間、優希は目を見開いた。

なぜならば、先程まで大分の距離があったのに、目の前に災厄がいたのだ。


ズドンッ


瞬間、優希は踏みつけられて地面に叩きつけられる。


優希が起き上がる瞬間、周りに糸のような魔力が発生する。


「これは…『傀儡マリオネット』⁉︎」


そう、あの蜘蛛が使っていたユニークスキルである。

優希は衝撃波を拳で起こして倒そうとするが、避けられるかガードされる。


「これは…本家より強くないか?」


そう、傀儡となった魔物はそのまま戦うのではなく、強化されるのだ。

故に優希が放った攻撃も全力でなければ意味がない。


(くそっ、どうする。

何か…武器は…)


魔力で二本の剣を作り出す。

二刀流はまだ、慣れていないが手数は多い方が…。

瞬間、突風が起きる。

災厄がまた目の前に現れたのだ。


(速い!)


咄嗟に優希は攻撃を受け止める。


パリンッ


魔力で出来た剣はあまりに脆く、壊れる。


「くっ!

まだ…【憤怒】」


もう一回、攻撃を受け止める。

次は何とか受け止めきれる。

しかし、身体への消耗が激しい。


「なっ、【色欲】【嫉妬】!」


瞬間、災厄はこの場で魔力弾を放つ。

とんでもない爆発が起きて、災厄は一度退がり様子を伺う。


「はぁ…はぁ、はぁ…くそっ!」


優希は血だらけで体を引きずるようにして立ち上がる。


「【嫉妬】【傲慢】」


部不相応なことを考えることを表す傲慢は何か強力なものを得る能力である。

今回の場合は嫉妬による怪我の拒絶である。

それにより、再生では時間がかかる怪我を瞬時に治すことに成功した。


(これは何度も使えるものじゃない。

考えろ、どうやったら勝てる。

どうしたらいい?)


瞬間、傀儡達は優希に襲い掛かる。

再び魔力で剣を作り戦う。

しかし、その動きにはキレがない。

それはおそらく無意識に災厄という存在を恐れているのだ。

あの圧倒的な力と強さ…。

また、いつ来るのかわからない。

そんな恐怖が優希の中に渦巻いている。


しかし、それとは裏腹に災厄は佇んでいる。

そして、少し経ち動き出す。

とんでもない、魔力の衝撃波を起こして…。


優希は体内を滅茶苦茶にされる感覚を味わう。

それを噛み堪えて再生を行い始める。

これは、優希が初勝利を収めた天災狼ディザスターウルフの使える衝撃波である。

そして、傀儡達はその際に更に増える。


「くそっ…」


優希は何度も立ち上がる。

何度も剣を振るう。

勝てるか勝てないか…そんな領域は既に超えている。

負け前提の戦いである。

しかし、それは昔の優希にとってはそれが常だった。

だから、その度に優希は思考し続ける。

その度に思考は順応していく。


(傀儡の一体一体はさっきの『相手』と同レベル。

『相手』に関してはさっきまでとは倍どころじゃない。

全く別の『相手』だ)


内臓が破裂する痛みに耐え、腕はあらぬ方向に折れ、身体中から傷ができ、血だらけになっても優希は立ち続ける。

その度に何度もパターンを思考していく。

危険を予測できても速さが違えば、意味をなさない。


再び、災厄は優希の目の前に現れ、攻撃を行う。


「ハァッ!」


優希は無我夢中で反射とも呼ばない直感だけで剣を振るう。

それにより、災厄と対等に打ち合ってるように思えた。

しかし、すぐにその状態は終わり、優希を吹き飛ばす。


「があっ!」


再び、立ち上がり傀儡達の対処を始める。

その瞬間を狙ったかのように災厄は追い討ちを仕掛ける。

再び打ち合うが、先程より早くそれは終わる。


ドンッ


床に打ち付けられ、血を吐く。


すぐに体制を立て直して剣を振るうが、止められるどころか、逆に返り討ちに合う。


「まだ…だ」


何度も…立ち上がる。


******優希********


「まだ…だ」


俺は再び立ち上がる。

ここで逃げたら一生、俺は立ち上がれない。

だから、俺は何度も立ち上がる。


先程から俺はいくつもの光景がフラッシュバックされる。

今まで戦ってきた記憶に…どこか分からない場所で立っていたこと…。

火の中、母親だと思われる人と話したこと…氷の中、父と思われる人を見送ったこと…。


思い出せない…俺は…。

そんな一瞬の油断が命を奪う。

そんなものは知っている。

再び、災厄の猛威が振るわれる。


嫌だ…まだ…死なない…。

俺は…決めたんだ…。


炎の中で…ずっと悔やんでいた…。


力が無いことを…その瞬間、何倍にも引き伸ばされた時間が最後の最後まで思考して辿り着く…記憶の一部に…。


「思い…出した」


その言葉を放った時には俺は既に覚醒していた。

いや、正確には本来あるべきものを使用していたのだ。


真っ白な氷と真っ赤な炎のが辺りを包み込み、災厄をもその余波の影響を受けた。


「覚えておけ…これは俺の両親が残したもの…。

イレギュラー【情熱の炎】と【心理の氷】だ」


俺は立ち上がる。

そして、理解する。


秩序を理解するには秩序を崩すものを理解しなくてはならない…。

故に、俺は災厄カタストロフになる。


『優希様、新たに【災厄カタストロフ】の称号とスキルを入手しました。

そして、『相手』にも【災厄カタストロフ】の称号とスキルを入手した模様です』


分かった。


ならば、俺が本当の秩序を今度こそ作る。


瞬間、俺は再び剣を作る。


「さぁ、仕切り直しだ!」


これは世界の為とかじゃない。

ただ、個人の欲望だ。


だから…






決戦はまだ始まったばかりだ…この|語り合い(殺し合い)を存分に楽しもう。

やっと、親について出せそうです…。

少し激しい戦闘を作ろうと思って悩んだので遅れましたが、結果的にダメでした。


読んでいただきありがとうございます。

面白いと思って頂けたなら幸いです。


因みにサムニウムという名前は適当にそれっぽい単語といろんな言語で検索をかけて聞いた感じのフィーリングでつけてますのでツッコミは受け付けません。

(2019.6.16追記)

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